アマゾンの先住民族文化が根付づくブラジル産ビール「シングー」、日本上陸
2014年 05月 5日近年、国外でも存在感を見せはじめてきたブラジルのクラフトビール(ブラジルでは“セルヴェージャ・アルテザナウ”、いわゆる地ビール)。パラナ州トレドで作られる黒ビール「Xingu シングー」も元々は、国内外で高い評価を得ているクラフトビールとして誕生したビールだ。
シングーは、100%ブラジル産の原料を使ったプレミアム黒ビール。クリーミーできめ細かい泡を持つミディアム・ボディのコクを持つビールとして知られる。アメリカ合衆国のシカゴで開催される国際ビール品評会で「最優秀黒ビール」に選ばれたほか、2006年にブリュッセルの国際味覚審査機構(iTQi)で最優秀味覚賞を受賞した。
ビールの名前のシングーとは、アマゾン川の支流である有名な川の名前。流域には同名の国立公園もある。このビールがシングーと名付けられたのには、アマゾン地方と深いかかわりがあるという。そんなシングーは、ブラジルの文化を背景に生まれたまぎれもないブラジル・ビールではあるが、実は誕生したきっかけを作ったのはアメリカ合衆国の企業だった。
合衆国バーモント州にあるビール輸入会社、アマゾン株式会社は世界中から珍しい味のビールを探し出して契約してきた。合衆国産ビールにもそれまで輸入されていたビールにもない新しい味を欲していた同社は、世界基準の黒ビールを開発するため研究家アラン・イームズを雇った。そしてアランが最初に調査に向かったのがブラジルだった。
アランとアマゾン株式会社は、ブラジルの小規模ビール生産者セザリオ・ヂ・メロ・フランコと手を組んでビールの開発に乗り出した。
ビールの開発に関する話には、こんな説もある。ある日アランは、アマゾン地方の先住民族が、宗教的な儀式や社会的なイベントの中で使用していたという謎の液体の記録を発見した。その液体は水と焙煎した穀物をベースにしていて、野生の酵母菌で発酵させたものだった。結果、アマゾンの先住民族文化を今に受け継ぐビール、シングーが誕生した、というものだ。
いずれにせよ、クラフトビールのシングーは、セザリオを中心に彼らの手で作られ、マンジョッカやトウモロコシなどアマゾン地方の自然の原料を使って作られている。
シングーが開発されたのは1987年。当初、シングーを作っていたのは、クラフトビール作りが盛んなサンタカタリーナ州カサドールにて。約1年の検証を経て、1988年、600mlびんが12本入ったケースが1700ケース、アメリカ合衆国に出荷された。その後、カサドールの工場が閉鎖され、生産はパラナ州のトレードに移った。1993年にはサンパウロに流通するようになったという。
2000年代初頭にシングーはブラジルの大手ビール会社Kaiser カイゼル傘下となっている。
ちなみに、シングーの生みの親の一人セザリオは、輸出向けに開発されたビール「Palma Louca パルマ・ロウカ」も生み出している。
「シングー」は伊勢丹新宿店で開催中のブラジルフェア「Abraços do Brasil ! ~ブラジルの抱擁~」地下一階で5月6日(火・振祝)まで販売中。
タイトル: 「Abraços do Brasil ! 〜ブラジルの抱擁〜」
会期: 2014年4月30 日(水)〜5 月6 日(火・振替休日)
時間: 10:30 – 20:00 不定休(会期中は休まず営業致します。)
場所: 伊勢丹新宿店本館・メンズ館各階
東京都新宿区新宿3-14-1
連絡先: 03-3352-1111(大代表)
(写真・文/麻生雅人)
「Abraços do Brasil ! 〜ブラジルの抱擁〜」、伊勢丹新宿店地下一階フードコレクション。写真右がシングー