アサイー、ブラジルの「国果」に指定される
2026年 02月 3日

ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)東部アマゾン支部のアナリストで知的財産分野の専門家でもあるシェイラ・コヘア・ジ・メロ氏は、今回の法制化の意義は、何よりも製品価値の向上にあると指摘する。
「アサイーを国産果実として法的に認めることには、象徴的な意味と文化的な肯定という価値があります。アサイーを本質的にブラジル固有の産物として位置づけ、アマゾンにおける重要性を強調する狙いがあるのです」(シェイラ氏)
ただし同氏はこの新法は、国際的な法制度の枠組みの中で、保護手段として直接機能するものではない点を指摘している。

ブラジルにはすでに、遺伝資源およびそれに関連する伝統知識へのアクセスを規制する2015年の法律第13.123号が存在する。さらにブラジルは、利益配分のルールを定めた、2010年に採択された生物多様性条約(CBD)にもとづく国際協定「遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する名古屋議定書(ABS議定書)」の締約国でもある。
「一般に“バイオパイラシア(生物資源の盗用)”というと、何者かが『森の中で植物を盗む』といったイメージで語られがちですが、これは単純化された見方であり、多くの場合、誤解を含んでいます。現在のリスクはもっと巧妙で、原産国やその住民に正当な利益が還元されないまま商業利用が進むという形で生じているのです」(シェイラ氏)

ブラジルはアサイー果肉の主要輸出国の一つであり、この生産チェーンは2024年に約77億レアルを動かした。シェイラ氏によると、最大のリスクはサプライチェーン全体で価値が失われる点にあるという。
「原料の出自が正しく認識されず、ブラジルやこの遺伝資源を保有する地域社会に、金銭的・非金銭的な利益が還元されないことこそがリスクなのです」(シェイラ氏)

ブラジル地理統計院(IBGE)のデータによると、ブラジルは2024年に約174万トンのアサイーを生産した。このうちパラー州が約161万トンと全体の90%以上を占めており、同州が国内生産の圧倒的な中心地であることが裏付けられている。
シェイラ氏によると、ブラジルの生物多様性を実質的に保護するためには法的な認定だけでは不十分だという。
同氏は、地域の生産チェーンを強化し、アマゾンでの研究開発への投資を拡大し、遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する規則を厳格に適用する必要性を訴える。
その大きな目的は、「生物資源の富の流出」を防ぐことにある。これは、ブラジルが低付加価値の原料を輸出し、高価格の加工品を輸入するという不均衡な状況を指す。
アサイーに加え、バクリ、ブリチ、プラカシなど、他のアマゾン産果実も、すでに化粧品や機能性食品市場から高い関心を集めている。
シェイラ氏は、こうした生産チェーンが拡大する状況に対し、ブラジル国内に生物多様性が生み出す価値をできる限り留めるための監視、技術革新、そして適切な公共政策の必要性を指摘している。
(文/麻生雅人)



