五輪開催地リオの名所のひとつ、サンクリストーヴァォン市場が70周年

2015年 09月 15日

サンクリストヴァォン市場

リオデジャネイロ市北部地域にあるサンクリストーヴァォン(サンクリストーバン)市場がこの9月に70周年を迎える。「オ・グローボ」など現地メディアが伝えている。

サンクリストーヴァォン市場、またの名を”北東部の人たちの市場”は来る9月18日、1940年代にこの地域に移住してきた北東部の人たちが伝えた文化が、この場所で70年受け継がれてきたことを祝福される。

現在この市場には、ブラジル北東部ならではのアイテムを扱う約700の屋台と約100軒のレストランが軒を並べているという。この市場が生まれたのは1940年代といわれている。北東部からの移民たちが移住した土地で、自然発生的に北東部の品々を売買する市が生まれたという説や、第二次大戦後にリテラトゥーラ・ジ・コルデウの読み聞かせや売買が行われはじめたことから市が立つようになったという説など、諸説がある。

サンクリストヴァォン市場

リテラトゥーラ・ジ・コルデウ(略してコルデウとも呼ばれる)は、ペルナンブッコ州やセアラー州など北東部を中心に根づいている民衆文学。独特の韻の踏み方をした、吟遊詩人が詠んだ英雄譚、宗教的な物語などの詩が印刷された小冊子。

吟遊詩人が売り歩くときや、文字を読める人が広場などで民衆に読んで聞かせたことで、非識字者が多かった北東部の内陸部の人々も、世の中の出来事や物語を楽しむことができたといわれている。表紙には、物語を象徴する版画絵が掲載されていることが多い。もともとは中世のヨーロッパで流行したものがポルトガル経由でブラジルに伝わった。

ポルトガルでは、この読み物(リテラトゥーラ)は店の軒などに紐(コルデウ)でつりさげられて売られていたことから、リテラトゥーラ・ジ・コルデウ(紐の文学)と呼ばれている。ブラジルにおいては、吟遊詩人が売り歩く際に体にタスキのようにかけた紐に、この小冊子を吊るしていたという説もある。

同市場の歴史に関する著作もあるシウヴィア・ネメル教授は、どの説が真実であろうとも、サンクリストーヴァォンの市が、北東部からの移民たちのコミュニティと、今日まで彼らの風習、習慣が保存されていることに関して重要な役割を担ってきたと指摘している。

サンクリストーヴァォン市場

また、音楽家であり、リオのラジオナショナル局で5年にわたって「プッシャ・オ・フォーリ」という番組を持っているラジオパーソナリティのジョゼー・セルジヴァウは、サンクリストーヴァォンの市が自然発生したのちこの場所は、北東部出身の人たちだけでなく、観光客や、北東部の料理や文化の愛好家など、さまざまな人々が北東部の伝統に接してきた場所であると説明している。

「現在サンクリストーヴァォン市場では、民芸品から現在のアーティストが作るものまでが売られ、伝統的な形式で奏でられる北東部のダンス音楽(フォホー・ペ・ジ・セーハと呼ばれる)だけでなく、ちょっとした寸劇、ブンバメウボイ(北東部に根強く伝わる牛祭り)やフレーヴォ(カーニバルなどで披露される北東部特有のダンス音楽の一種)などさまざまな民衆芸能の出し物、フェスタジュニーナ(6月祭)の行事なども行われます。北東部の文化や伝統がここで披露されることで、代々、伝えられていきます」(ジョゼー・セルジヴァウ)

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(文/麻生雅人、写真/Tânia Rêgo/Agência Brasil)

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