駐日ポルトガル大使館、西麻布へ移転
2023年 03月 22日
1543年、種子島に3人のポルトガル人が漂着して日本とポルトガルの交流がはじまってから、480年が経つ。
「ポルトガル・日本交流480周年」を迎える今年、これまで麹町を拠点としていた在日ポルトガル大使館が西麻布に移転。3月2日(木)、新大使館のお披露目会が開催された。
お披露目会には、ポルトガルと交流の深い諸国の大使や政治家も列席。ブラジルからはオタヴィオ・エンヒッケ・コルテス駐日ブラジル大使閣下、パトリシア・コルテス主席公使、日本からは衛藤征士郎・日本ポルトガル友好議員連盟会長も列席して同大使館のお披露目を祝した。
同会でヴィットル・セレーノ駐日ポルトガル大使閣下は、「新大使館は開かれた場所に」と語った。
「私たちに合った場所を探し、(大使館は)25年目余りの年月を経てモダンなビルになりました。この新しい大使館は友好のために使うことができる、みなさんのために開かれた場所です」(ヴィットル・セレーノ駐日ポルトガル大使閣下)
「両国の関係の歴史は480年前にさかのぼり、そのとき東洋と西洋がつながりました。以来、両国は友情を築き、今に至っています。これから先もこの友情を続けていきたいと思います。互いを思いやる気持ち、前向きな気持ちなど、両国には共通していることがたくさんあります。これからも手に手を取っていけると信じています」(ヴィットル・セレーノ駐日ポルトガル大使閣下)
新大使館のお披露目会では、来日したポルトガルのストリートアート作家VHILS(ヴィールス、またはヴィウス)が館内の壁面に制作した壁画も披露された。
「私は3つの出来事を強調したいと思っています。日本とポルトガルの友好が500年近くも続いているということ。素晴らしい大使館が完成したことで両国の絆がさらに深まるであろうこと。そして、ここに私が呼ばれて来ていることを大変名誉に思います。このすばらしい場所、『日出ずる国』にいることを感謝いたします」(VHILS)
VHILSことアレシャンドレ・ファルトは、レリーフ・ポートレートと呼ばれる作風で国際的に活躍するストリート・アート作家。バンクシーが主宰するグラフィックアートの祭典「CANS FESTIVAL」にも招待され出品している。
得意とするのは壁画だが、今回は広告ポスターが幾重にも張り重なった壁を白く塗り、その壁を彫刻して大航海時代のポルトガルの国民的詩人、ルイス・デ・カモンイスの肖像画が中心に描かれた作品を作った。白い表面の下で何層にも蓄積されたポスターの、いずれかの層を堀った部分に表出させて、最終的に肖像画を浮かび上がらせている。
EscritorioDeArte.comで紹介されているバイオグラフィーの中で「私が探求する基本的な概念のひとつは、創造の力としての破壊行為。この概念はグラフィティからもたらされました。除去による作業プロセスは、私たちを構成している歴史的・文化的な層の重なりを分解または破壊することになります」とのコメントが紹介されている。
「これらの層のいくつかを取り除き、ある層をそのまま残しておけば、私たちは上に残っているものの、背後に残したものをシンボリックな形で表出させることができます」(VHILS)
今やVHILSは本国ポルトガルのみならず、ロンドン、モスクワ、ニューヨーク、ロサンゼルス、ボゴタなど世界各地の都市で作品を制作しており、2019年にはブラジルのブラジリアでも展覧会を開催している。
ブラジルでは手彫り彫刻による17点の木製の扉を展示した。作品制作する際、作品を行った場所の文化を作品に取り込んできたヴィウスは、内4点を、パラナ州のアラサイ居住地で暮らす先住民族と共に制作を行った。
駐日ポルトガル大使館の壁面に制作された壁画では、種子島で毎年開催される鉄砲まつりや、ポルトガルの音楽施設と共同で文化事業を毎年開催している東京文化会館など両国と深い絆のある祭りや施設のポスター、大使館近隣の広尾商店街のポスター、ポルトガルから持ち込んだポスターなどを貼り重ね、一番上に張ったホワイトペーパーを削ることで制作された。両国の文化が重ね合わされ重層的につくられた土台の上に、日本の寺院や、クリスティアーノ・ロナウドの目などが表現されている。
新しい駐日ポルトガル大使館では、さまざまな文化イベントを開催していく準備中とのこと。イベントなどが開催され一般入館が行われる際に壁画も観覧することができる予定だ。
駐日ポルトガル大使館の公式HPはhttps://toquio.embaixadaportugal.mne.gov.pt/ja/。
(文/麻生雅人)