【コラム】ブラジル人のポルトガル語発音は如何にして生まれたのか

2018年 07月 17日

スペイン系移民

ブラジルのポルトガル語は、歴史の初期段階において先住民の言語、次に奴隷として連れてこられたアフリカ人の言語に影響を受けました。また、19世紀になると欧州等からの移民の言語に影響を受けています。

ポルトガル語で「訛り」のことをソタッキ(sotaque)と言います。日本でも地域によって訛りがあるように、ブラジルにも様々な訛りがあります。訛りの起源を調べると、ブラジル各地の歴史が見えてきます。

ペルナンブーコ州は、かつてマウリシオ・デ・ナサウ公率いるオランダに支配された時の影響が残っています。オランダ語は、ゲルマン系の言語でRを強く発音するそうです。ペルナンブーコ州沿岸部の人々は今でもRを強めに発音します。

リオデジャネイロは、1808年から1821年にポルトガル本国の議会が置かれた影響もあり、カリオカのポルトガル語は、欧州のポルトガル語に最も近いようです(「S」を高く発音するなど)。

ブラジル南部には、イタリア人、ドイツ人の移民が多く流入していますので、その影響を受けています。特にリオグランデドスル州は、スペイン語圏のウルグアイとアルゼンチンに囲まれているため、当然のごとくスペイン語の影響を受けています。

北部では外国人移民の流入が比較的少なかったため、先住民の言語に近い発音が維持されている傾向があります。

ブラジルのポルトガル語は、欧州のポルトガル語と比べると、外国人にとっては聞き取りがしやすいと感じます。それは、おそらく、多民族国家の言語としてそうなる歴史と運命を持っていたからではないかと思います。

(文/唐木真吾、写真/Chris Ceneviva/GESP)
写真はサンパウロで毎年開催される移民フェスティバル。スペイン系移民がパエリア料理を紹介した

著者紹介

唐木真吾 Shingo Karaki

唐木真吾 Shingo Karaki
1982年長野県生まれ。東京在住。2005年に早稲田大学商学部を卒業後、監査法人に就職。2012年に食品会社に転職し、ブラジルに5年8カ月間駐在。2018年2月に日本へ帰国。ブログ「ブラジル余話(http://tabatashingo.com/top/)」では、日本人の少ないブラジル北東部のさらに内陸部(ペルナンブーコ州ペトロリーナ)から見たブラジルを紹介している。
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