ヴィニシウス・ヂ・モライス「A Casa」のモデルになった家

2013年 10月 20日

カサプエブロ

ヴィニシウス・ヂ・モライスの100回目の誕生日となった10月19日(土)、ブラジルのメディアではヴィニシウスに関するさまざまな報道が行われた。「フォーリャ」(電子版)はヴィニシウスが残した「A Casa(家)」という歌詞に関する話題を掲載した。

「A Casa(家)」は、イタリア人プロデューサーSergio Bardotti セルジオ・バルドッティが制作した、詩人Giuseppe Ungaretti ジュゼッペ・ウンガレッティ、シンガーソングライターSergio Endrigo セルジオ・エンドリゴとの共演作「La Vita, Amico, È L’Arte Dell’Incontro」に「La casa」として収録されたほか、74年作「Toquinho / Vinicius & Amigos」にはじめてポルトガル語で収録された。1980年作の子供向け作品集「Arca de Noé(ノアの箱舟)」には「A Casa」の題で、コーラスグループ、Boca Livreボカリヴリの歌で収録されている。

「ヴェージャ」が掲載したのは、「その家はとても面白かった/屋根がなく/何もない」という書き出しで始まるこの歌の歌詞のモデルとなったのが、ブラジルの南部と国境を接するウルグアイにある、Casapuebloカサプエブロと呼ばれる海に面した白い城のように見える家であるという話題。

ヴィニシウスとウルグアイは縁が深く、1957年~1960年には外交官としてモンテヴィデオに赴任していたほか、1970年代にもコンサートで訪れている。

この建物は1958年に建築家Carlos Vilaróカルロス・ヴィラロ(89歳)によって建造が始まった。最初は缶で作られた小さな部屋から始まり、その後レンガをこつこつ積み上げて30年かけて作られたという。

ヴィラロはヴィニシウスがカサブエブロを訪ねたときのことをよく覚えているそうで、ここへ来るたびにいつも表情が変わっていたのをヴィニシウスが面白がっていたことは疑う余地がないという。

彼によるとヴィニシウスがこの歌を最初に歌ったのは、カサブエブロでのことだという。「その家はとても面白かった/入口がなく/何もない/その家はpororóの家/ヴィラロの家」という歌詞で、ヴィラロの二人の娘アゴーとベバに贈られたものだったという。

「このときのことはとても記憶に残っています。記念に名前まで歌ってくれたのでしょう」(ヴィラロ)

ヴィニシウスはヴィラロのギターを弾いて午後を過ごしたという。

今日、カサブエブロは博物館、美術館、ホテルとなっている。各部屋は、トッキーニョなど、宿泊した有名人の名を持っている。トッキーニョはヴィニシウスに招待され、「A Casa(家)」の録音にも参加した。

トッキーニョは「崖のはしにあり日没の中に浮かぶようなこの家は(発表された詞とは)ずいぶん異なります。屋根がなく、床もなく、壁もないという、とても楽しいイメージになっています。詩の魔法だね」と語っているという。

(文/麻生雅人、写真/felipe.tocchetto)