水牛で有名なマラジョー島ソウリ市の農場主、「水牛大学」設立を計画
2025年 10月 13日
携帯電話、テレビゲーム、電子玩具はここでは主役ではない。ブラジル北部パラー州のマラジョー島ソウリ市にある冠水地帯のひとつでは、子どもたちが水牛と一緒に泳ぎながら遊んでいる。

彼らには動物を調教するという“ミッション”があるが、これは、地域特有の暑さをしのぐため、子どもたちが水に飛び込んだり潜ったりしている遊びの延長となっている。
水牛はマラジョーの象徴であり、同地域にはブラジルで最大の水牛群がある。推定頭数は65万頭から80万頭にのぼり、その大半はソウリ、シャヴィス、カショエイラ・ド・アラリの各市に集中している。

町の路上では彫像にもなっている水牛は、交通手段や警察官の移動、そして有名なチーズ入りフィレ・ミニョンなどの料理にも活用されている。
この動物の重要性を認識するミロンガ農場・特産品販売所のオーナー一家は「水牛大学」の設立を計画している。正式名称は「水牛文化研究センター」。まだ開設時期は未定だが、水牛の遺伝学、飼育管理、そして哺乳類としての総合的な活用に関する研究に特化した、国内初の施設となる。

「私たちには、水牛についてもっと深く研究する人材が必要なのです。遺伝的改良、乳・皮革・肉への付加価値の創出、飼育管理、衛生面など、幅広いテーマがあります。これらを研究して発信していく必要があります。このセンターは獣医師や農学者、畜産技術者、生物学者だけの特権的な場ではありません。食品技術者、観光分野、医療分野など、他の領域も巻き込むべきです」と、農場主カルロス・アウグスト・ゴヴェーア氏(通称トンガ)は語る。。
このプロジェクトがまだ具体化していない現時点では、彼の家族は「ミロンガでの体験」という教育的観光プログラムを運営している。2017年に始まったこの取り組みでは、訪問者が農場の日常生活、水牛乳を使った手作りチーズの製造工程、そしてアグロエコロジー(環境と調和した農業)の実践を体験することができる。

「私たちは以前、チーズやお菓子をたくさん生産していて、事業拡大の可能性もありました。でも、農場の面積は90ヘクタールと限られていて、大規模生産を目指すつもりはなかったんです。そんなときに観光事業をはじめて、生産拡大の試みはやめました。今では、観光が農場の収益の3分の2を占めています。9月には、過去最多となる400人の来訪者がありました」と語るのは、トンガ氏の娘であり、マラジョー乳製品生産者協会(APLQM)のガブリエラ・ゴヴェーア会長。
マラジョー島のチーズは、何世代にもわたって受け継がれてきた技術によって生乳から作られる伝統的な製品であり、起源は数世紀前にさかのぼる。こうした手作りチーズの合法化に向けた取り組みは長い道のりであり、ミロンガ家はその過程にも積極的に関与し、手作りチーズ製造に特化した衛生法の整備に貢献した。
2013年には、ミロンガのチーズ工房が初めて公式な検査認可を取得し、数年後には製品が国立産業財産権院(INPI)による地理的表示(IG)を獲得した。このプロセスには、ブラジル中小・零細企業支援機関(SEBRAE)も参画して、診断、合法化、そして生産者の組織化に協力した。

<環境への懸念>
マラジョー島における水牛の文化的・経済的な歴史的関係は深いものの、水牛由来製品の生産と消費には環境面での課題が伴っている。2025年11月にベレン市で開催される第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)では、温室効果ガスの排出削減が主要テーマとなっている。
2023年に発表された温室効果ガス排出・吸収量推計システム(SEEG)の最新調査によると、畜産業はブラジル国内で2番目に多く温室効果ガスを排出している分野であり、1位は土地利用の変化による排出だった。
水牛を含むウシ科動物は、同年に二酸化炭素換算で4億500万トン(MTCO₂e)を排出したとされる。これは、動物の消化過程で発生するメタンガスの放出によるものであり、将来的に設立が検討されている水牛文化研究センターが取り組むべき重要課題のひとつとなる可能性がある。
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)