軍事独裁政権の拷問・失踪の組織的構造を暴く新作ドキュメンタリーが公開
2026年 05月 18日

軍事独裁期に陸軍情報部の中心人物として活動したシーロ・ゲジス・エチェゴエニ大佐の個人アーカイブから見つかった未公開文書が、ブラジルにおける秘密裏の弾圧装置の実態に新たな光を当てている。独裁政権下で最も暴力が激化した時期の舞台裏を示すこれらの歴史資料は、ドキュメンタリー映画『Bandidos de Farda(制服を着た国家犯罪者たち)』の基盤となっており、作品は5月17日(日)にYouTubeの独立系ニュースメディア「ICL Notícias」チャンネルで公開される。
調査を主導したのはジャーナリストのジュリアーナ・ダウ・ピーヴァ。作品には、極秘報告書、尋問および拷問マニュアル、政治監視の記録、そして軍事政権下で組織的に行われた迫害、強制失踪、国家暴力の存在を示す文書が収められている。

公開された資料には、ブラジル人将校が国外で受講した尋問・拷問訓練に関する文書、1980年代に作成された政治スパイ活動の報告書、そしてブラジル国家が公式には把握していない被害者の記録などが含まれている。
陸軍情報センター(CIE)で1969年から1974年にかけて対情報部門の責任者を務めたシーロ・エチェゴエニ大佐の活動は、今回の調査の中心的な焦点のひとつとなっている。軍事独裁期の研究者によると、情報機関が用いた弾圧手法を体系化し、組織的に運用する仕組みを整えた中核メンバーのひとりであり、秘密裏の尋問・弾圧メカニズムの確立に関与したとされる。
歴史研究では、エチェゴエニ大佐は、リオデジャネイロ州山間部ペトローポリスに設置された軍事政権の秘密拷問施設「カーザ・ダ・モルチ(死の家)」の運営に関わった人物のひとりとして位置づけられている。
この施設は、政治犯が肉体的・心理的拷問、強制失踪、秘密裏の処刑にさらされた場所として知られる。生存者の証言や歴史資料は、この“家”が政権の治安機関が用いた弾圧手法の訓練・実験の場として機能していたことを示している。
ドキュメンタリーで示される調査は、こうした仕組みの一部が軍服を着た軍人だけでなく、秘密裏に活動する民間人エージェントによっても構成されていたことを明らかにしている。
当初は「ICL Notícias」の連載報道として発表された、ジュリアーナ・ダウ・ピーヴァが主導したこの調査は、すでに国際的な反響を呼んでいる。国連(ONU)の「真実・正義・補償および再発防止」特別報告者ベルナール・デュエムは、今回の新たな告発は、ブラジル軍人による犯罪に関する捜査の再開を求める必要性を示していると述べた。

『Bandidos de Farda(制服を着た国家犯罪者たち)』
作品タイトルは、監督のジュリアーナ・ダウ・ピーヴァによれば、まさに今回の調査で得られた確証から生まれたものだ。
「文書が示しているのは、国家犯罪を実行するための組織的な構造が存在していたという事実です。単に軍人が官僚的な命令をこなしていたという話ではありません。そこには、誘拐し、拷問し、殺害し、遺体を消すために準備された“装置”があった。そして多くの場合、その作戦には、秘密裏に暗殺者として行動するよう特別に訓練された人間が関わっていました」と、彼女はアジェンシア・ブラジルの取材に語っている。
物語が進む中で、ドキュメンタリーは弾圧機関の要員によって行われた性的暴力の証言も明らかにする。調査チームが分析した文書には、レイプ事件として特定された事例も含まれている。
「レイプは、恐怖と屈辱を与える手段として文書に現れます。これは非常に重要です。なぜなら、独裁期の性的暴力は何十年もの間、不可視化されてきたからです。今回の調査は、国家が被害者を肉体的にも精神的にも破壊するために、あらゆる手段を用いていたことを示す助けになります」(ジュリアーナ・ダウ・ピーヴァ)
人権研究者や専門家の間では、シーロ・エチェゴエニ大佐に関連づけられたこれらの文書が、未解明のまま残されてきた犯罪に対する歴史的・司法的調査の新たな道を開く可能性があると見られている。
軍事独裁に関する調査で知られるジャーナリストで作家のジュリアーナは、このテーマに約15年を費やしてきた。彼女は2025年に出版された著書『Crime Sem Castigo: Como os Militares Mataram Rubens Paiva(罰されざる犯罪──軍はどのようにしてフーベンス・パイヴァを殺したのか)』の著者でもある。今回の未公開作品についてのインタビュー全文は以下。
ジュリアーナ・ダウ・ピーヴァ:この調査は、軍事独裁政権の文書を扱ってきた長年の仕事の積み重ねによるものです。私の修士論文は、フーベンス・パイヴァ失踪事件のケーススタディでした。2016年に発表したのですが、その時期は事件に関する重要な発見が相次ぎ、同時に最高裁で恩赦法をめぐる最初の訴訟が始まった時期でもありました。
アジェンシア・ブラジル:記憶と独裁をめぐる議論は、この数年で変化しましたか。
ジュリアーナ・ダウ・ピーヴァ:大きく変わりました。私は記者として、2014年の恩赦法見直し審理を取材しました。その後、ブラジルではこの議論が一種の“中断状態”に入りました。特に2014年から2015年にかけて極右勢力が台頭したことで、記憶と正義をめぐる公共の議論が封じられてしまったのです。
アジェンシア・ブラジル:この過程において、映像表現はどのような役割を果たしていますか。
ジュリアナ・ダル・ピヴァ:映像は、この議論の“封鎖”を解く助けになっています。映画『アイム・スティル・ヒア(Ainda Estou Aqui)』のような作品は、人々に“独裁は二つの陣営が戦った戦争ではなかった”ということを理解させます。家の中にいた、丸腰の父親が突然消え、家族が答えのないまま破壊される──誰もがその立場に自分を置いて考えることができます。
アジェンシア・ブラジル:なぜタイトルを『Bandidos de Farda(制服を着た悪党たち)』にしたのですか。
ジュリアーナ・ダウ・ピーヴァ:文書が示しているのは、国家の人間が重大な犯罪に直接関与していたという事実です。これは、一部の行き過ぎた軍人が勝手にやった“例外的な暴走”ではありません。組織化された構造が存在していたのです。多くの要員は秘密裏に行動し、殺害し、遺体を消し、政治的反対者を追跡するために訓練されていた。彼らは、国家の装置を駆使して犯罪を実行していたのです。
アジェンシア・ブラジル:資料の中で、特に目を引いた点は何でしたか。
ジュリアーナ・ダウ・ピーヴァ:最も衝撃的だったのは、その準備が極めて組織的かつ綿密だったことです。尋問マニュアル、海外での訓練、監視体制の高度化──人々を追跡するための非常に体系化された計画が存在していました。そして、多くの被害者は、武装組織に関わってすらいなかった。これらの文書は、“二つの陣営が対等に戦った戦争だった”という物語(注:軍事独裁政権と武装抵抗組織が同じ条件で衝突していたかのように描く従来の説明)を完全に崩します。
アジェンシア・ブラジル:ドキュメンタリーでは、弾圧側による性的暴力も描かれています。その重要性は?
ジュリアーナ・ダウ・ピーヴァ:はい。文書にはレイプ事件として特定できる事例が含まれています。これは非常に重要です。長い間、こうした暴力は隠されるか、矮小化されてきました。性的拷問が、弾圧の支配構造の一部として存在していたのです。
アジェンシア・ブラジル:こうした過去と、近年のブラジルの状況には関連がありますか。
ジュリアーナ・ダウ・ピーヴァ:深く結びついています。近年私たちが目にしたのは、権威主義への歩みでした。検閲の試み、迫害、ジャーナリストや裁判官へのスパイ行為、そして「アビンの“影の情報組織”」と呼ばれる政治的監視のための秘密情報網──これは、ジャイール・ボウソナーロ前政権下でブラジル情報庁(Abin)の内部に設けられ、政敵の監視に使われたものです。国家が自らの過去に向き合わないと、必ずその代償を払うことになります。
アジェンシア・ブラジル:調査をドキュメンタリー作品にする過程はどうでしたか。
ジュリアーナ・ダウ・ピーヴァ:非常に濃密な経験でした。これまでポッドキャストや調査報道は手がけてきましたが、これほどの規模の映像作品は初めてでした。ICL は映像制作に強みがあり、私たちは歴史的厳密さを損なうことなく、誰にでも届く物語を構築したいと考えました。チームと成果をとても誇りに思っています。
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)




