2016年カンヌ映画祭でブラジル映画がドキュメンタリー賞受賞!
2016年 05月 22日グローボ系ニュースサイト「G1」他ブラジル現地メディアが報じたところによると、5月21日、ブラジル映画「シネマ・ノーヴォ」がカンヌ映画祭ドキュメンタリー部門賞ロエイユ・ドール(L’Oeil D’Or)を受賞したという。
この賞は昨年立ち上げられた賞で、カンヌ映画祭によってその年の優秀なドキュメンタリー映画に贈られるというもの。
受賞作「シネマ・ノーヴォ」は、1960年代のブラジル映画界のムーブメントを取り上げたドキュメンタリー。受賞作のタイトルともなったムーブメント、シネマ・ノーヴォ(ブラジル版“ヌーヴェル・ヴァーグ”)の中心的人物で、映画監督だったグラウベール・ホーシャの息子エリッキ・ホーシャが今回の受賞作を制作した。
シネマ・ノーヴォ運動は1960~1970年代に起こった、映画創作活動に革命的変動をもたらした映画人たちの活動。映画の中にもっと人々の活力、リアリティを映し出し、映画を人に近づけることを掲げた活動を展開した。
エリッキ・ホーシャは60~70年代のラテンアメリカにおける芸術革命、映画界のムーブメントを詩的な表現で描いた作品「シネマ・ノーヴォ」をカンヌに送り出した。
90分間に、当時のシネマ・ノーヴォ運動に参画した映画監督らの作品の様々なシーンを織り込み、それぞれに対する関係者の証言を組み込んでいる。
関係者にはネルソン・ペレイラ・ドス・サントス、レオン・イルスマン、ジョアキン・ペドロ・ヂ・アンドラーヂ、フイ・ゲーハ、ワルテル・リマ・ジュニオール、パウロ・セーザル・サラセーニ、グラウベール・ホーシャなど著名人が名を連ねる。
本受賞作はエリッキの7作目で、38歳の時に制作したものだ。エリッキは主にドキュメンタリー作品を制作している。
「なぜ自分は映画を撮るのか、と自分に問う中で、自分のルーツ、自分の父親の映画を振り返る必要があると感じました。彼の制作の歴史、当時の政治状況、彼の政治的意見などに目を向けようと思いました」(エリッキ・ホーシャ)
「シネマ・ノーヴォ運動は私にとって、自分を形成してきたもの、映画を作る動機の重要な要素でした。自分の人生にとって重要な映画がいくつもこの時期に生まれています。この運動は様々な世代の人たちとの間に映画を通じた対話を起こしました。私のドキュメンタリーはこれらの対話から生まれました」(エリッキ・ホーシャ)
このドキュメンタリーはカンヌ・クラシック部門で上映され、多くの観客に当時の映画人たちの格闘を紹介した。
「シネマ・ノーヴォ運動は『集団』というものに対し新しい解釈を持っていました。運動の中では諸々の集合的プロジェクトを行っていました。人が集まると、美的な感覚だけでなく、物事のとらえ方の違いも明確になりますが、同時に共通する点もあることが分かります。これを理解することが運動の中でとても重要だったのです」(エリッキ・ホーシャ)
フランスのヌーヴェル・ヴァーグと同様に、シネマ・ノーヴォ運動に関わった映画人たちは、自らを取り囲む現実を直視し、現実に対して関与していくようなブラジルの文化的革命を予期していた。
「シネマ・ノーヴォ運動はエネルギーと情熱を介して成長していきました。今日では人生の本当の意味、創作活動をする本当の意味を考える余地がほとんどありません。このドキュメンタリーを作るということは、思想としての映画を作る情熱がどこにあるのか、自分の映画が社会のどこに政治的な意味を持たせられるのかを自分に問うことでもありました」(エリッキ・ホーシャ)
カンヌ審査員によると、映画『シネマ・ノーヴォ』の印象派的な実験的手法は、映画によって政治性と官能、詩的世界と混沌、形と物語、フィクションとドキュメンタリーを同時に表現しうることを思い起こさせるものだという。
(文/余田庸子、写真/Divulgação)
映画「シネマノーヴォ」より、カカー・ヂエギス監督作品の引用場面