景気低迷の長期化でブラジルの社会階層の構成に変動

2016年 06月 2日

リオデジャネイロ 不法占拠 立ち退き

トータルで102万世帯、人数にして400万人が社会階層の移動を経験することとなった。大多数は不本意な移動である。

ピリ氏によれば、この不況において注目すべきは、多くの家庭で車や家などを比較的短い間に手放すことになっている点だという。

「これらを手放す場合、通常は決断にそれなりの時間がかかるものなのですが・・・」(ピリ氏)

左官工のマウリシオ・パエス氏はピリ氏の指摘事項を身をもって示している一人だ。パエス氏は短い期間に多くのものを失った。4年前、中古車を1万5000レアルで購入し、月に700レアル現金払いでスーパーマーケットで買い物をするのが日常だった。

「今では買い物の額は半分です。特売品を探し、カードを使って翌月に支払いをしています」(パエス氏)

子供たちは以前は毎日肉を食べ、冷蔵庫にはいつもヨーグルトがあった。今は3500レアル(約11万円)収入が減少し、食事は米と豆がメインで、卵を買うお金もない時があるという。そして近々、車を手放すことになるのだという。

低所得者向けコンサルティングを行うプラーノCDE経営者兼ディレクターのマウリシオ・ヂ・アウメイダ・プラード氏にとっては、ブラジル調査会社協会の出した数字は特に中流階級に対する不景気の影響に対して同氏が感じていることを表しているという(次ページへつづく)。

(文/余田庸子、写真/Fernando Frazão/Agência Brasil)
5月6日(金)リオデジャネイロ市マンゲイラ。約20年前に操業を停止した工場の一部の土地を占有していた家族が、市の保安官によって立ち退きを強制されてバラックが取り壊された。エリアを占拠して居住していた人たちは、経済危機の中で職を失い、マンゲイラ地区の住居の家賃(400~600ヘアイス(レアル))が支払えないと主張していた。地域住民によるとこの一帯は、工場が取り壊されたあとは雑草などが生い茂り、蚊やねずみの発生源となっていたという