ブラジルでチョコレート基準が法制化へ。下院で可決の“チョコレート法案”、上院へ送付
2026年 04月 10日

カカオ由来製品の定義、チョコレートの最低カカオ含有率、ラベル前面へのカカオ含有率表示の義務化などを再定義した法案「PL 1769/2019」は、4月1日付で上院送付のための最終版文書が作成され、同日中に上院へ送付された。
ブラジルでは現時点ではチョコレートに関する基準は、ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)による技術規格「RDC nº 264/2005」により規定されている。同法案は、この技術規格をより詳細に再定義する形となっている。
さらに、ブラジルにおいてこれまでチョコレートに関する定義は監督省庁の技術規格だったが、法案が施行されると法的拘束力を持つ法律として位置づけられることになる。法案の第4条では「本法の規定に違反した場合、違反者は、1990年9月11日付法律第8.078号(消費者保護法)第56条から第60条および第66条から第68条に定める制裁、ならびに衛生関連法令に基づく制裁を受けるものとし、これらに加えて適用され得る民事上または刑事上の制裁を妨げない」と明記されている。
法案「PL 1769/2019」の原案が提出されたのは2019年で、2025年にダニエウ・アウメイダ議員(ブラジル共産党、バイーア州)により改定案が提出され、2026年3月17日に下院で可決された。上院での審議の日程などは公表されていない。
今回の最終案では、原案にあった「ビターチョコレート/セミビター(ミドルビター)」の基準は削除されたほか、新たに「スイートチョコレート(chocolate doce)」という分類が設けられている。
<定義の厳格化>
「RDC nº 264/2005」に比べ「PL 1769/2019」では「チョコレート(Chocolate)」の定義が厳格化されている。
「チョコレート:カカオ由来製品(Theobroma cacao L.)であるカカオマス(パスタまたはリカー)、ココアパウダー、またはカカオバターを他の原材料と混合して得られる製品で、カカオ固形分を最低25%(g/100 g)含むものをいう。製品は、さまざまな種類のフィリング、コーティング、形状および食感を有していてよい」(RDC nº 264/2005)
「チョコレート:カカオマス、ココアパウダーまたはカカオバターを他の原材料と混合して得られる製品で、カカオ固形分を最低35%含み、そのうち少なくとも18%がカカオバター、14%が脱脂固形分であるものとし、さらに、許可されたその他の植物性油脂の総量は最大5%までとする」(PL 1769/2019)
「ホワイトチョコレート(Chocolate Branco)」も厳格化され、乳固形分と着色料に関する規定が追加されている。
「ホワイトチョコレート:カカオバターを他の原材料と混合して得られる製品で、カカオバター由来の固形分を最低20%(g/100 g)含むものをいう。製品は、さまざまなフィリング、コーティング、形状および食感を有していてよい」(RDC nº 264/2005)
「ホワイトチョコレート:着色料を含まない製品で、カカオバターおよびその他の原材料から構成され、カカオバターを最低20%、さらに乳固形分を14%以上含むものとする」(PL 1769/2019)
また、「RDC nº 264/2005」では、チョコレート製品の規定は「チョコレート」と「ホワイトチョコレート」のみだが、「PL 1769/2019」では「ミルクチョコレート(chocolate ao leite)」や「スイートチョコレート(chocolate doce)」も分類されている。
「ミルクチョコレート」に関しては、1970年代に国家食品規格基準審議会(CNNPA)が交付していた「Resolução CNNPA nº 12/78(決議第12号)」では「カカオマス、砂糖、そして牛乳、粉乳、エバミルクまたは練乳を用いて製造された製品」と規定されていたが現行規定「RDC nº 264/2005」には記されていない。
「ミルクチョコレート:カカオ固形分およびその他の原材料から構成される製品で、カカオ固形分を最低25%含み、そのうち乳またはその派生物に由来する乳固形分を14%以上含むものとする」(PL 1769/2019)
「スイートチョコレート:カカオ固形分およびその他の原材料から構成される製品で、カカオ固形分を最低25%含み、そのうち少なくとも18%がカカオバター、12%が脱脂固形分でなければならない。
単項:カカオ固形分には、カカオ豆の殻、薄皮、その他いかなる副産物も含めてはならない」(PL 1769/2019)
さらに法案では、「チョコレート」に基準に当てはまらない“チョコレート風”製品についても厳格に規定している。アショコラタード(ココア飲料・チョコ風味飲料)、ファンタジア・チョコレート(チョコレート風菓子。カカオバターの代わりに植物油脂が使用されることが多い)、コンポスト・チョコレート(日本でいうコンパウンドチョコレート)、チョコレート風味コーティング、ホワイトチョコレート風味コーティングなど、日本における「準チョコレート」「チョコレート菓子」に相当する製品と言えそうだ。
「アショコラタード、ファンタジア・チョコレート、コンポスト・チョコレート、チョコレート風味コーティング、またはホワイトチョコレート風味コーティング:カカオに、乳またはその他の原材料を加えて調製した製品であり、総カカオ固形分またはカカオバターを最低15%含有するもの」(PL 1769/2019)
「チョコレートボンボンまたはチョコレート入り菓子:可食性のフィリング(中身)と、チョコレートのコーティングから構成される製品」(PL 1769/2019)
<原料に関する項目>
チョコレートの原料に関しても、厳格化されたものがある一方で、項目自体も細分化された。
現行規定である「RDC nº 264/2005」でも記されている「カカオマス(カカオペースト、カカオリカー)」、「カカオバター」、「カカオパウダー」は以下のようになっている。
「カカオマス(またはカカオペースト、カカオリカー):カカオ(Theobroma cacao L.)の種子から、食品製造において安全と認められた技術的工程によって得られる製品」(RDC nº 264/2005)
「カカオマス、カカオペースト、またはカカオリカー:清浄化され、殻を除去したカカオ豆を加工して得られる製品」(PL 1769/2019)
「RDC nº 264/2005」ではカカオバターとカカオパウダーは「カカオバターおよびカカオパウダー:カカオ(Theobroma cacao L.)のカカオマス(カカオペースト、カカオリカー)から得られる製品をいう」と簡素な定義だったが、新法案では項目も個別に記されている。
「カカオバター:カカオマスから抽出される脂肪分(脂質成分)」(PL 1769/2019)
「カカオパウダー:カカオマスを圧搾して得られる固形分を粉砕して製造した製品であり、乾物基準でカカオバターを最低10%含み、かつ水分は最大9%までとする」(PL 1769/2019)
また、「カカオパウダー」から作られる「可溶化カカオ」と「チョコレートパウダー」に関しては、前者は現行規格と同じで「可溶化カカオ:カカオパウダーに、液体への溶解性を高める成分を加えて製造した製品」とされている。
後者は新たに「チョコレートパウダー:砂糖、甘味料その他の原材料にカカオパウダーを混合して製造した製品であり、総カカオ固形分を最低32%含有するもの」と規定された。
「総カカオ固形分」と「カカオニブ」の規定は新たに付け加えられた。
「総カカオ固形分:清浄化・発酵・乾燥・脱殻されたカカオ豆を加工して得られる、カカオバターと脱脂乾燥固形分の合計をいう」(PL 1769/2019)
「カカオニブ:清浄化されたカカオ豆の子葉部分」(PL 1769/2019)。(注:子葉はカカオ豆の内部を構成する主要組織で、可食部のほとんどを占める)。
現地メディア「グローボ・フラウ」(4月4日付)の報道によるとダニエウ・アウメイダ議員は、消費者により明確な情報を提示するために法案を提出したと語っている。
「極めて低いカカオ含有量にもかかわらず『本物のチョコレート』を名乗る製品は珍しくありません。さらに深刻なのは、『チョコレート風味(sabor chocolate)』と表示しながら、消費者を混乱させようとするケースもみられることです」(ダニエウ・アウメイダ議員)
例えば、現在でも高品質なチョコレートタブレット製品では、世界基準に合わせて製品パッケージの前面にカカオ含有量が明示されているが、法案ではこれを義務づけている。
「第1項 本条にいうカカオ含有率は、「カカオ分X%含有」と表示するものとし、Xは当該製品に含まれる総カカオ固形分の百分率を示す。この表示は、包装の主要表示面において、前面面積の15%以上の領域に、判読可能で適切なコントラストをもって記載し、消費者が容易に視認し理解できるようにしなければならない」(PL 1769/2019)
さらには、チョコレートに該当しない製品の表示義務も明記されている。
「第2項 本法第2条本文の第IV項、第VI項から第X項および第XIII項の定義に該当しない製品は、同条第XI項および第XII項に従った販売名称を、明瞭かつ容易に読み取れる形で表示しなければならない。また、当該製品が本法の要件を満たさないにもかかわらず、チョコレートであるかのように消費者を誤認させるおそれのある画像、表現、色彩その他の図形要素を使用してはならない」(PL 1769/2019)
「グローボ・フラウ」(3月21日付)によると、バイーア州農牧業連盟(Faeb)のギリェルミ・モウラ副会長は今回の変更を肯定的に捉えているという。
「私たちは20〜25%のカカオ含有量でチョコレートと認めていますが、それ以下は“チョコレート風味(sabor chocolate)”なのです。欧州の主要市場では30〜35%が一般的です。主要消費国に近い基準を目指すべきです。業界は配合を変え、“チョコレート風味”の商品を増やしていますが、消費者は自分が何を食べているのか理解できていません。包装の透明性を高める必要があります」(ギリェルミ・モウラ副会長)
一方、ブラジル菓子・チョコレート・ピーナッツ・キャンディ産業協会(Abicab)は新法案は業界の運営に影響を及ぼしかねないと懸念を示しているという。
「G1」(4月4日付)は、高品質チョコレートの製造者団体「Bean to Bar Brasil」のブルーノ・ラセヴィシウス会長は、Bean to Barチョコレートやプレミアムチョコレートとは市場が異なる一般的な工業製品では、現行法の最低基準ギリギリで製造されているケースが多いだけでなく、近年のカカオ価格の高騰を受け、カカオ使用量をさらに減らすために 「チョコレート」ではなく「チョコレート風味(sabor chocolate)」 の菓子が登場していると指摘する。
「消費者の間で、より低いカカオ含有量の製品が受け入れられていると感じます。多くの人は、高付加価値のチョコレートを購入できるほどの購買力を持っていないのです」(ブルーノ・ラセヴィシウス会長)
同氏によると、一部の製品ではカカオ豆の殻だけを使用し、そこに残るわずかなチョコレート風味を利用している場合もあるという。
法案「PL 1769/2019」は今後、上院での審議を経て、施行される見通しとなる。
(文/麻生雅人)




