穀物メジャー、カーギルがブラジルで畜産用飼料製造販売会社を買収
2017年 10月 29日グローボ系ニュースサイト「G1」が10月27日づけで伝えたところによると、穀物メジャー、カーギルのブラジル法人カーギル・ヌートリサゥン・アニマウ(以下「カーギル・ブラジル」)がブラジルの畜産用飼料製造販売会社インテグラウ・ヌートリサゥン・アニマウ(以下「インテグラウ」)買収について合意が成立したと発表したという。
カーギル・グループがブラジルで畜産用飼料事業を買収するのはこれが初めてとなる。
カーギル・ブラジルは、今後もブラジルが世界最大級の食肉輸出国の地位を保ち続けることを確信しており、畜産用飼料市場は最低でも3-5%の成長が見込まれていることがこの分野への投資拡大を決めた理由としている。
買収合意によるとカーギル・ブラジルはインテグラウの株式を100%取得する。これによりインテグラウが保有するゴイアス州内の工場と製品ブランドを取得する。インテグラウの製品はミネラル塩の配合が特徴で、国内でも有数の肉牛の産地であるゴイアス州で広く使われている。買収価格は非公開。
インテグラウの年商は8000万レアル(約28億円)で、カーギル・ブラジルはこの買収により、かねてからシェア拡大を狙っていた肉牛用飼料の市場で存在感を増すことになる。乳牛、鶏、豚用飼料の市場ではすでにビタミン・ミネラル成分補助飼料を製品化し出荷している
カーギル・ブラジルはインテグラウの買収でミネラル塩分野で市場占有率を倍増させたが、ブラジルの市場全体の比率からみるとたったの2%だ。2%とはいえこの市場は小規模生産者が様々な地方に分散しているため、今後、大資本の参入の影響は何らかの形で出てくるものと見られている。
「私たちは市場の成長に準じたレベルではなく、それを超えた成長を狙っています。(インテグラウの買収により)我々の肉牛市場における成長戦略がより現実的になりました」(カーギル・ブラジル代表、セウソ・メロ氏)
肉牛分野における市場シェアはまだ低いものの、このゴイアス州における買収はカーギル・ブラジルにとっては大きな一歩だ。ゴイアス州を含むブラジル中西部では肉牛の飼育は放牧が中心だが、ミネラル塩の補給は必須とされている。
インテグラウはゴイアス以外にトカンチンス、マット・グロッソ、パラーの3州でも事業展開しており、この3州はブラジルの主要肉牛生産地だ。
「弊社グループは養鶏、乳牛飼育、養豚分野では存在感を示せているものの、ブラジルの肉牛市場においてはまだこれからで、主要なプレーヤーの地位につきたいと考えております」(メロ氏)
カーギル・ブラジルの2016-17年の畜産用飼料への投資額は約5000万レアル(約17億5000万円)で、大部分は肉牛用飼料分野に投入されている。サンパウロ州イタピーラ市のミネラル塩配合飼料生産拠点への投資だけで3000万レアル(約10億5000万円)に上る。
10月27日に発表された本買収案件は、同じ週に発表されたダイアモンドⅤの買収や7月に発表されたデラコンとの戦略的投資協定など、カーギル・グループのブラジル国外の天然食品添加物分野での動きに連動したものだ。
穀物油糧種子加工・販売事業はカーギル・グループのドル箱とされているが、近年の過剰生産から利ザヤの縮小が懸念されている。一方で畜産用飼料分野の売上は7億レアル(約245億円)で、年10-12%の伸びを示している。
メロ氏によると、インテグラウとカーギル・ブラジルは製品分野にオーバーラップする部分がないためお互いに補完しあえる関係だったことが買収の決め手の一つになったとのことだ。
同氏はまた、畜産用飼料分野における競合他社、ADM、ブンゲ、ルイ・ドレフュス等はまだブラジルに足を踏み入れてはいないものの、DSMはすでに数年前に肉牛向け飼料分野のマーケットリーダーであるトルトゥーガを傘下に収めていると述べた。
カーギル・ブラジルによるインテグラウの買収合意はこれから独占禁止法運用機関である経済防衛行政審議会(CADE)の承認を受けたのちに有効となる。カーギル・ブラジルの経営陣は、同社の市場占有率はまだ低いため、承認を得るにあたって特段問題になる点はなく、数か月以内には承認されるものとみている。
(文/原田 侑、写真/Divulgação)