日系移民1世の心の内を伝える映画「ニホンジン」

2026年 08月 6日

nihonjin

映画「ニホンジン」(監督:セリア・カトゥンダ)は8月7日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、恵比寿ガーデンシネマ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開(写真提供:2ミーターテインメント)

公式に移民として旅立つ日本人を載せて神戸港を出発した笠戸丸が、ブラジルのサントス港に到着したのが1908年6月18日。2028年にはブラジルへの日本人移民120周年を迎える。

日本に限らず世界のさまざまな国や地域から移民を受け入れてきたブラジルでは、実に多様な背景、価値観を持つ人々が共存している。

この映画の主人公であるノボル少年は、日系ブラジル人3世だ。ある日、ノボルが通う学校で、自分のルーツを調べて発表するという課題が生徒たちに与えられる。

生まれも育ちもブラジルで、すっかりブラジル人として生活しているノボルは、ポルトガル語のネイティブスピーカーで、日本語はあまりわからない。今も日本語での生活に心の拠り所を持つ1世である祖父と、それまであまり積極的に会話をしてこなかったノボルは、課題のため、祖父にファミリーストーリーを語るように願い出る。

“じっちゃん”の最初の家族の話、自分には一度も会ったことのない叔父がいたこと、その叔父が消息を絶っている理由…。祖父がぽつり、ぽつりと語り始めた物語は、ノボルにとってはじめて耳にすることばかりだった。

19世紀前半ごろから大きく発展したブラジル南東部のコーヒー産業は、奴隷制度が廃止された1888年頃には国を支える一大産業となっていた。労働力を補うために移民受け入れ政策をすすめたブラジルに、イタリア、ドイツ、そして日本から大勢の移民が渡ることになる。しかし入植が行われた順や人種などで、移民たちが置かれた立場は大きく異なった。

さらには奴隷制度の廃止以前、植民者として到来したポルトガル人の子孫、そのポルトガル人が奴隷としてアフリカ大陸から連行してきたアフリカの人々の子孫は、19世紀以降の大量移民時代の移民とも全く背景が異なる。

映画「ニホンジン」は、ノボルが祖父から聞く日本人移民の物語が中心となった話ではあるが、同じ課題を与えられ、はじめて自身のルーツに向き合うことになるノボルの同級生たちのエピソードを交えることで、日系移民と、その他の国から来た移民の立場や環境の違いもさりげなく織り込んでいる。

さて、一言でこの映画の魅力を語るならば、集団ではなく、個人の目線で語ることで、これまで日系移民の物語の中で、「なぜ日本人移民は、日本人同士が助け合って暮らす一方で、他の民族との間には壁を設けていたのか?」というような疑問に、人間味のあるひとつの答えが投じられるている点だ。

また、“じっちゃん”が語るファミリーストーリーは、自分が属するブラジル社会(学校など)と、日本人の心を重んじる家族の間で板挟みになる、ブラジル生まれの2世ならではのアイデンティティもリアルに感じさせる。

本来は個人の問題であるアイデンティティについて、登場人物が個の物語を語ることで、“ざっくりとした日本人移民のストーリー”ではない、胸を打つ物語を、この映画は響かせている。

公式HP:https://nihonjin.2-meter.net/

(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)