ブラジルの国民酒「カシャッサ」とは何か<1>カシャッサはブラジルの法律で定められたのみもの!?

2017年 05月 20日

カシャッサ ファゼンダ・ソレダージ

「カシャッサ」をはじめ、商業用の飲料に関して、ブラジルでは法律(2009年6月4日付政令第6871号)でさまざまなことがらが定められている。

同法53条は「カシャッサ」を以下のように定義している。

<ブラジルで造られたアグアルデンチ・ジ・カーナ(サトウキビ蒸留酒)の特有の呼び名。気温20度の状態でアルコール度数が38%~48%。サトウキビの絞り汁を蒸留して作られ、独特の官能的性質を持つ。1リットルにつき6gまで砂糖を加えてもよい>。

また、<1リットルにつき6g以上30g未満の砂糖を加えたものは「カシャッサ・アドサーダ(砂糖添加カシャッサ)」と呼んで区別する>とも記されている(53条1番)。

カシャッサの名産地ミナスジェライス州にある手作り酒蔵のひとつ「カプリショーザ」の生産者は、工業製品のカシャッサとクラフト・カシャッサ(カシャッサ・アルテザナウ)の違いは、作り方から成分にいたるまで大きくことなるという。

「カシャッサは法律の範囲内では砂糖を添加できることになっていますが、小規模生産の多くの手作り酒造家は砂糖を添加しません。わたしたちをはじめクラフト・カシャッサの酒造家は、農場と蒸留所を持っていてサトウキビの栽培から瓶詰までを一貫して行うことが多く、サトウキビの栽培から収穫まで気を配り、いい材料でいいお酒を造ることをこころがけています」(カシャッサ「カプリショーザ」)

ところで同法にあるように「カシャッサ」というのは「アグアルデンチ・ジ・カーナ」の一種ということになる。

ちなみに「アグアルデンチ・ジ・カーナ」とは、「アグアルデンチ」の一種。「アグアルデンチ」は、植物性の材料を醗酵・蒸留させてつくる蒸留酒など、アルコール度数の高い飲みもの総称だ。

「アグアルデンチ」のうち、サトウキビ(カーナ・ヂ・アスーカル)から作られるものが、「アグアルデンチ・ジ・カーナ」となる(同法での定義は後述する)。

またブラジルでは「カシャッサ」は、「ピンガ」、「カニーニャ」、「ブランキーニャ」など、他の俗称でも親しまれているほか、ざっくりと「アグアルデンチ」と呼ばれることも少なくない。しかし、「カシャッサ」と「アグアルデンチ」は本来はイコールではない。

ブラジルの国民酒「カシャッサ」とは何か<2>へつづく。

(写真・文/麻生雅人)
写真はリオデジャネイロの酒蔵「ファゼンダ・ソレダージ」による、バウサモの木の樽で熟成したクラフト・カシャッサ(カシャッサ・アルテザナウ)。FOODEX2017で紹介された

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