アマーロ・フレイタス、10月25日(金)~27日(日)、ブルーノート東京に初出演
2024年 10月 24日
Jean Elton ジーン・エウトン(ベース)、Hugo Medeiros ウーゴ・メデイロス(ドラム)とのトリオで「Sangue Negro」(2016)、「Rasf」(2018)、「Sankofa」(2021)を発表してきたピアノ奏者Amaro Freitas アマーロ・フレイタス。
2023年に音楽フェスFRUEZINHOで初来日公演を行ったのも記憶に新しいアマーロが、ブルーノート東京に初出演を果たす。
今回の公演は、これまでのトリオ編成ではなくソロで取り組んだ4作目のアルバム「Y’Y」発表後の公演でもあり、同作品で取り組んだ表現が披露される。
アルバムタイトルの「Y’Y」は、アマゾン川中流域で暮らす先住民族Sateré-Mawé(サテレ・マウエ)族の言葉で“ieiê” と発音され 水、または川を指す言葉とのこと。アマーロはブラジルのメディアに対しこの作品は「森林、特にアマゾン地域の森林とブラジル北部の川々への賛辞。私たちの祖先としての自然を再認識して、自然と共にに生き、それらを感じ、尊重し、守るように呼びかけるもの」と語っている。
デビュー以来、ジャズをベースに、フレーヴォ、コーコなど故郷ペルナンブッコ州に伝わる伝統音楽や、アフリカにルーツを持つブラジルの文化に根差した音楽などに向き合い、ブラジル音楽のルーツを模索しつつ表現に取り組んできたアマーロが、「Y’Y」で取り組んだのは、植民地化以前から、後にブラジルと呼ばれることになる土地にあったサウンドとの融合だ。
たとえば、アマゾン原産の果実アサイーは、先住民が食していた果実でもあり、植民地化される以前からざるブラジルの食文化のひとつだ(アサイーを絞った汁をチジェーラと呼ばれる器に入れて食すスタイルは、元祖アサイーボウルともいえる)。ブラジルではこの果物の種は首飾りなど装飾品として親しまれてきたが、アマーロは楽器として利用している。
アマーロが先住民の文化と、改めて本格的に向き合うこととなったのは、マナウスを訪問したことがきっかけになったという。
先住民の文化を意識するようになったアマーロはサテレ・マウエ族の居住区を実際に訪ね生活を共にして、儀式にも参加したという。彼らとの生活の中で得たインスピレーションが、この作品には大きく反映されている。
アメリカ合衆国の作曲家ジョン・ケージが考案したプリペイド・ピアノ(グランドピアノの弦にネジなどの金属やゴムなどを仕込んで、音色を打楽器的に変化させたピアノ)の利用を考えていたアマーロは、楽器を傷つけないために金属を避けてオーガニック素材(木笛、洗濯ばさみなど)を選び、かつブラジルのアイデンティティを感じさせる素材(植物の種など)を使っているという。
アルバム収録曲のひとつ「Uiara (Encantada da Água) – Vida e cura」という曲ではピアノの弦に EBowと呼ばれるギターに使用する電子弓装置を取り付けて、ピンクイルカが泳ぎ回るアマゾンの川を思わせるような世界へ聞き手をいざなっているという。
曲名のUiaraは、トゥピ・ヤラ族に伝わる女性名のIaraの変形と考えられている。Iara はアマゾン地域の海に棲むといわれている人魚の名前で、 Mãe d’água(水の母) としても知られている。歌で男性を魅了するIaraは姿も麗しく、同時に勇ましい戦士でもあり、水の支配者と考えられているという。
また、前作「Sankofa」ではミウトン・ナシメントに捧げられた「Nascimento」という曲が収録されていたが、本作に収録された「Viva Nana」は、同郷の打楽器奏者である故ナナ・ヴァスコンセロスに捧げられている。スピリチュアルに自然と共鳴しながら独特のサウンドを作り上げていたナナ・ヴァスコンセロスの表現はアマーロにとって指針のひとつでもあったはずだ。
今回の来日公演は、新作「Y’Y」の世界を生演奏で堪能できるステージとなりそうだ。
公演詳細情報
AMARO FREITAS Y’Y アマーロ・フレイタス Y’Y
2024年10月25日(fri),10月26日(sat),10月27日(sun).
10月25日(fri)
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
10月26日(sat),10月27日(sun)
[1st]Open3:30pm Start4:30pm [2nd]Open6:30pm Start7:30pm
MEMBER
Amaro Freitas(p) アマーロ・フレイタス(ピアノ)
Sidiel Vieira(b) シヂエウ・ヴィエイラ(ベース)
Rodrigo Braz(ds) ホドリゴ・ブラス(ドラムス)
詳細はブルーノート東京の公演HP(https://www.bluenote.co.jp/jp/news/features/14229/)を参照。
(文/麻生雅人)