まもなくW杯ロシア大会開幕! ブラジル代表は4年前の雪辱を果たせるか?

2018年 06月 11日

ブラジル オーストリア

4年前の準決勝でドイツ相手に無様な姿を世界中に晒した”ミネイラォンの惨劇”、そしてドゥンガが監督に就任してW杯南米予選でも10か国中6位と低迷していたほんの2年前までのブラジル代表と比べ、優勝候補筆頭と言われるまでの状態になったことは奇跡としか思えない。いかに監督の力が重要かということを思い知らされる。

さて、ロシア大会におけるブラジル代表のW杯出場メンバーだが、核となる選手15人は早々に2月に発表されている。これは異例なことだ。選手のモチベーションなども考慮して、チチ監督が考え抜いたやり方なのだろう。

15名に選ばれたメンバーでは、不動の右SB(サイドバック)であるダ二エウ・アウヴェス(パリSG)が5月のフランスカップ戦の決勝で右全十字靭帯を損傷したため、復帰には間に合わず残念ながら最終メンバーに入ることはできなかった。

最終的に選ばれた23名だが、ブラジル国内組は3名(コリンチャンス2名、グレミオ1名)、中国リーグから1名、それ以外の大部分はヨーロッパのクラブに所属している選手たちだ。

最も多いのは、プレミアリーグ(イングランド)をぶっちぎりで優勝したマンチェスターシティの4名だ。

ブラジル代表は、W杯直前の今月3日と10日に2試合のテストマッチを行っている。それぞれクロアチアとオーストリアと戦っているのだが、2-0、3-0と完封勝利を収めている。

右足甲を骨折し今年3月に手術を行ったネイマールにとって、6月3日のクロアチア戦が復帰戦となった。

この試合、後半から出場したのだが、早速豪快なゴールを決めるところがネイマールらしい。続くオーストリア戦では先発出場を果たし、2戦連続でゴールを決めており、順調な仕上がりを見せている。関係者はホッとしたことだろう。

ネイマール オーストリア戦

この2戦では、ネイマールのほかには、ガブリエウ・ジェズース(マンチェスターシティ)、フィリペ・コウチーニョ(バルセロナ)、そしてロベルト・フィルミーノ(リバプール)といった決めるべき攻撃陣がきちんとゴールを決めている。

先発メンバーについては、1戦目では、怪我明けで途中出場だったネイマールに代わりフェルナンジーニョ(マンチェスターシティ)が選ばれていたが、それ以外は2戦で共通しており、以下のメンバーで固定されていると考えてよいだろう。

GK 1.アリソン(ローマ)
DF 2.チアゴ・シウヴァ(パリSG)
3.ミランダ(インテル)
12.マルセロ(レアルマドリッド)
14.ダニーロ(マンチェスターシティ)
MF 5.カゼミーロ(レアルマドリッド)
11.フィリペ・コウチーニョ(バルセロナ)
15.パウリーニョ(バルセロナ)
19.ウィリアン(チェルシー)
FW 9.ガブリエウ・ジェズース(マンチェスターシティ)
10.ネイマール(パリSG)
(※数字は背番号。カッコ内は所属チーム)

「W杯の借りはW杯で返す」

これが、ブラジル代表チームの共通認識のはずだ。前評判も高く、好調をキープしながらW杯本番を迎えるブラジル代表だが、果たして前大会の雪辱を今大会で果たすことができるだろうか?

チチが監督になってから、明らかにサッカーの質が変わっている。

サッカーでは何が起こるかわからないので何とも言えないのだが、今こそ、新しい強いブラジルサッカーを世界中に見せつけてほしいと思う。

ブラジルの弱点を探すとすれば、まずは不動の右SBダ二エウ・アウヴェスの欠場だろう。確かにダ二エウ・アウヴェスの不在は痛い。しかし、その穴はダニーロが埋めるべく奮闘している。

ダニーロは、サントスでもネイマールと同時代に活躍した一人だ。2011年にリベルタドーレス杯で優勝し、日本で行われたクラブW杯にも出場している。その後、ポルト、レアルマドリッドを経て、2017‐18シーズンからマンチェスターシティに移籍し、選手層の厚いチーム内でもレギュラーを奪い取っている。レアルマドリッドでは活躍できず不本意なシーズンを過ごしてきたが、W杯本番で巡ってきた大チャンスだ。この機会を十分に活かし、全世界に向けてアピールしてほしいと思う。

もう一つは、メンタルだ。

ブラジル人はメンタルが弱い。これは、意外にも思われるかもしれないが、私が7年間ブラジルで生活してきて一番感じてきたことだ。明るく調子のよいときはいいのだが、負のスパイラルに入ると、なかなか立ち直れない。

しかし、2年前のリオ五輪ではネイマールを中心としたブラジルサッカーチームは、見事にそれを克服し、決勝でPK戦の末、宿敵ドイツを破り金メダルに輝いたのだ。

今度は、W杯で正真正銘の世界一に輝いてほしい。

ブラジルのグループリーグ初戦は、6月17日(日)午後9時(日本時間18日(月)早朝3時)に、ロシア南部のロストフ・ナ・ドヌにて、スイスと対戦する。試合の様子は、NHK総合で生中継される。

これから1か月間、眠れない日々が続くことになるだろう。

素晴らしい戦いを見ていきたい。そして、ブラジルのサッカーを思う存分体感したいと思う。

頑張れ、ブラジル!

(文/コウトク、写真/Lucas Figueiredo/CBF)
写真は6月10日、ウィーンで行われた対オーストリア戦

12
著者紹介

コウトク

2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。
2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。

コラムの記事一覧へ