国際シンポジウム「リオから東京へ 建築がつなぐオリンピックと都市計画」開催される

2017年 05月 31日

建築模型博物館

5月17日(水)、駐日ブラジル大使館と日本建築文化保存協会の主催で、国際シンポジウム「リオから東京へ 建築がつなぐオリンピックと都市計画」が寺田倉庫(東京・天王洲)で開催された。

同社ビル1F にある日本初の建築模型専門展示・保存施設「建築倉庫ミュージアム」では現在、建築模型をメインに、ブラジルの現代建築を紹介する企画展「現代ブラジル建築模型展」も開催されている。

「建築倉庫ミュージアム」は2016年6月のオープン以来、国内外の建築関係者から注目を集めている。

同施設を訪れた、建築評論家でもあるアンドレ・コヘーア・ド・ラーゴ駐日ブラジル大使閣下が「建築を通じて日本とブラジルの架け橋になるようなイベントを行いたい」と希望されたことを受け、本展示と、今回の国際シンポジウムが実現する運びとなったという。

建築がつなぐオリンピックと都市計画 リオ

シンポジウムには駐日ブラジル大使館アンドレ・コヘーア・ド・ラーゴ大使閣下、建築家の槇文彦氏、中央大学の石川幹子教授、東京理科大学の坂牛卓教授が参加した。

ブラジルから、元リオ市文化遺産業議会代表(2009年~2016年)で、エドゥアルド・パエス市長時代に都市関連業務特別顧問を務めたワシントン・ファジャード氏が録画によるスピーチで参加。シンポジウムのモデレーターは東京理科大学の坂牛卓教授が務めた。

ブラジル側のスピーカーは、2016年のリオデジャネイロ・オリンピック・パラリンピックに際してリオ市が取り組んだ都市再開発計画を紐解いて紹介。東京側のスピーカーは、2020年にオリンピック・パラリンピックの開催を控える東京で今、起こっていることを紹介した。

アンドレ・コヘーア・ド・ラーゴ大使閣下

アンドレ・コヘーア・ド・ラーゴ大使閣下は、この建築に関する重要な場所でシンポジウムが開催できること語った。

「『建築倉庫ミュージアム』に、ブラジルを代表する建築家たち、オスカー・ニーマイヤー、パウロ・メンデス・ダ・ホッシャ、リナ・ボ・バルディの建築模型が収納されることになったことを大変うれしく思います。日本とブラジルは共に、欧米以外で世界に建築の分野で大きな影響を与えた国です。従いまして、日本とブラジルの建築に関する知見をお互いに交換し合うことは意義深いことです。そして今夜は、リオデジャネイロから東京へ、オリンピックでつながる架け橋を通じて今夜、有意義な話が聴けると思います」(アンドレ・コヘーア・ド・ラーゴ大使閣下)

大使閣下は、シンポジウムでは外交官としてではなく、建築評論家の立場で登壇。オリンピックが都市に与える影響とレガシー、リオデジャネイロの建築の歴史について語った。

「オリンピックの開催で問題となったのは、建築にとってさまざまな歴史を持っているリオデジャネイロという都市をどう改革するか、という点でした。東京で暮らしているみなさんが現在、抱いている想いも同じではないでしょうか。実際、街に住んでいる住民のために、どのような改良ができるかが問われ、オリンピックのおかげで私たちはリオを再発見することができました」(アンドレ・コヘーア・ド・ラーゴ大使閣下)

また大使閣下は、オリパラを契機にリオ市で最も変貌したのは湾岸地区の景観だろうと語った。湾岸地区の旧市街地区とグアナバラ湾とを分断していた環状高架高速道路を地下に埋める大事業が行われ、ポルト・マラヴィーリャと呼ばれる美しい湾岸地区を誕生させた一大事業についても、市民のための重要なレガシーのひとつとして紹介した。

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