「アイム・スティル・ヒア」のアカデミー賞ノミネートで、雑貨店でレプリカのオスカー像の販売数が急増
2025年 02月 25日
国内でよく知られる商業地域にある装飾品や衣装を扱うショップで、レプリカのオスカー像が販売されているのは今に始まったことではない。しかし、カーニバルの会期が近づくにつれ、サンパウロ市の3月25日通り界隈に立ち並ぶ店では、レプリカのオスカー像の売り上げがどんどん増加している。ヴァウテル・サリス(ウォルター・サレス)監督作品「アイム・スティル・ヒア」がアカデミー賞3部門にノミネートされているのが、その理由だ。
「オスカー像は売上トップです。私たちは企業などに販売するために長年、レプリカ増を扱ってきました。しかし今年は、フェルナンダ・トーヘス(フェルナンダ・トーレス)効果で爆発的な人気です。通りには、彼女にオマージュを捧げた、“人生はとても価値あるもの”(※フェルナンダのコメントにちなんでいる)と呼ばれる一角も作られました」と、雑貨店「フェスタス・イ・ファンタジーアス」のオーナー、ピエッヒ・スフェイールさんは語る。
ピエッヒ氏によると、レプリカ像の売上は今年初めに約200%増加していたという。
「かつては今ほど売れるものではなかったのですけどね。みなさん、(オスカー受賞を)応援するため、そしてカーニバルを楽しむために買っているのです」と同氏は強調した。
ピエッヒさんの店ではレプリカのオスカー像は24レアル(約630円)で売られている。
「これは誰もが買うことのできる適正な価格です」と彼は語った。
カーニバルで盛り上がるためにレプリカを購入した客の一人である銀行員のペドロ・フレジアーノさん(26歳)は 「私と私の友人は、ファッチママとスエリ(フェルナンダ・トーヘスとアンドレア・ベルトランがテレノヴェラ『タパス&ベイジョス』で演じた役)を真似て、カップルで衣装を作る予定です。カーニバルの衣装を完成させるために3月25日通りに来ました。具体的にはオスカーに関するもので、私たちに足りなかったのは
この小像だけだったのです」と取材に答えた。
「私たちは、カーニバルの日曜日にファッチマとスエリに扮しようと考えたんです。カーニバルはバカ騒ぎ、お祭りですからね。そして私たちは(この衣装にする)アイデアでメッチャ意気込んでいます」(ペドロ・フレジアーノさん)
しかしペドロさんは、カーニバル期間中の3月2日に行われるアカデミー賞授賞式を見守ることができるかどうか、まだ分からないという。フェルナンダ・トーヘスが、ブラジルの弁護士で活動家でもあるエウニッシ・パイーヴァを演じる映画「アイム・スティル・ヒア」は、最優秀作品賞、主演女優賞、国際長編映画賞の部門で競われている。
「(オスカー授賞式の)時間はカーニバルの土曜と日曜なので、ちょっとドタバタしていると思います。でも私はスマホで最新情報をチェックし続けるつもりです。私はリオデジャネイロに行く予定なので、(ブラジルが何らかの賞を受賞した場合は)そこでパーティーを開くと約束しています」と、彼は付け加えた。
<売り上げの伸び>
カーニバルは、3月25日通りの売り上げをアップさせる、主な祝祭日の一つだ。これは、雑貨や衣装を販売するピエッヒ・スフェイールさんの店にはズバリ当てはまる傾向だ。
「カーニバル時期はいつも売り上げが最高潮です。私たちにとって一年で最高の時期がカーニバルです。今年はとても調子がよく、アツいです。神さまのおかけです。今年のカーニバルは2月末から3月初めにかけて行われるため、みなさんは余裕をもって支出することができます」(ピエッヒ・スフェイールさん)
同氏は、今年はカーニバルにちなんだ売り上げが、昨年に比べ16~20%増になると見込んでいる。
「この状況がより長く続くことを願っています。そうすれば、今年の残りを乗り切るのに十分な蓄えができますからね」(ピエッヒ・スフェイールさん)
ポルト・ジェラウ坂にある別の店では、店長のヴィウマ・ドス・サントス・ジ・ケイロスさん(63歳)が、この辺りでも売り上げは好調だと語った。
「私たちは、この数週間でさらに増加すると期待しています」(ヴィウマ・ドス・サントス・ジ・ケイロスさん)
同店長によると、この店でもオスカー像のレプリカを販売しているという。
「大勢の方が(フェルナンダ・トーヘスの)顔がプリントされたマスクを探しているのですが、現在、在庫がありません」と彼は語った。
先週火曜日の午後(2月18日)、学校の管理部門責任者であるジャケリーニ・ペレイラさん(33歳)は、カーニバル用のアクセサリーを購入するため同店にいた。
「学校のカーニバルのための飾りを買っているところです。私たちはなんろか出費を少なくしようと試みています」と、ジャケリーニさんは笑いながら話した。
「フラフープやハワイアンレイなどを買う予定です。値段が結構高めのもありますが、掘り出し物を見つけます」(ジャケリーニさん)
学校の財務部門で働くナージア・クリスチーナ・ドス・サントス・サンターナさん(46歳)は、3月25日通りでのジャケリーヌさんの買い物に同行した。
「カーニバルは家族に根差した普遍的なお祭りです。だから私たち大好きなんです。私は見ている方が好きですが、小規模なブロコ(※路上カーニバルで繰り出されるグループ)に興味があります。それから、ヘアバンドとハワイアンレイを(衣装に)使いますが、手の凝んだものでなくていいんです。今年はまだ何も買っていませんが、目下、下調べ中です」と彼女は語った。
<露天商>
店舗を持つ商人たちは昨年に比べ好調な売り上げを喜んでいるが、3月25日通りにならぶ露店商の間では状況は大きく異なっている。クリスマス以来、彼らの売り上げは大幅に落ち込んでおり、これらの大型ホリデーシーズンでさえ売り上げ増に役立っていないと不満を漏らしている。
昨日の午後、記者が同地域で働く何人かの露天商の話を聞いたところ、匿名を希望する彼らの中の1人で、3月25日通りで、この約7年間、子ども用の衣装や犬用のアクセサリーを売る露店を開いている男性が答えた。
「売上はかなり悪く、昨年から大幅に落ち込んでいます。 12月だけ少し様子が違っていましたが、決して良くありませんでした。これは、政府とインターネット販売の責任だと私は確信しています。人々は街に出かけるよりもオンラインでの買い物を好むようになりました」と彼は語った。
1年半、3月25日通りに露店を出している別の女性商人も、今年の売り上げに不満を漏らした。衣装も販売している彼女は「今年のカーニバルシーズンは最低です」と語った。
「全然売れません。これはインフレのせいだと思います。去年の方がまだよかったです。私が一番たくさん販売しているのは大人用の衣装で、価格はおよそ40レアル(約1,040円)か60レアル(約1,580円)です。しかし、それでも難しいのです。支払わなければならない請求書があるのに、お金が入ってこないので、なんとかこの数日間で状況が改善することを願っています。オンライン販売も打撃を受けているかどうかは、私には分かりません。インフレとオンライン販売のダブルパンチです。生き残るのは本当に難しいです。ここ(3月)25日通りには、以前ほど人がいなくあんりました」と彼は述べた。
(記事提供/アジェンシア・ブラジル、構成/麻生雅人)