ジカ熱、デング熱などの感染症検査薬キット、ブラジルで導入へ
2016年 02月 27日有効な予防法がまだ確立されていないジカ熱だが、感染範囲拡大抑制には感染者の早期発見がその第一歩となる。
ブラジルでは近年、ジカ熱以外にデング熱、チクングニア熱の爆発的感染も懸念されている。それぞれの感染症を特定する検査に時間がかかることが感染経路の特定などを難しくしているとも言われている。
そんな中、グローボ系ニュースサイト「G1」が2月26日、画期的な検査方法が確立されつつあることを伝えている。
「G1」によると、この新しい検査方法により、上記3大感染症の検査が一度の検査で行えるようになるという。ブラジル保健相のマルセロ・カストロ氏によれば、3月には新検査方法が導入されるとのことだ。
「採血のあと2-3時間で3種類の感染症の検査結果が一度に判明することになります」(マルセロ・カストロ保健相)
現在ブラジルでは、3大感染症の病名特定のためには、感染症ごとの検査を受ける必要がある。つまり、患者は最大3種類の検査を受けなければ病名が分からない。その間、適切な対処ができないため、検査結果が出るまでに症状が悪化したり、感染が拡大するリスクがある。
新しい検査方法はオズヴァウド・クルース財団(Fiocruz)リオ・デ・ジャネイロ支部と同財団パラナ支部で共同開発された。
「Fiocruzは2月末に保健省に納品できると確約しています」(マルセロ・カストロ保健相)
この検査方法の開発はブラジル保健省傘下のラボで行われたため、同省にとって運用の自由度が高いものとなる。また、検査の一本化に伴い、従来の3種類の検査で使っていた外国の検査薬から国産検査薬に切り替えることが可能となり、ブラジル保健省にとっては大規模なコスト削減が実現できることとなる。
とはいえこの新検査薬キット「キッチナッチ(Kit NAT)」、病原体が人体に入った後、感染拡大フェーズにある数日間にしか反応しないため、患者の受診時期がずれると診断できないということもあり得る。
一方で保健省は貧困層向け政策プログラム「ボウサ・ファミリア」の一環として妊婦向け防虫剤の配布を継続すると発表した。
「現段階では3億レアル(約90億円)相当の防虫剤が確保できています」(マルセロ・カストロ保健相)
(文/余田庸子、写真/Cristina Índio/Agência Brasil)
写真は2016年1月16日、リオデジャネイロ。検査薬キット「キッチナッチ」を公表するマルセロ・カストロ保健相(右)