日本とは異なるブラジルの医療事情

2016年 03月 30日

保健医療システム ブラジル

ブラジルは国民皆保険制度ではないので、企業が従業員を保険に加入させる必然性はありません。従業員を保険に加入させるか否かは企業の自由なのです。

そのため、保険があるかないかは、ブラジルで職を探すに当たって、重要な判断要素の一つになります。

工場の工員さんの場合だと、賃金は月に1000レアル程度(3万円)が相場ですが、保険がない場合に、私費で医療費を払うのは財政的に厳しいです。医療費を支払えない彼らはどうするかというと、ブラジル健康省が運営する医療保険制度SUS(O Sistema Único de Saúde)と契約している病院に行くことになります。

このSUSは、基本的に医療費無料だそうです。そのためか、病院は慢性的な需要過多となっており、病院に行っても診察してもらえないという問題がしばしばテレビのニュースで報道されています。

SUSでの医療は無料とはいえ、受入態勢が十分に整っているとは言い難い状態であるため、中流以上の所得階層の人々は、民間保険に入ることになります(次ページへつづく)。

(文/唐木真吾、写真/José Cruz/Agência Brasil)
ブラジルではSUS(保健医療システム)の待遇改善を訴える抗議デモがたびたびおこなわれている。写真はブラジリア、2015年12月のデモ

著者紹介

唐木真吾 Shingo Karaki

唐木真吾 Shingo Karaki
1982年長野県生まれ。東京在住。2005年に早稲田大学商学部を卒業後、監査法人に就職。2012年に食品会社に転職し、ブラジルに5年8カ月間駐在。2018年2月に日本へ帰国。ブログ「ブラジル余話(http://tabatashingo.com/top/)」では、日本人の少ないブラジル北東部のさらに内陸部(ペルナンブーコ州ペトロリーナ)から見たブラジルを紹介している。
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