西アフリカのエボラ流行、チョコレート価格に影響か

2014年 10月 17日

エボラがチョコレート価格に影響?

西アフリカでのエボラ出血熱の流行がチョコレートの価格に影響を与えるかもしれないと、ブラジルのメディア「エスタダォン」(10月15日づけ)が伝えている。

エボラが蔓延している3ヶ国が、チョコレートの原料であるカカオの一大産地の隣国であることから、すでにカカオの価格がこの1年で23%値上がりしているという。

その地域は、世界のカカオ生産のうち約2/3を占めている。

西アフリカで数千人の被害者が出る中、経済もこの病気に反応し始めている。そして、経済の中で最初に影響を受けた被害者がチョコレートになるだろうと同紙はいう。

世界保健機構(OMS/WHO)によると西アフリカから広がるエボラはすでに、感染者およびその疑いがある人を8000人、死者を4000人以上、出している。今人類が直面している、猛スピードで広がりをみせるこの病気に、経済も敏感に反応して、その損害が計算されはじめている。

最初に被害を受けているのはカカオ産業だという。病気が蔓延する、ギニア、リベリア、シエラレオネの西アフリカの3ヶ国と産地は近い。ギニアとリベリアの東隣が世界最大のカカオ生産国であるコートジボワールで、その東隣が2番目の生産国ガーナだ。

ロンドンにある国際カカオ機関(ICCO)によるとコートジボワール(40%)とガーナ(21%)の2ヶ国で世界のカカオ生産の61%を賄っているという。

「ギニア、リベリア、シエラレオネの3ヶ国はコーヒー、カカオ、椰子油、ゴム、綿の生産は世界の中で2%に満たない。しかし、世界のカカオ生産の60%以上を担う、隣国のコートジボワールとカカオに被害が広がることを懸念しています。ナイジェリアやカメルーンも含めると世界の70%を占める産地となります」とドイツ銀行のアナリストはいう。ちなみにそのナイジェリアでは20名のエボラ感染者と疑いがもたれている人がおり、すでに8名が死亡しているという。

この病気に、国際的なマーケットの価格は敏感に反応し始めている。カカオの1トンあたりの価格はニューヨーク市場で2013年9月に約2600USドルだったのが、2014年の同月には約3200USドルと、23%の値上がりをみせているとのこと。

投資銀行サクソバンクのコモディティ(商品先物)戦略部長オーレ・ハンセン氏は、現時点では、まだエボラは、カカオの収穫や輸送に影響を与えてはいないと認識しているが、リスクはあると語っているという。

国際カカオ機関(ICCO)の統計によると、カカオの生産地は、1950年代はガーナが1位で、ブラジルが2位だった。1960年代以降にコートジボワールの生産が伸び、1977年以降は1位の座にコートジボワールがついている。

80年代半ば以降はインドネシア、マレーシアなどアジアの生産も伸びた。インドネシアは90年代以降生産を大きく伸ばし、2位をガーナと競い合っている。国際連合食糧農業機関(FAO)「FAO統計データベース」(生産、作物、カカオ豆(2012年))では、1位がコートジボワール、2位がインドネシア、3位がガーナ、4位がナイジェリア、5位がカメルーン、6位がブラジルとなっている。

ただし2000年代に入ってから、ブラジルはカカオの輸出を減少させており、自国で生産されたカカオはほとんど国内で消費されているようだ。それどころかカカオの輸入は増加している。国際貿易を扱うLPC社が2013年に発表しているリリースによると、ブラジルのカカオ輸入は2011年には32500トンだったのが、2012年には54800トンと大きく増加している。

(文/麻生雅人、写真/Marcos Santos/USP Imagens)