日本代表対ブラジル代表戦、日本は大善戦。ブラジルがネイマールのPKで辛勝

2022年 06月 8日
6月6日、国立競技場。キリンチャレンジカップ2022 日本代表対ブラジル代表戦でPKゴールを決めたネイマール(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

ついにこの日がやってきた。セレソンの試合が久しぶりに日本で観れるのだ。それもできたばかりの新国立競技場でである。

2022年6月6日(月)19:20、東京の国立競技場で、日本代表対ブラジル代表の親善試合が行われた。

ブラジル代表が日本で試合を行うのは、2002年日韓W杯以来20年ぶりである。

この日、試合会場となった東京は、朝から雨だった。

試合時間が近づき、若干雨足は弱くなったが、それでも雨模様の中、スタジアムの周りはこの祭りともいえる試合を観ようと大勢の人で賑わっていた。

ブラジル人の姿もちらほら見える。何人かに声をかけてみたが、日本在住者が多いようだ。出身がバイーア州の人、コリンチャンスのチャントを歌う人もいた。

親善試合ということも大きいだろう。タイトルがかかった戦いではない気楽さが観客の中にもあるようだ。試合前のスタジアム周辺は、まさに祭りの前という様相を呈していた。

客席はほとんどが屋根に覆われている。観戦するうえで、雨はまったく関係ない。しかし、屋根のかかっていないピッチ上では激しく雨が降っていた。

親善試合とはいえ、ブラジル代表を迎えるこの1戦は、日本代表にとって特別な試合である。FIFAランキング1桁のチームとの対戦は、あの2018年W杯のベスト8をかけたベルギー戦以来となる。自分たちの力を試せる恰好の機会である。これ以上ない機会を与えられたのだ。

それを見守るサポーターたちにとっても格別な思いがあるだろう。

何と言ってもあのブラジル代表が来るのだ。それも、世界的プレーヤーのネイマール(パリサンジェルマン)を筆頭に、ついこの間行われたUEFAチャンピオンズリーグ(以下CL)の決勝戦で決勝ゴールを決めたヴィニシウス・ジュニオール(レアルマドリッド)など、ベストメンバーで臨んでいるのだ。

試合前のセレモニーも見応えあるものだった。

一瞬会場を暗くして、観客のスマホの明かりだけで会場を照らすというものだ。これだけでも、高揚感が沸き上がる。

双方の国歌斉唱は、日本人歌手によるアカペラだった。

まずはビジターのブラジル国歌。6月2日のパラグアイ戦に続き、ソプラノ歌手の新藤昌子さんによるもの。聞くところによると、70か国以上の国歌をアカペラで歌えるそうだ。あのドラマチックなブラジル国歌をソプラノで歌い上げてくれた。

そして日本の国歌 君が代は、ナオト・インティライミだ。会場が盛り上がる。

19時23分頃、予定より3分ほど遅れてキックオフされた。

この日のブラジルの先発メンバーは、6月2日の韓国戦から4人変わっていた。

GKがウェベルトン(パウメイラス)からアリソン(リヴァプール)へ、CBがチアゴ・シウヴァ(チェルシー)からミリタォン(レアルマドリッド)へ、左SBがアレックス・サンドロ(ユヴェントス)からギリェルミ・アラナ(アトレチコミネイロ)へ、そして最前線の一角がリシャーリソン(エヴァ―トン)からヴィニシウス・ジュニオールへ変更されている。

ネイマールをはじめカゼミーロ(レアルマドリッド)やハフィーニャ(リーズ)など2試合連続で先発に選ばれた選手たちはレギュラー争いで一歩リードしていると言えるのではないだろうか。

日本代表は、3月までのW杯最終予選を戦ったレギュラーメンバーでほぼ固めたが、いつもは左を任されている長友が右SBで出ていた。

大迫不在の1トップには古橋が入った。前日会見で、チチ監督が名前を挙げていた選手(吉田、長友、遠藤、南野、伊東)はすべて先発出場を果たしている。6月2日のパラグアイ戦とは大幅な変更となった。

開始から2分。ブラジルのファーストシュートがいきなりゴールポストに当たる。ゴールに入ってもおかしくない当たりだった。

このシュートが決まっていたら、結果は違っていただろう。しかしこのシュートが決まらなかったことで、この日の試合はおもしろいものになった。

ここ近年の日本とブラジルの代表戦は、前半の早い段階でブラジルがゴールを決め、ブラジルが楽勝に持ち込んでいる。特にネイマールは日本をお得意さんにしており、常に大活躍している。

しかし、この日の試合は、そうはいかなかった。

ブラジルがボールを持つ時間は多いとはいえ、決してブラジルが一方的に攻めているわけではない。

日本は、中盤でボールを奪取し、その多くの場面で、スピードスターの伊東へボールをつなげるのだ。

南野もドリブルで運ぶが、ダニエウ・アウヴェス(バルセロナ)にファウルで止められる。

前半10分にも満たない時間で、見応えのあるいい試合になる予感がした。

ブラジルもいい攻撃を見せたりはするが、それ以上に、日本選手たちのハードワークぶりは目を見張るものがあった。

前日の記者会見で森保監督が話していた言葉が思い出された。

「アグレッシブで積極的に勇気を持って試合に入る」

「相手のハイプレッシャーをいかにかいくぐれるか。早い判断を持って、全員が連動する」

「いい守備からいい攻撃へ」

「ここからW杯で結果を出すために、限界を超えるトライ」

森保監督の語った言葉がすべて体現されているのだ。

日本は、王者ブラジルに対して、まったく臆することなく、体を張ってボール奪取を試みていた。

それに対して、ブラジル選手たちも本気のタックルで応戦していた。

しかし、パスがつながらない。攻め手が見つからない。うまく攻撃できない…。

前半15分、前半の3分の1しか経っていないのに、そんな感じを受けた。

日本はそのハードワークによりファウルを取られることが多く、そのためブラジルはFKのチャンスが数多くあった。

しかしFK、CKをネイマールかハフィーニャが蹴るのだが、PA内に入ってきたボールを日本のDF陣がことごとく跳ね返す。ブラジルはPA内までは入れるのだが、日本の守備ブロックはとても固かった。

ブラジルのシュートは、GKの前のブロックでことごとく跳ね返されていた。

そんな強固なブロックを敷くDF陣をかいくぐられる場面もあったが、それをGK権田がはじき出すのだ。

この日の権田は神がかっていた。こんな権田を見たことがない(筆者は、Jリーグでは清水エスパルスのファンだが、エスパルスでの権田とは別人のようだった)。

そんな日本だが、守備一辺倒ではなく、ボール奪取からきちんと攻撃に繋げる。まさに、森保監督の言葉にある「いい守備からいい攻撃へ」だ。

特に伊東、長友の右ラインは多くの見せ場を作った。

足の速い伊東にロングボールが入り、長友が相手PA内まで進入して何度もチャンスをつくり出していた。

まるで、先日のCL決勝で、レアルマドリッドが、カルバハルとバルベルデによる右サイドの攻撃を彷彿させた。

世界王者ブラジル相手に日本は互角、いやそれ以上の戦いを見せていた。

日本は、パスが繋がらないブラジルから中盤でボールを奪取して、伊東につなげる。そして伊東が駆け上がりPA内にクロスを入れ、それをきちんと合わせてシュートで終わる。ゴールこそ決められないが、シュートまでは持っていけていたのだ。

一方のブラジルだが、ネイマールもいつもなら軽々と抜けるところが抜けられない。

いつもと何か、調子が違う。ちょっとずつだが何かがずれているのだろう。

前半の終盤は、ブラジルが攻め立てた。

ネイマールがシュートを放つが、権田が決死のセーブで止める。ネイマールは主審に何やら文句でも言っている様子だった。雨の中、ピッチ近くで様相を見守るチチ監督も渋い表情だ。

再びネイマールのシュートは決死のDF陣がブロック。

続くルーカス・パケタのシュートもDF陣がブロック。

ヴィニシウス・ジュニオールの突破もDF陣が止めた。

あっという間に前半が終了、0-0で折り返した。

会場全体に、今日の日本は違うぞ、一方で、期待したブラジルらしさは見られないのか、といった空気が漂っていたように感じた。見応えあるおもしろい試合であることには違いないが。

(次ページへつづく)

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著者紹介

コウトク

2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。
2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。

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