じわじわと注目集めるブラジル発のプレミアム・スピリッツ「クラフト・カシャッサ」とは?

2019年 04月 1日

ブラジルカシャッサ研究所(IBRAC/イビラッキ) によるとカシャッサには4000もの銘柄があるという

ブラジル産の蒸留酒カシャッサに注目が集まりつつある。

カシャッサとは、ブラジルの特産品でサトウキビの絞り汁から作られる蒸留酒。このうち、ブラジルの各地で中小規模生産者の手で丹精を込めて作る地酒(クラフト・カシャッサ、現地ではカシャッサ・アルテザナウと呼ばれる)は、ブリュッセル国際コンクール・スピリッツ部門でさまざまな銘柄がメダルを受賞するなど、国外でも評価が高まっている。

ブラジルカシャッサ研究所(IBRAC/イビラッキ)の発表によると、2018年にカシャッサの輸出は1561万USドル(841万リットル)で、輸出先は77カ国だった。金額ベースでの輸出先の上位5カ国はアメリカ合衆国(19.80%)、ドイツ(16.26%)、パラグアイ(12.77%)、ポルトガル(8.59%)、イタリア(6.96%)。

日本への輸入量はまだ多くはないが、近年、少しずつ知名度も高まりはじめている。クラフト・カシャッサに関しては、2019年から新たに2銘柄の輸入がはじまっている。

駐日ブラジル大使館とブラジル輸出振興庁(APEX Brasil)は、3月5日(火)~8日(金)に開催されたFOODEX JAPAN 2019(第44回国際食品・飲料展)のブラジル・パビリオンでも「 カシャッサ・ステーション」を設け、カシャッサをプロモーションした。

FOODEX JAPAN 2019で展開されたカシャッサ・ステーション

同ステーションは、 カシャッサを輸入するインポーター5社(荒井商事株式会社、 株式会社イマイ、シモンセン株式会社 、 株式会社田地商店、 株式会社ロコトレ)と、カシャッサの普及活動を行う2大団体「カシャッサ・カウンシル・ジャパン」と「日本カシャッサ協会」の協力のもとで運営された。

これまでもFOODEX JAPANのブラジル・パビリオンではカシャッサが紹介されてきたが、「カシャッサ・ステーション」を設置して大体的にプロモーションが行われたのは今年がはじめてとなる。エドゥアルド・パエス・サボイア駐日ブラジル大使閣下に、カシャッサの魅力やポテンシャルについてうかがった。

エドゥアルド・パエス・サボイア駐日ブラジル大使閣下

「ブラジル製品の輸出を振興するにあたり、高品質な製品、多様な産品を紹介することが大切です。その中のひとつとしてクラフト・カシャッサは重要な品目であり、我が国の生物多様性と持続可能性を表わす産品でもあります。 カシャッサは、コーヒーと並び、ブラジルにとって名刺のような存在です 」 ( エドゥアルド・パエス・サボイア駐日ブラジル大使閣下)

日本の約23倍という広大な大地を持つブラジルには、大きく分けて6つのバイオーム(植物群系)が存在している。クラフト・カシャッサは、そんなブラジルの生物多様性を象徴する産品のひとつでもあるという。

「(カシャッサの原料である)サトウキビは国中で栽培されていますが、その性質は産地の気候や土壌によって異なります。ですからカシャッサは、生産地ごとに異なる個性を持っています」(同)

パラナ州にある「ポルト・モヘッチス」の蒸留所にあるサトウキビ畑

蒸留されたカシャッサは、ステンレスタンクなどで休ませた後、瓶詰されて出荷されるものと、これをさらに木の樽で寝かせ、熟成させるものとに分かれる。

そしてカシャッサの場合、熟成させる樽に使われる木の種類の豊富さというのが大きな特徴となっている。 オークをはじめ、アメンドイン、アンブラーナ、イペー、バウサモ、ジェキチバなど、使う木ごとに異なる味やアロマが楽しまれている。まさに、自然の多様性を楽しむことができるお酒だ。

リオデジャネイロ州にある「ファゼンダ・ソレダージ」のジェキチバの木の樽

「世界有数の生物多様性を誇る我が国を象徴するかのように、カシャッサの熟成をさせる樽に使われる木の種類は、実にさまざまです。その中にはブラジル固有の樹木もあります」(同)

熟成のために選ばれた木は、カシャッサに香りづけをするだけでなく、物語を付け加えることもできる。

「今回、FOODEXに参考出品されているカシャッサの中には、パウ・ブラジルという木を使ったものがあります。これはブラジルの国名の由来になったといわれている木です。イペーは、わが国のシンボルに指定されている花が咲く木です。ブラジルの特産品であるカシャッサを寝かせるのに、実に象徴的な木ですね」
(同)

パウ・ブラジルで熟成させたクラフト・カシャッサ(ファゼンダ・ソレダージ パウ・ブラジル)を手にするエドゥアルド・パエス・サボイア駐日ブラジル大使閣下 (左)

さらにサボイア駐日ブラジル大使閣下 は、日本の消費者こそ、こうしたカシャッサの特性を極めて深く理解してくれる存在だという。

「 クラフト・カシャッサは 、産地ごとのサトウキビの違い、樽に使う木の影響の違いなど、それぞれのクラフト・カシャッサが持つ多様な違いを楽しむことができる飲みものです。そして、日本のみなさんは、この繊細な違いをわかってくださる洗練された味覚をお持ちだと思います」(同)

実際クラフト・カシャッサは国際市場で評価が高まるにつれて、国外の消費者のニーズがフィードバックされることで品質の向上につながっているという。

「クラフト・カシャッサが広く注目されるようになってから歴史は浅いですが、洗練された味覚を持っている市場と接触することにより、生産者も、より高品質な製品造りを行うようになってきています」(同)

リオデジャネイロ州「カシャーサ・ダ・キンタ」の蒸留所でも徹底的な品質管理が行われている

そんな中、ブラジル政府もカシャッサの輸出を促進させるための新たな取り組みに着手しはじめている。

今年2月からは、開発商工省貿易局とブラジルカシャッサ研究所がイニシアチブととり、主に中小規模のカシャッサ生産者を対象に、サステナブルかつ安全な輸出のプロセスに関する詳細なインフォーメーションを提示するカシャッサ・ガイダンス・プログラムも始動した。

高品質なクラフト・カシャッサが、今後、より一層世界で知られることになりそうだ。

(文/麻生雅人、写真提供/カシャッサ・カウンシル・ジャパン、株式会社イマイ(ファゼンダ・ソレダージ)、シモンセン株式会社(カシャーサ・ダ・キンタ))