アサイーの造血機能性に関する研究発表会、開催される

2019年 08月 11日

パラー州の特産品アサイー(写真/ANTONIO SILVA /ARQUIVO AG. PARÁ)

7月31日(水)、駐日ブラジル大使館にて、アサイーの造血機能性に関する研究発表会が行われた。

アサイーはアマゾン地域が原産のアサイー椰子になる果実で、これまでも抗酸化作用を持つスーパーフードとして知られてきたが、新たな研究で、貧血改善効果を持つ機能があることがわかったという。

この日、研究発表を行った国立長寿医療研究センター 老化ストレス応答研究プロジェクトチームの清水孝彦プロジェクトリーダーは、研究結果に「非常に驚いている」と語った。

主な産地であるブラジルのパラー州トメアスから、アサイーを輸入している株式会社フルッタフルッタの長澤誠CEOは、研究プロジェクトの発端はトップアスリートたちから寄せられる、パフォーマンスが向上するという数々の“体感”の声だったという。

長澤CEOから相談を受けた白澤抗加齢医学研究所の白澤卓二所長は、アサイーの摂取によりアスリートのパフォーマンスが向上する原因を探るうち、貧血改善に効果があると推測したという。

「最初は、アサイーの中に鉄分が含まれていて、それが貧血に効いているのではないかと考えました。しかし調べてみると、アサイーの中にはそれほど多くの鉄分は含まれていなかったのと、鉄分の種類も、比較的吸収しにくい非ヘム鉄だったのです」(白澤卓二氏)

そして、アサイーが造血そのものに関与しているのではないかと仮説を立てた白澤所長から相談を受けた千葉大学医学部大学院医学研究院の清水孝彦准教授(2018年当時。現・国立長寿医療研究センター 老化ストレス応答研究プロジェクトチーム プロジェクトリーダー)のもとで、そのメカニズムの解明を目指す研究がはじまったという。

研究発表の中で清水氏は、アサイーが赤血球を作る作用を促すことがわかり、その作用は、身体の中から出てくる、血を作るホルモンの分泌量を増やす作用であることが判明したと述べた。

国立長寿医療研究センター 老化ストレス応答研究プロジェクトチームの清水孝彦プロジェクトリーダー (撮影/麻生雅人)

発表に先駆けて清水氏は、血液と貧血についての簡単な解説を行った。

呼吸によって取り入れられた空気の中の酸素が赤血球の中にあるヘモグロビンと結びつき、赤血球が体中を巡ることで酸素を運んでいくという。そのため「貧血とは“身体中の組織が酸素不足になっている状態”」といえるという。

造血ホルモンと呼ばれるエリスロポエチンは、身体中の酸素の量を感知して腎臓で作られ、分泌されているという。いったん酸素が足りなくなる状態になると腎臓からエリスロポエチンが分泌され、この物質が骨に作用することで、赤血球がたくさん作られるという。

まず清水氏は、貧血ではない正常の状態のマウスにアサイーを投与する実験で血が増えることを実証。血液を検査したところ、赤血球だけが増えていることが判明したという。そして血液中のエリスロポエチンを調べ、このエリスロポエチン自体が増えていることがわかったという。

次に清水氏は、では、通常は、酸素不足となることで分泌されるエリスロポエチンが、なぜアサイーを摂取することで分泌されるのか、という疑問を抱いたという。

アサイーが、腎臓に、酸素が不足しているという偽の情報を与えるのではないかという仮説を立てた清水氏はアサイーを摂取した際の腎臓の状態を調べたところ、まさに仮設を裏付ける結果が得られたという。

また、マウスとヒトはの造血に関するメカニズムはまったくな同じなため、同じ効果がヒトでも十分ありうると清水氏はいう。

清水孝彦氏の研究発表につづき、スポーツ栄養アドバイザーの石川三知氏、全国大学ラグビーフットボール選手権大会で史上初の9連覇を果たした帝京大学ラグビー部の岩出雅之監督、数々のレースで日本人初のウィナーとなる成績を残すレーシングドライバーの横溝直樹選手が、アスリートにとってアサイーが実際にもたらす効果について語った。

左から 横溝直樹選手 、岩出雅之監督 、 石川三知氏(撮影/麻生雅人)

これまでに全日本バレーボールチーム、フィギュアスケートの荒川静香選手や高橋大輔選手など、五輪メダリストをはじめとする多くのアスリートをサポートしてきたスポーツ栄養アドバイザーの石川三知氏は、貧血に悩むアスリートは性別や年齢に関係なく非常に多いという。

帝京大学ラグビー部では2008年に血液検査で貧血の傾向が見られたことから、栄養指導のもと、アサイーをメニューに取り入れ効果が表れているという。

横溝直樹選手は、レース後に苦しめられていた貧血状態が、アサイーにより改善した体験を語った。

「僕がやっているスーパーGTというレースは、夏は車内が70~80度くらいになりますし、心拍数をはかってみると、レースのスタート時には200くらいまで上がり、レース中、1時間くらい平均心拍数は150くらいなんです。コースによって異なりますがレース中は3~4Gがかかり、頭も普段の3倍~4倍の重さになりますからコーナーでは頭を支えるのもやっとです。ひとつのレースが終わると5㎏くらい痩せる環境なんです」(横溝直樹選手)

レースが終わると本当に目の前が真っ暗になるほど貧血に悩まされていた横溝選手は、表彰台に向かにも、体力が回復するまで動けなかったという。さまざまなトレーニングを試したが効果がえられなかったところ、アサイーを摂取しはじめてから環境が改善され、以来、17年間アサイーを摂取しているという。

今後、清水氏は、アサイーがどうやって腎臓に酸素が少ないと認識させているのか、アサイーのどの成分がこの機能を果たしているのか、そして副作用の有無を解明することが必要だと語った。

また、清水氏は、世界各国の研究者にとってアサイーは研究途上の新しい素材で、今後ますます研究が広がっていくだろうと語った。現時点で発表されている研究論文では、ガンに関する抗腫瘍作用の研究が最も多いという。動物実験においてはガン細胞の増殖を抑えるという発表もあるという。

「アサイーでみなぎるプロジェクト」 始動(撮影/麻生雅人)

これらの研究結果を受けて、株式会社フルッタフルッタは、「アサイーでみなぎるプロジェクト」を発足させ、 アサイーの造血機能を生かしてアスリートのパフォーマンス向上を提案訴求していくという。プロジェクトのオフィシャルサイト(https://www.frutafruta.com/minagiru/)では、アサイーと造血、スポーツの関連情報を発信していく。

プロジェクトの一環として山梨学院大学陸上部短距離ブロックとの実験プログラムが7月からスタートしている。血液検査のレベルが一定値以下の選手が適量のアサイーを摂取することで、効果の検証を行っていくという。

(文/麻生雅人)