ストリートサッカーの世界大会「レッドブル・ネイマール・ジュニア・ファイブ」の魅力とは

2019年 08月 27日

7月13日に開催されたレッドブル・ネイマール・ジュニア・ファイブ(撮影/Christian Pondella/Red Bull Content Pool)

ネイマールが主宰するストリートサッカーの世界大会「レッドブル・ネイマール・ジュニア・ファイブ」が2019年も開催された。

今年で4年目を迎えたこの大会はネイマールが考案した世界大で、5対5で行う10分間のストリートサッカーの大会だ。ネイマールが生まれ育った町に設立した非営利スポーツ施設「ネイマールJr教育センター」が中心となって、このストリートサッカーを世界大会へと拡げていったのだ。

世界約60カ国で行われる予選を勝ち抜いたチームだけが、ブラジルで行われる世界大会に招待される。そして、世界一に輝くと、ネイマールのチームへの挑戦権が獲得できる。

2019年のファイナルは7月13日にサンパウロのネイマールJr 教育センターで行われた。女性部門はスロヴァキア代表、一般部門はハンガリー代表が、それぞれ大会を制し、ネイマールのチームと対戦した。

今回、日本代表は「世界一」に惜しいところまで漕ぎつけた。現役短大生中心で構成された女子チーム、Cienciaボスベイビーが準決勝でカナダ代表を破り、決勝に進出したのだ。スロヴァキア代表との決勝戦では、残念ながら1-2で優勝を逃した。

一般部門のFC Capachildは、準々決勝で、優勝したハンガリー代表に敗れた。10万人以上が参加する世界大会で優勝を意識できるところまで行けたのは、日本でも“楽しむサッカー”が根付いてきた証拠だろう。

7月12日に開催された日本のTeam Ciencia対イタリアチーム(写真/Marcelo Maragni/Red Bull Content Pool)

この「レッドブル・ネイマール・ジュニア・ファイブ」の参加資格はアマチュアのみ。つまり、優勝すればアマチュアのプレイヤーが、ネイマールと真剣試合ができるという夢の大会なのだ。

「最初はみなさん、ネイマールと対決しよう! と思って参加されるようですが、実際にトーナメントが始まると楽しくなってしまい、ネイマールのことを忘れてゲームに熱中されています」と語るのは、本大会の日本での予選をプロデュースをしているスポーツマネジメント株式会社の松浦和輝さん(38)。

自身も小学校時代から現在までサッカーをプレイし続けているという松浦さんに、この大会ならではの魅力について話をうかがった。

まずは、参加資格の自由さが、魅力のひとつだと松浦さんは語る。

日本予選プロデューサーの松浦和輝さん ( 写真提供/マネジメント株式会社)

「参加する際には、5名までは16才~25才と年齢の枠がありますが、あとの2名は何歳でも構わないんです。また、日本代表チームであっても、全員在日ブラジル人でも構いません。女性部門のトーナメントもあります」(松浦和輝さん)

オーバーエイジ枠の2名に60才のスーパー爺さんが含まれていても構わないという自由さがストリートサッカーらしい。

そして、皆が熱中するもうひとつの要因が、ドラマチックな試合展開が可能となるルールにある。

「5対5でゲームが始まりますが、先制点を取られると、選手が1人退場しなければなりません」(同)

なんとも逆転がなかなかできそうにない過酷なルールが課せられているが、しかしこのルールによって、先制点を取られたチームは、逆にドラマメイクの可能性が与えられるのだ。

先に得点を取られて人数が減っていも、プレイヤーの活躍次第で、逆転も可能なのだ。逆境を跳ね返しての逆転劇は大いに盛り上がることだろう。

そもそも、この5人制というルールには、ネイマールの先制点に対するこだわりが反映されているのだという。

「ネイマールのメッセージとして、サッカーは先制点が大事だという気持ちが込められています。1点目を取られないためのディフェンスも大事だし、攻撃で主導権を取ることの大事さを痛感できるのが、このゲームの醍醐味なんです」(同)

勝負はたった10分間。ホイッスルの後に何人プレイヤーが残っているかで、勝敗が決まる。

「短時間で勝負がつくのに、ドラマチックな試合展開がたびたび起こるんです。壁があるコートでの試合では、壁を利用することで、ワンツーも可能ですし、角度を間違えなければ独りロングパスもできます。遊び感覚に溢れた、自由なアイデアに勝るチームが勝ち残っていくのが、見ていて楽しいですね」

万が一、0-0のままで10分を過ぎると、サドンデスとなるのかと思いきや、代表同士の1対1での勝負となるという。

最終的には個人技を高めないと王者にはなれない仕組なので、この大会がより広がることで、個人プレーを得意とする、伝統的なブラジルらしいスター選手が育ってくれることを期待したい。

そして、一般人チームがネイマールに勝って、悔しがるネイマールの顔を見てみたいと思うのは筆者だけだろうか。

(文/加藤元庸)