経済悪化と自然災害で生活環境が厳しくなるブラジル
2015年 05月 15日ブラジル経済の悪化により、日々の生活環境が大きく変わりつつある。
ブラジル経済が著しい成長を見せた13年頃までの10年間は、サンパウロなどの大都市圏のレストランやバーは、週初の平日でも深夜2時、3時までにぎわっていた。
しかし、14年のワールドカップが終わったぐらいから徐々に客足が鈍り、注文が減り、最近は夜11時ぐらいで閉める店も多くなってきた。
そうなると、街から明かりが消えるのも早くなり、暗がりが増えることになる。それは、ブラジルのような国ではこれまで安全とされてきたところが危険なエリアになることを意味する。
それでなくても経済悪化で失業者も増え、物価が上昇したことから生活に困った者たちが犯罪に走ることも多くなっている。これまでは考えられない場所でも事件が起こっており、治安が悪化しつつある。
15年の1月から2月にかけて、サンパウロの中心地、日本でいえば銀座や丸の内にあたるパウリスタ大通りに交差しているアラメダ・ジョアキン・エウジェニオ・デ・リマ通りで、2-3週間の間に続けざまに日本人2人が拳銃などを使った強盗に遭っている。
しかも1件は午後2時という白昼堂々の犯行であり、場所も日中は人通りも多く、死角もないため、これまでは夜でも安全なエリアと思われていた。
また、4月21日には、同じくサンパウロの中心であるパライゾ区にある日本料理店「シゲ」に、夕食客で賑わっている夜8時頃、武装した3人の強盗が押し入り、レジの金銭と約30人いたお客からカバンや携帯電話を奪い取って、外で待機していた仲間の車で逃亡した。その後、盗まれた携帯のGPS(全地球測位システム)を利用して軍警察が追跡し、犯人を見つけ、銃撃戦の末、犯人の1人が死亡、2人を逮捕、1人は逃したとのことである。
このような集団で強盗をはたらく「集団ヒット&アウェイ方式」の犯罪が非常に増えている。
私も日常的に使っているリオデジャネイロの地下鉄でも、3月には2週間に2度も車両が集団強盗に遭った。
都市部は人口が多いため、犯罪も目立つわけだが、実はブラジルでの犯罪発生率は一見のどかにみえる地方のほうが高い。
14年ワールドカップで日本代表が試合をして、日本からも7000人近くが押し掛けた北部の都市ナタル(ナタウ)などは、人口当たりの殺人事件発生率が最も高い都市の1つである。結局、都市でも田舎でも安全な場所はないということだ。
さらに、生活環境を脅かしているのが水不足とデング熱である。水不足は最悪の時期は過ぎたが、今ピークなのは、昨年日本でも流行したデング熱である。
ブラジルでは、そもそも毎年発生するが、今年はサンパウロで患者が急増しており、1月4日から4月12日までの間に確認された患者数は前年同期比191.3%の2万764人で、人口10万人当たり300人超の流行状態の区が13もあるという。ここ2-3週間で1万人近くも増えた。死亡者は5人とのことで昨年の14人よりも致死率は下がっている。
4月20日にはブラジル南部のサンタ・カタリーナ州において最大風速160キロという竜巻が発生し、2人が死亡、120人が負傷、損傷家屋は2600軒を数えた。今のブラジルでは人災・天災が絶えない。
(文/輿石信男/クォンタム、記事提供/モーニングスター、写真/Luiz Costa/SMCS)
写真はパラナ州クリチーバ市。2015年2月に設置された街頭監視カメラ