COP30閉幕。成果とレガシーとは
2025年 11月 24日

第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)は11月22日(土)、ブラジル議長団が適応策の議題における進展、国際的な新たな気候実施ツール、そして化石燃料依存からの脱却に向けた議論の道筋を示して閉幕した。
交渉終了後の記者会見で、議長を務めたアンドレ・コヘア・ド・ラーゴ大使、アナ・トニ環境省事務局長、リリアン・シャーガス首席交渉官、マリーナ・シウヴァ環境・気候変動相が成果を詳しく説明した。
コヘア・ド・ラーゴ大使は、会議が厳しい幾多もの交渉圧力の下で始まり、各分科会の共同議長に幅広い裁量の自律性が与えられたことを振り返った。適応策パッケージはCOPの中でも最も複雑な議題の一つであり、当初は100を超える指標から始まったが、最終的に59に整理されたと述べた。
「合意が得られたのはそのうちわずか10%に過ぎなかった。指標を再編成し、今後も議論を続ける。次回は6月、ドイツ・ボンでの気候会議で行う」(アンドレ・コヘア・ド・ラーゴ議長)
エネルギー転換の議論について、コヘア・ド・ラーゴ大使は「化石燃料を廃止するための道筋には二つの進め方がある」と述べ、これがドバイ(COP28)以来敏感なテーマであることを指摘した。
「外交官として私は現実的で保守的な落としどころを見込んでいた。しかしルーラ大統領の演説がこのテーマを中心に据え、構造的な議題とする余地を開いた」(アンドレ・コヘア・ド・ラーゴ議長)
大使によると、合意には至らなかったものの、ブラジル議長団は今後もこのテーマを議論し、各国が化石燃料から距離を置くための道筋を示す研究や行動を集約していく方針だという。
コンセンサス
COP30は「これほど困難なテーマにおいても合意を得ることができた」と、アナ・トニ環境省事務局長は強調した。各国はパリ協定に関わる実施議題から一国も離脱することなく、具体的な実行アジェンダへと前進した。
経済学者でもあるトニは、商業燃料、カーボン、グリーン産業に関する120件の加速計画の提示と、29件の文書承認を成果として挙げた。
「地政学的に厳しい時期に、小さな一歩も大きな一歩も踏み出しました。望んだすべての歩みを実現できたわけではありませんが、確かな歩みを進めました」(アナ・トニ環境省事務局長)
トニ事務局長によると、最大の成果のひとつは適応策を「これまでのどのCOPよりも高い次元に引き上げた」ことであり、2035年までに国際的な資金を3倍に拡充する取り組みが組み込まれたという。
さらに彼女は、気候アジェンダにおいて初めて、アフリカ系の“女性や少女”が条項(「ジェンダー行動計画(2026–2034)」)に記されたこと、そしてさまざまな海洋アジェンダの強化を成果として強調した。
リリアン・シャーガス首席交渉官は、脆弱な国々が力を合わせることに成功したと述べた。彼女によると、承認された一連の指標は進捗を測り、政策を方向づける「羅針盤」として機能するという。
「これが各国の前進の度合いを示し、次にどう進むべきかを定めることになる」(リリアン・シャーガス首席交渉官)
リリアン・シャーガス首席交渉官はさらに、グローバル気候行動アクセラレーター(気候行動を加速させる国際的な枠組み)の強化を発表した。これは、正式な交渉の枠外で具体的な措置を推進するための常設の場として機能する。
もう一つの前進は、貿易と気候の関係を扱う国際フォーラムの創設である。
「これは、貿易がいかに気候行動を生み出すことができるかを探る場であり、ブラジルにとって大きな関心事だ」(リリアン・シャーガス首席交渉官)
また主席交渉官は、重要な政策上の革新として、アフリカ系住民グループを脆弱層として認めたこと、炭素吸収源を守る存在としての先住民の土地の役割を強化したこと、そして地域コミュニティ代表をプロセスに組み込んだことを挙げた。これらは公式交渉の枠外での働きかけの成果だという。
化石燃料
マリーナ・シウヴァ環境・気候変動相は、ルーラ大統領の公開発言が緩和策の議題に力を与え、適応策との統合を可能にしたと強調した。
「無限に適応することはできません。しかし、緩和だけを考えて脆弱な人々の必要性を無視することもできないのです。彼らには資金的な支援、技術的な支援、そして何よりも連帯が必要です。すでに深刻な苦難と被害に直面している人々に対応するために」(マリーナ・シウヴァ環境・気候変動相)
同相は、先進国はすでに化石燃料からの脱却に向けた道筋を持っているが、貧困国や途上国、石油依存国にはそれがないと指摘。そのため「これらの国々が、30年以上も依存からの脱却方法について回答を待ち続けてきた後に、自らの基盤を築けるよう条件を整えることが不可欠」と述べた。
さらに、工程は森林破壊の終結への移行も含むとし、「ブラジルだけがこの目標を持ち、道筋を描いているが、すべての国が努力の基盤を持つことを望んでいる」と語った。
また大臣は、 TFF(トランジション・ファイナンス・ファシリティ) にも言及。これは従来の「寄付」の発想を置き換え、森林や生物多様性の保護に投じられる公的資金を梃子として、民間投資を呼び込む仕組みだと説明した。
COP30の「レガシー」について記者団から問われたマリーナ・シウヴァ大臣は、会議が、気候変動に対する公共の理解を広げたことと、孤立・物流の困難、食料・水・医薬品へのアクセス不足に苦しむアマゾンの人々の知識と経験が議論に寄与したことを挙げた。
「アマゾンはレガシーを受け取るだけではなく、レガシーを提供するのです」(マリーナ・シウヴァ環境・気候変動相)
「私たちが示したのは(アマゾンの)豊かさでです。そしてその豊かさとは、私たちの風景、私たちの音の美しさ、映像の美しさ、絵画的な美しさです。アマゾンは生命と美の爆発であり、他の方向に目を向けることさえ忘れさせるほどの存在なのです」(マリーナ・シウヴァ環境・気候変動相)
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)




