【コラム】サンフランシスコ河中流域における灌漑農業の発展

2019年 12月 17日
写真はペルナンブッコ州フロレスタ、2014年10月。サンフランシスコ川流域灌漑計画のために行われている同川の分水プロジェクト施設(写真/Moreira Jr./outubro 2014/PAC)

筆者が働く会社は、アセロラ果汁濃縮を主体とするアグロインダストリーであるが、本稿では当社が位置する地域の経 済を支えている灌漑農業全般について述べてみたい。

1:サンパウロ市と並ぶ雇用創出者数

筆者はブラジルの大都市サンパウロから約2,700km 北東の場所にあるペルナンブーコの州都レシーフェ(ヘシーフィ)の、さらに西の内陸へ約700km入ったペトロリーナという辺鄙な場所に住んでいる(注:2018年当時)。

ブラジルの経済紙「ヴァロール・エコノミコ」紙は、このペトロリーナと隣町(ジュ アゼイロ、カーザ・ノーバ)を合わせた 都市の雇用創出者数(12,700 名)が、 人口20 倍以上もあるサンパウロ市の数 (14,800 名)と並んだというニュースを報じた(集計期間2017年1〜10月)。

ブラジル人ですらその存在を知る者の多くないこの地方都市が天下のサンパウロに雇用創出数で肩を並べたという快挙は、そこに住む筆者にとっては非常に喜ばしいニュースであった。

当地の主な産業は「サンフランシスコ河」の豊かな水を利用した灌漑農業によるマンゴーとブドウの栽培と輸出である。2014年10月のルセフ大統領再選後に急激なレアル安が発生し、これが輸出業者の利益を押し上げ多くの雇用を生む結果になったのだ。

産業の源泉となったサンフラン シスコ河と灌漑農業による経済発展の歩みについて、紹介していこう。

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