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【コパアメリカ2019】 ブラジル、難敵ペルーを破り優勝。チチ監督は初タイトルを戴冠

胴上げされるチチ監督 (写真/Lucas Figueredo/CBF)

ブラジルにとっては母国開催となったコパアメリカ2019年大会。7月7日(日)17:00(日本時間8日(月)5:00)、夕暮れのマラカナンスタジアムを舞台に、ブラジルとペルーによる決勝戦が行われ、ブラジルがペルーを破り優勝を果たした。

コパアメリカも基本的に4年の1度の開催だが、同じタイミングで行われる女子W杯も、この日、決勝戦が行われた。観戦で忙しかったサッカーファンは少なくなかっただろう。

女子W杯は、フランスのリヨンを舞台に行われ、キックオフは同じ現地時間で17:00。日本時間では、時差の関係から翌8日(日)の0:00となる。

さすが世界ランキング1位のアメリカ合衆国が底力をみせ、日本を破ったオランダを破り、4回目の優勝を飾った。

コパアメリカの決勝戦がはじまったのは、その約3時間後だった。

今回の対戦カードは、ブラジルとペルーになったのだが、この2チームはグループリーグが同じだったため既に一度戦っており、そのときは5-0でブラジルが大勝している。

しかし、サッカーというものは試合の流れ次第でどうにでもなるので、この結果は参考程度にしかならないだろう。

ブラジルの先発メンバーは、準決勝のアルゼンチン戦と同じ。

前回のペルー戦と比較すると、左SBがフィリペ・ルイス(アトレチコマドリッド)からアレックス・サンドロ(ユベントス)に代わっただけだった。

一方のペルーは、10番をつけているレジェンド的存在、ファルファン(ロコモティフモスクワ)が膝の怪我で残念ながら離脱している。

しかし、現在ブラジルのチームでプレーしている3選手、FWパオロ・ゲレーロ(インテルナシオナウ)、MFクエバ(サントス)、DFトラウコ(フラメンゴ)は揃って出場していた。

加えてトラウコ、そして絶対的エースでキャプテンのパオロ・ゲレーロも、2015~2018年までフラメンゴに属しており、ここマラカナンはホームスタジアムとして戦ってきたいわば庭のような場所だ。

さらにゲレーロにとっては、相手指揮官となるブラジル代表の監督チチは、かつて所属したコリンチャンスでは監督と選手という間柄だった。この試合に特別なものを感じていただろう。

試合開始前には、先日亡くなったボサノヴァのレジェンド、ジョアン・ジウベルトを偲んで黙祷が行われた。

私は一度、かつて住んでいたサルヴァドールで、ジョアン・ジウベルトのコンサートに行ったことがある。

ボサノヴァは日本人には人気があり、私も大好きだが、ブラジルでは日本ほど人気はなく、聴く人は限られている。しかしながら、ジョアン・ジウベルトは別格で、コンサートを開く機会がほとんどないせいもあり、チケットを手に入れるのが大変だった。

ジョアン・ジウベルトといえば歌う声が小さいことでも有名なのだが、私が聴きに行った日も例外ではなく、とても小さい声で歌っていた。

私はそれが当たり前だと思って聴いていたが、日頃アシェとかMPBを大音量で聴いているバイーアの人には特異に映ったのだろう。

観客から、「マイス・アウタ!(もっと大きな声で)」という声が上がり、ジョアン・ジウベルトは小声で、「これが私のスタイルなんだけどなぁ」といった感じでぼやいていたが、その後少し大きな声で歌い出していた。

この黙祷で、そんなことが思い出された。

試合が始まった。

序盤、ブラジルはなかなかボールをキープできない時間が続いた。

開始早々には、ペルーにいい位置でのFKがあり、開始5分ぐらいはペルーの攻撃が目立った。

しかし、そんな中、右サイドのダ二エウ・アウヴェス(パリSG)からの縦パスを受けたガブリエウ・ジェズース(マンチェスターシティ)が個人技で相手DFを交わし、フリーになっていた中央にいたエヴェルトン(グレミオ)に絶妙なクロスを入れ、エヴェルトンが難なくゴールを決めてくれた。

7月7日、マラカナンスタジアムで行われたコパアメリカ2019決勝戦(写真/Wander Roberto/CA2019)

前半15分という早い段階で、ブラジルに待望のゴールが生まれた。

このゴールは、優勝が絶対使命のブラジルにとって大きかった。

その後、やっとブラジルは、ボールをキープすることができるようになった。

まるで、サッカー少年がよく練習でやる鳥かご(パス回し)の連続だ。常にトライアングルになって、パス回しを続けていた。

しかし、ペルーの選手たちのプレッシャーは激しく、決して楽に回せていたわけではない。

ペルーは、準決勝で戦ったアルゼンチンとは違い、チームとして統制が取れており、ブラジルに対し徹底して激しいプレッシャーをかけ続けていた。

これは、監督のガレカの指導力によるものだろう。

この日のガレカは、なぜかダウンジャケットを着ていた。

今の時期ブラジルは冬だが、南部のポルトアレグレだとか、高地のサンパウロならわかるが、海辺に面しているリオデジャネイロでは寒くはないと思うのだが・・・。

激しいペルーからのプレッシャーはあったが、ブラジルは全員守備全員攻撃を徹底し、優勢に試合を進めていた。

ブラジルのチャンスは続くが、ゴールは決まらない。

右サイドばかりが目立つが、左サイドもチャンスはつくれており、アレックス・サンドロ(ユベントス)からのいいクロスがゴール前のフィルミーノ(リバプール)に入ったシーンは惜しかった。

そんな中、ブラジルのPA内で、DFの要 チアゴ・シウヴァ(パリSG)の腕にボールが当たってしまい、主審は迷わずPKの判定を下した。

VARのチェックは行われたが、ハンドの判定は覆られなかった。

キッカーは、ペルーの絶対的エース、パオロ・ゲレーロだ。

ゲレーロにとっては、かつてのホームグラウンド。思い入れは相当なものだっただろう。

ゲレーロの蹴った球は、GKアリソン(リバプール)の逆をつき、ゴールマウスにきれいに入っていった。

1-1の振り出しに戻ってしまった。前半44分のことだ。

今大会、ブラジルの守りはとても固く、無失点を続けていたが、決勝の舞台で初めてゴールを奪われてしまった。

これで、ガタガタに崩れなければいいと思った。

しかし、セレソンはやってくれた。

ペルーのゴールから4分後の前半終了間際に、ガブリエウ・ジェズースがゴールを決めてくれたのだ。

ピッチ中央でフィルミーノが奪ったボールを、アルトゥール(バルセロナ)がドリブルで運び、右サイドから中央に走り込んだガブリエウ・ジェズースが落ち着いて決めてくれたのだ。

7月7日、マラカナンスタジアムで行われたコパアメリカ2019決勝戦 (写真/Alan Morici/CA2019)

ブラジルは嫌な雰囲気を一気に払拭してくれた。

前半のうちに決まったこのゴールは、ブラジルにとって本当に大きかった。

2-1で前半は終了した。

後半も、ブラジルのいい攻撃は続いた。

何度か惜しいシュートもあった。

ちょっと気になったのが、コウチーニョ(バルセロナ)だ。

この日のコウチーニョは、少しボールを持ちすぎている印象を受けた。

ある程度ドリブルで運んだら味方選手にパスを出せばよいと思うのだが、自分で強引にシュートまで持って行きボールを失うシーンが何度か見受けられた。

前半同様、ペルーも激しいプレッシャーから時折ボールを奪い、ブラジルにとって決して楽な試合ではなかった。

特にペルーのセットプレーには注意が必要で、心に隙が出ればすぐにやられてしまうと思った。

そんな中、後半25分、素晴らしい動きをしていたガブリエウ・ジェズースが2枚目のイエローカードをもらい、退場させられてしまった。

この判定は少し厳しすぎると思った。

ガブリエウ・ジェズース自身も、絶好調だっただけに、無念だっただろう。

退場するときには、涙を流していた。

この退場はかなり痛かった。

というのも、ボール回しの試合なので、一人少なくなったブラジルにとっては、かなり不利になるからだ。

その後、試合は一転して、ペルーがボールをキープするようになった。

監督のチチはすぐに動いた。

後半30分、好調のフィルミーノに代えヒシャーリソン(エバートン)を投入した。

そしてその1分後には、コウチーニョからDFのエデール・ミリタォン(ポルト)に代えた。

初戦、第2戦で先発出場していたヒシャーリソンは、ガブリエウ・ジェズースにポジションを奪われ、またその後おたふく風邪にもかかり、しばらく試合に出ていなかった。最後の試合で思いがけずチャンスを得ることができた。

エデール・ミリタォンは、今大会初出場。

ダ二エウ・アウヴェスを1列前に移動させ、右SBの位置に入った。

ペルーも立て続けに選手を交代させ反撃するが、なかなかゴールには繋がらない。

そんな中、後半42分に、ドリブル突破したエヴェルトンがPA内で倒されPKの判定。

VARがあるので、主審の判定だけでは喜べないが、VARチェックでも覆ることはなく、PKが確定した。

PKキッカーのコウチーニョは交代で退いている。

誰が蹴るのかと思ったら、ヒシャーリソンがPKスポットに入っていった。

これには驚いた。

試合の中でもいい動きをしているアルトゥールかダニエウ・アウヴェスあたりが蹴るのかなと思った。しかし、レギュラーポジションを奪われしばらくプレーしていない若干22歳の若手選手が堂々とPKを蹴ろうとしていた。

正直かなり不安を感じた。

蹴った瞬間、外したかと思った。

しかし、ギリギリだが、左隅に入っていた。

ヒシャーリソンは、シャツを脱いで喜んでいた。

7月7日、マラカナンスタジアムで行われたコパアメリカ2019決勝戦 (写真/Alan Morici/CA2019)

ストライカーとして、強い気持ちを持って臨んでいたのだろう。その思いが通じたのだ。

シャツを脱いだことに対して、当然、非紳士的行為でイエローカードはもらったが、このゴールでブラジルは楽に試合を終えることができた。

最後、後半アディショナルタイムに、ブラジルはエヴェルトンからアランに代え、最後の交代カードを切った。

フィールドプレーヤーとして唯一出場していなかったファグネル(コリンチャンス)を出してもいいかなと思ったが・・・。

そのまま3-1でブラジルが勝った。

7月7日、マラカナンスタジアムで行われたコパアメリカ2019決勝戦 (写真/William Lucas/CA2019)

ブラジルは優勝することができたのだ。

退場したガブリエウ・ジェズースは泣いていて、チームメイトたちに慰められていた。

ゲレーロがチチと談笑していた。

かつての監督と選手。こういうシーンはとてもいいと思う。

ピッチではそのまま、表彰式が行われた。

まずは、この試合のマンオブザマッチ。先制ゴールを決めたエヴェルトンが選ばれた。ブラジルのビールブランド、ブラーマのカップが送られていた。今大会のスポンサー。私もブラジル在住時代、よく飲んでいた。

続いて、ダ二エウ・アウヴェスが登場。てっきり今大会のMVPかと思いきや、フェアプレー賞で、受賞したブラジルチームのキャプテンとして登場したのだった。

その後、アリソンがベストGK賞、エヴェルトンが得点王として登場。

そして、再びダ二エウ・アウヴェスが登場。今度は正真正銘のMVPの受賞だった。

これには誰もが認めるところだろう。

今大会のダ二エウ・アウヴェスは凄かった。

基本は右SBというポジションだが、試合の流れに沿って、縦横無尽に動き回り、数多くのチャンスを作りだしていた。

また、キャプテンとしてピッチ上での率先垂範を体現していた。

36歳になるが、運動量はまったく衰えていない。むしろ、今が全盛期ともいえる動きだった。

昨年のロシアW杯では怪我のため招集されていないが、もし彼がいたら結果は違っていたかもしれない、とも思わせるぐらいの素晴らしいプレーぶりだった。

続いて、審判団の登場。第4の審判も含めこの日の審判団にメダルが授与された。

そして、準優勝チームにメダルの授与。監督、選手たち一人ひとりにメダルが授与された。

そして、最後に優勝チームの表彰だ。

監督のチチを先頭に、選手たちにメダルが授与され、キャプテンのダ二エウ・アウヴェスがカップを掲げ、チームメイトすべてが歓喜の渦へ。

チチは一番後ろの端っこに控え目に佇んでいた。

監督のチチにとって、国際大会での初タイトル。やっとタイトルを取ることができたのだ。

もっとも期待された昨年のW杯では結果を出すことができなかったが、素晴らしいチームを作り上げていたことは、誰もが認めていた。

やっと一つ結果を出すことができた。

今大会は、高額なチケット代の影響からスタジアムの空席が目立つなど、ブラジル国内では盛り上がりに欠けていると言われてきた。

しかし、優勝したことにより、ブラジル国内は間違いなく盛り上がったことだろう。

チチとブラジルの選手たちは、大きな仕事をやってのけたのだ。

最後に、ネイマールについて触れたい。

今大会、ネイマールがいたらどうだっただろうか。

ネイマールがいたら、もっと簡単に勝てたという人もいるだろう。

いや、ネイマールがいなかったからこそチームがまとまって勝てたという人もいるかもしれない。

それは誰にもわからない。

ネイマールのプレーを見たい、と思うのは私だけだろうか。

今回のセレソンには、新しいフッチボウアルチを感じた。

このチームにネイマールが入ったらどうなるだろうか。

そう考えるだけで私はわくわくしてしまう。

これからのセレソンはとても楽しみだ。

ブラジル国内ではもちろんだが、それだけでなく、全世界でも注目を浴びることを期待したい。

(文/コウトク)

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著者紹介

コウトク  2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。現在、スポーツナビのブログ「ブラジルサッカーレポート」(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/kohtoku/)を執筆中。