パラー州の味を全国へ。注目集めるアマゾンの食文化を武器にした起業促進プログラムが活性化
2014年 12月 14日ここ数年、アレックス・アタラ、アナ・ルイーザ・トラジャーノなど、ブラジル人シェフが世界レベルで評価をされ始めている。
そんなカリスマ・シェフたちが得意とするのは、ブラジル各地のローカル食材や伝統料理を、フランス料理・イタリア料理などと融合した「コンテンポラリー料理」と呼ばれるスタイルだ。
「コンテンポラリー料理」がサンパウロ、リオなど大都市を中心に注目を集めるにつれ、シェフたちが着目している、ブラジル各地に伝わる食材や伝統料理への関心も高まっている。
そんな中、南東部の大都市から遠く離れたパラー州ベレン市で、ご当地レシピを取り入れたパン屋さんが登場して話題になっている。
TVグローボが12月7日、番組「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランジス・ネゴーシオス」で伝えたところによると、エリザンジェラ・ペルヂガゥンさんとサムエウ・ヂ・カルヴァーリョさんが経営するパン屋「アルマゼン25」が、ご当地食材を使った商品で地元住民や観光客に人気を博しているという。
店頭には、アサイーパン、アマゾン地方の伝統的な調味料トゥクピー入りのパイ、希少なご当地ナッツやフルーツを使ったケーキなど、アマゾンの森の恵みをふんだんに使った商品が並ぶ。
経営者の一人、エリザンジェラさんは「この地域の特産品は他の地域にはないユニークなものが多く、人を引き付けてやまないものがある。それらの食材を自分の店でたくさん紹介したい」という。
この店の経営者たちは「パラー州の味のショーウインドウ」と題したSEBRAE(中小零細企業支援サービス機関)の起業家向けプログラムに参加した。その後彼らは自分の店のパンに地元食材を使うことに決めた。このプログラムはパラー州全体で行われ、州の60の自治体から約250の企業が参加している。
もう一人の経営者、サムエウさんは「このプログラムの参加者たちを通じて自分たちの取り組みを広く知らしめることができたことも今の成功につながっている」という。
収益の面でもご当地食材メニューは利益率が非常に高い。この店のご当地パンはスタンダードなフランスパンの比べて5倍の値段で売れるという。ご当地もの戦略を取る前と後で、1日の収入は約2倍になった。
目新しさが話題を呼び、この店は今ではベレン市の観光スポットとして観光ガイドに載るほどに成長した。州内の食材を様々な形で味わえるところから、パラー州食文化の中心地と位置づけられつつあるという。
ブラジル料理といえば日本ではシュハスコ(シュラスコ)、フェイジョアーダというイメージが強いが、国土の広いブラジルは、地域によって採れる食材も飼育する動物も異なる。
特にアマゾンでは大河の恵みを利用した魚料理が名物になっている。かと思えば先住民族の文化が色濃いこの地方には、南東部などの都市部ではあまりみかけない、ポルトガル人の入植以前から南米大陸に根づいていた食文化が今も息づいていたりもする。コンテンポラリー料理の世界的シェフたちが真っ先に注目したのも、パラー州を含むアマゾンの食文化だった。彼らはその豊かさを食卓に凝縮し、食通たちをうならせている。
(文/原田 侑、写真/Reprodução/「Pequenos Empresas e Grandes Negocios」/TV Globo)
TVGloboの経済ニュース番組「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランジス・ネゴシオス」は日本ではグローボインターナショナル(スカパー 514ch)で放送中