気候変動で1000年以上続くブラジルの先住民の陶器文化に危機

2025年 09月 8日

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写真は2023年、ブラジリアで開催された、社会人口自然研究所(ISPN)が主催したアマゾンの環境問題に関するイベントに参加するワウラ族の女性。自然と共に生活する先住民族にとって気候変動は深刻な問題を引き起こしている(写真/Antonio Cruz/Agência Brasil)

先住民族ワウラ(またはワウジャ)族の伝承によると、遥か昔、あるとき、ひとつの巨大な「カヌーの大蛇」が現われたという。カマル・ハイ(Kamalu-hái)と呼ばれるこの存在は、背に陶器の工芸品を載せており、ワウラ族はこの蛇のカヌーから、陶芸という祖先の技術を学んだと伝えられている。

カヌーの大蛇はワウラ族のもとを去る前に彼らに「排泄物」を残した。それは川岸に堆積された粘土の山となり、ワウラの人々が陶器を作るための材料となった。こうして、ワウラ族の陶芸は始まり、この技術は彼らの文化的アイデンティティの一部となった。

部族に伝わるこの陶器は、世代を超えて受け継がれてきた祖先の遺産であり、すべて手作業で作られる。小さな壺から大きな鍋まで形は様々で、料理やものの保存のために使われるだけでなく、儀式や装飾品としても用いられる。

陶器は手で成形された後、太陽の下で干され、何十回も削られて、理想的な厚さに仕上げられる。その後、やすりがけと磨きが施され、屋外で焼かれる準備が整う。そして最後に、自然の顔料を使って幾何学模様が描かれることで、ワウラ陶器の最も象徴的な特徴が完成する。

マットグロッソ州のシングー国立公園内に居住するワウラ族は、この陶器を作るために、川床から粘土を採取し、それを「カウシ」と呼ばれる淡水性のスポンジ状またはサンゴ状の物質と混ぜ合わせる。カウシは植物の幹や根に形成され、川の底から採取される。これは粘土に粘り気を与え、焼成時のひび割れを防ぐために不可欠な素材だという。

「まず、川の中や川の近くで粘土を採ります。粘土を採るのは男性の仕事で、彼らが潜って採取します」と、シングー国立公園のピユレウェネ居住区に住むワウラ族の指導者であり、陶芸家、教師でもあるヤクウィプ・ワウラ氏は語る。

「粘土とカウシの両方を採取します。粘土だけでは形になりません。粘土だけを使うと、全部ひび割れてしまいます。だから、ひび割れを防ぐためにカウシを使うのです。カウシは川の湿地や川岸にあります。川が増水している間にカウシは繁殖します。だいたい4〜5か月間、芽を出して成長し、そして自然に死んでいきます」と、陶芸家は説明した。

ワウラ族の陶芸技術は、主に女性たちによって1,000年以上にわたって保存・継承されてきた。

しかし現在、この知識が危機に瀕している。長引く干ばつと、ますます短く不規則になっている増水期の影響で、陶器の製作に不可欠な素材であるカウシの入手が著しく困難になっているという。

さらに、粘土の採取、特別な木材(ジャトバ)による焼成、伝統的な幾何学模様の絵付けといった手工芸的な工程も、環境の変化によって影響を受けている。これらの材料が手に入らなくなることで、陶器の生産だけでなく、女性たちの経済的自立や、次世代への文化的継承も危機にさらされている。

「2020年以降、気候変動がカウシの生産に影響を与えていることに気づき始めました。以前は川が5か月間増水していたのに、今では3か月で水位が下がってしまい、カウシが繁殖するのに十分な時間がありません。もう育たなくなってしまったのです」と、ヤクウィプ・ワウラ氏はアジェンシア・ブラジルのインタビューに語った。

こうした困難によって手作りの小鍋の製作が中断されたと彼女は語った。さらに、カウシを他の場所で探す必要が生じたため、作業のコストも上昇してしまったという。

「以前いつもカウシを採っていた場所で、ようやく少しずつ回復し始めています。でも、そこにあるカウシはとても小さくて、切ったり焼いたり、粘土と混ぜたりするには十分ではありません」と彼女は付け加えた。

先週、ワウラ族の陶芸家たちはサンパウロを訪れ、いくつかの交流会やワークショップ、対話の場に参加しました。そしてこれらの機会を通じて気候変動への警鐘を鳴らしました。気候変動は洪水や干ばつといった極端な現象を激化させるだけでなく、さまざまな民族のアイデンティティーや伝統にも影響を及ぼしている。

「これは本当に深刻な問題です。私たちはシングー周辺の森林伐採の進行をとても心配しています。まさかそれが小鍋(ワウラ陶器)の生産にまで影響するとは思いませんでした。知識が時とともに失われることは常に心配していましたが、気候変動によって私たち自身が直接影響を受ける時が来るとは思ってもみませんでした。ワウラ族は自然が与えてくれるもので生きています。でも今、他者が自然に与えた害の代償を私たちが払っているのです」とヤクウィプ氏は警告しました。「残念ながら、多くの方々は自然環境を守っていません。自然をただ、搾取しているだけです」と彼女は強調した。

カウシの不足が小鍋の生産に影響を与えることで、この陶器を販売して生計を立てている先住民のアイデンティティ^や収入にも影響が及んでいる。

「私たちは文化的にも、収入面でも脅かされています」と先住民の指導者は強調した。

「私たちが作るすべての陶器は、身の回りの動物や鳥、魚などの素材に関係しています。それだけでなく、陶器は私たちの物語の断片であり、記憶でもあります。ひとつひとつの作品を通して、私たちは過去や文化を語っているのです。描く模様の線一本一本が、私たちを過去・現在・未来へとつなげてくれるのです」

サンパウロ市の旧市街区にある社会環境研究所「旧市街区にある森の広場」で行われたアジェンシア・ブラジルのインタビューで、ヤクウィプ氏は、陶器の生産だけでなく、気候変動が先住民の食料生産にも影響を及ぼしていると語った。

「2023年には、マンジョッカを大規模に植えることができませんでした。3回植え直しましたが、すべて小さくしか育ちませんでした。トウモロコシも植えられず、種はすべて失いました。バナナも植えることができませんでした」

(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)