英シェフ、ジェイミー・オリバーとブラジル食品最大手BRFがコラボ商品発売

2016年 07月 25日

ジェイミー・オリバー

農薬の過剰使用、食品偽装、糖分・脂肪分の過剰摂取など、食にまつわる社会問題が取りざたされる昨今、日本でも食の安全、食育に対する情報は日に日に貴重なものとなっている。

イギリスの「裸のシェフ」ことジェイミー・オリバー氏は、学校給食の改善やファストフードの製造現場をメディアに紹介し世界に衝撃を与えた社会活動家としても知られているが、オリバー氏とブラジル食肉加工最大手BRFがタッグを組んで、ブラジルの食文化向上に乗り出すようだ。

ブラジル現地紙「オ・エスタード・ヂ・サンパウロ」電子版「エスタダゥン」が7月6日づけで伝えたところによると、ブラジルフーズ(BRF)はオリバー氏とのコラボ商品製造のため、ゴイアス州にある養鶏場183か所に5000万レアル(約16億円)を投資するという。

BRFは世界の鶏肉シェアの18%を握っているグローバル企業。BRFの鶏肉ブランド、サジア(Sadia)がオリバー氏と組んで売り出す製品は冷凍の健康な鶏4000万羽(半調理済み)とのこと。

7月14日サンパウロを訪れたオリバー氏は現地ジャーナリストとの記者会見でBRFが5000万レアルの投資を行うと語った。製品にはオリバー氏の名前が付く模様だ。スーパーマーケットにお目見えするのは9月ごろ、3-6種類、小売価格帯は15-25レアル(約480-800円)の予定。

このプロジェクトのためにBRFは健康な鶏を飼育できる条件に合った農場の要件をまとめた。指定された養鶏場は鶏の止まり木や砂床だけでなく、1羽あたりの養鶏スペース、温度センサーの設置などの要件を満たす必要がある。

そしてこれらの農場では動物の飼育に抗生物質を使ってはならないことも定められた。

オリバー氏は食の安全のため、大企業と戦ってきたことでも知られている。

「大きな変革を成し遂げるには大企業とも渡り歩かなくてはなりません。私は5年間で世界中で5-6社の大企業と折衝を続け、まだ大きな変革を起こすには至っていませんが、一定の成果は出たと思っています。いい方向にことを運ぶためには信念が必要で、信念がなければ何も変えることはできません。私はBRFが私の要望に合ったものを作ってくれると信じています」(ジェイミー・オリバ―氏)

オリバー氏いわく、現在の食に関する最大の問題は3つで、肥満、水資源の管理、抗生物質の多用による耐性菌の増加とのことだ。

彼の過去のプロジェクト「フード・レボリューション」は肥満との戦いを謳っている。今回彼はブラジルでこの戦いに挑む。英国では「フード・レボリューション」の活動を経て砂糖入り清涼飲料水への課税が決まり、学校に還元されることになった。

オリバー氏は現在、BRFとのプロジェクトで販売する製品のレシピを考えているところだが、今回プロジェクトに組み込まれる養鶏場に対して視察を行ったという。7月7日にはサンパウロのBRF本社で新製品に関する最終の打ち合わせを行った。

Sadiaブランドの営業・マーケティング責任者、ハファエウ・イヴァニスキ氏によると、ブラジル人消費者の購買力が下がっているこの時期でも新製品の売れ行きは好調と見ている。BRFは新製品をプレミアム商品として販売するのでなく、一般消費者の手に届く価格設定を予定している。

英国のEU離脱に関しては、オリバー氏は残念だと語った。『ヨーロッパを愛する』というコンセプトには同意していたわけではなかったものの、EU離脱が国内の農畜産品の供給に影響が出るとの見解に疑問を呈しつつ、食品の安全管理基準が引き上げられることへの期待を語ったという。

「ヨーロッパの基準は高いとは思いますが、英国はもっと高いのです」(オリバー氏)

(文/原田 侑、写真/Divulgação/「Muito Além do Peso」)
写真は日本ではブラジル映画祭で上映された「“Muito Além do Peso(子供たちが危ない)」に出演したジェイミー・オリバー