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国際シンポジウム「リオから東京へ 建築がつなぐオリンピックと都市計画」開催される

ワシントン・ファジャルド リオ

都市計画建築家のワシントン・ファジャード氏は、リオ市の歴史と、オリパラにおける再開発計画の実情を紹介した。オリパラはにとって、これまで長い間必要とされていたインフラ整備を加速させる好機となったと語った。

「リオ市は南の海岸線から最北端の境界線まで15㎞もあり、そこには山脈が貫き、600万人が暮らす都市圏がグアナバラ湾を囲むように広がっています。そしてこのリオ市は常に、洪水、山の地滑りや交通問題などに見舞われていました」(ワシントン・ファジャード氏)

今ではリオには洪水対策シスタムや、交通だけでなく流通もコントロールする交通管制センターが整備され、BRT(バス高速輸送機関)やVLT(路面電車)も走っている。

リオ 路面電車 VLT

「コパカバーナ、バーハダチジュッカといったオリンピック村が集中した海沿いの地域と、マラカナンやデオドーロといった貧しい地域で、インフラ整備の利点を再分配する利点もありました。都市整備が一部地域に集中した他のオリンピックとは異なり、リオでは都市整備を他の地域にも広げようと試みました」(ワシントン・ファジャード氏)

また、官民パートナーシップの実現により五輪の総経費の80%を民間投資で賄ったというリオ市は、経費削減のおかげで学校を305校新設、診療所を170カ所開設、スラム街の整備にも投資したという。

レガシーを前提に設計されたオリンピック・パラリンピック村の建設における「ノマド建築」の計画も紹介した。

「私たちは『ノマド建築』というコンセプトを作りました。『水泳競技場』と『未来の競技場』は設計段階から、オリパラ終了後の解体と転用を想定しています。『未来の競技場』はすでに4つの学校に改修されています。建設コストは少し高くなりますが持続可能性が高く、リオ市の社会的ニーズにより合致したものに変更可能となります」

オリンピック リオ レガシー

環状高架高速道路の地下化をはじめとするプロジェクトで劇的に変化を遂げた港湾地域の再開発を支えた経済計画についても紹介した。

「『コンソーシアムによる都市計画』という法律に基づく新しいモデルが生まれました。建物の容積率を増やして法律によって生まれた増加分を、証券取引所で不動産市場に売却します。これによって都市整備のプロセスの透明性が高まります。資金の3%を湾岸地区の文化遺産に充てる仕組みを作り、同地区と中心街の文化遺産の復旧が可能となりました」

倉庫街や公園がリニューアルして新しい博物館が建設されたことなどは世界中のメディアによって報じられたが、ワシントン氏は、街の歴史を再認識する文化遺産の復旧など、あまりメディアで取り上げてこられなかった事例も紹介した。

リオ ポルトマラヴィーリャ

「アフリカ由来の文化とつながりのある区域の復旧に力を入れました。リオは植民地時代に奴隷制度の中心地で、経済は奴隷制度が基盤でした。これらのの場所は、ブラジルの歴史の恥部であり非人間的な側面ですが、それを展示して痛ましい過去知ることで、私たちはより公正な未来に向かって歩めるのです」

ポルト・マラヴィーリャ地区にある、植民地時代に奴隷貿易に使われたヴァロンゴ埠頭や、界隈で暮らすアフリカ系住民の生活やサンバの歴史とも縁の深い“ペドラ・ジ・サウ(塩の岩)”などは、「アフリカの遺産を讃える歴史と考古学巡回コース」として整備された

「私たちの仕事は、センシティヴだけど地域住民にとって大切な場所、遺産を復旧するための制作を策定して、この歴史的な中心街を復旧することでした」

リオに残る数々の歴史を街の人々の大切な遺産として保護するだけでなく、それらを現在の街の人々の生活と結びつけた整備も行われた。歴史的建造物のオーナーに対しては、復旧作業を支援した。それによって、街の小さな書店や由緒あるレストランが再生したという。

リオ 港湾地区

「大きな規模でおこる都市の変貌と、日常レベルで起こる小規模な変化の連携も(この再開発プロジェクトにとっては)重要でした」

長く開発から取り残されていた湾岸地区を含む旧市街区の劇的な変化は、地域の治安も向上させた面がある。ワシントン氏は、再開発の結果、多くのリオ市民が今、再びリオの中心部の住むことを望み始めているため、街は引き続き投資を行い、中心部の住宅建設を促進しなければならないとも語った。

(次ページへつづく)

(写真・文/麻生雅人、写真上から2番目(VLT)/Fernando Frazão/Agência Brasil、写真下から2番目/(Circuito Histórico e Arqueológico da Celebração da Herança Africana)/Tomaz Silva/Agência Brasil)、写真下(港湾地区)/Alexandre Macieira/Riotur)
写真上から2番目は2016年7月3日、路面電車VLT。写真下から2番目は2015年5月30日、整備がスタートした「アフリカの遺産を讃える歴史と考古学巡回コース」のひとつ、奴隷貿易で使われていた倉庫があった倉庫港湾労働者広場。写真下は整備された港湾地区

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