リオ五輪サッカー、日本もブラジル同様不本意な開幕戦になってしまった

2016年 08月 8日

アレーナ・ダ・アマゾニア

サッカー日本代表もブラジルと同様に、開会式の前日8月4日(木)(日本時間5日(金))に開幕戦を迎えた。

日本の開幕戦の結果については、こぞって日本のマスコミで報道されているが、壮絶なこれ以上ないぐらいのすさまじい試合になった。

相手は、アフリカの強豪ナイジェリア。ナイジェリアは、1996年アトランタ五輪で金メダル、2008年北京五輪で銀メダル、そして今大会についてもアフリカチャンピオンとして臨んでおり、強豪中の強豪である。

日本時間の平日午前10:00キックオフで、前半12分の間に、4つもゴールが決まった。すべて直後に追いついているので、悪くないと思った。

試合の会場は、アマゾン地方の中核都市、マナウスのアレーナ・ダ・アマゾニア。このスタジアムは、2014年W杯のために新設した収容人数約40000人のスタジアムだ。4部リーグ所属のナシオナウがホームとして使用しているようだが、とても40000人もの観衆を集めることはできなさそうなので、運営は非常に大変だろうと思う。

また、マナウスは、貿易フリーゾーンになっており、日系メーカーも多く進出しており、日系企業の駐在員が多い地域だ。しかし、緯度は高くほとんど赤道直下で、私もブラジル在住時の2007年に一度だけ行ったことがあるが、直射日光はとても強く、とにかく暑かったことを覚えている。

それにしても、2014年W杯のときもそうだったが、日本代表はブラジル北部・北東部と縁があるように感じる。
ブラジルは国土がとても広く、同じ国内でも北部と南部では気候がまったく異なる。今回のリオ五輪のサッカーは6都市7会場で行われる。すべてサンパウロ以北で、南部の都市はないのだが、サンパウロとマナウスでは大きく気候は異なるので、コンディショニングも大事な要素になってくる。

日本代表は2014年W杯では、グループリーグ3試合が北東部中心の暑い地域での試合だったにもかかわらず、キャンプ地をサンパウロ州(イトゥー)に設定していたため、完全にコンディショニングに失敗していた。

今回はその教訓も活かされたようで、北東部のアラカジュをキャンプ地に設定している。

さて、そんなマナウスで行われた日本対ナイジェリアの試合だが、ナイジェリア代表がキックオフ数時間前にマナウスに到着した、ということばかりクローズアップされていた。

どのような入り方をするのか注目したが、まるでウイニングイレブンなどのTVゲームを見ているような感じだった。ゴールを決められ、その直後のプレーで追いつく。その繰り返しが2回も続いた。

しかし、いろいろと気になる点はあった。日本のネガティブな部分ばかり騒がれているが、それだけではない。ポジティブな部分もあったと思う。

まずは、ゴールを4つも決められたという事実だ。

1点目は、興梠のPK。PKの上手い下手は絶対にあると思っている。GKの動きを見て落ち着いて蹴っていた。興梠のPKはとても上手かった。

今回のOA3人(興梠、藤春、塩谷)の評価が非常に低いが、この日の興梠は、ボールに触る機会は少なかったが、トラップ、ターンの上手さは際立っており、技術力の高さは十分に感じられた。これだけの技術力を持っていれば、前線で十分にボールをキープできるのでチャンスは作りやすくなると思う。そういう機会を十分に見たいと思った。

2点目は、大島からのスルーパスを南野がGKの股を抜くゴールを決めた。これは、本当に鮮やかなゴールだった。大島、南野は、両者ともに相当に攻撃を組み立てており、よかったと思う。

3点目は、藤春からのクロスを浅野がヒールで決めた。

藤春は、悪くなかったと思う。守備でのミスはいくつかあったが、中島とのコンビネーションで左サイドを何度も駆け上がっており相当にチャンスをつくっていた。これは、間違いなく日本の攻撃のパターンだ。中島もよかった。

浅野はゴールこそ決めたが、浅野の真骨頂はこの試合では見られなかった。後半途中からスーパーサブのような形で出てきたのだから、もっと浅野のスピードを使うべきだったと思う。

そして、4点目は後半ロスタイムに鈴木武蔵が豪快に蹴りぬいたゴールだった。

この初戦敗退の報を受け、日本中でネガティブな報道ばかりが目立っているような気がするが、この結果は特に驚くようなものではないだろう。ナイジェリアは、到着遅れというトラブルはあったものの、強豪チームだ。

この試合を見て非常に残念に思ったのは、後半の戦い方だ。

1点差をつけられて後半を迎え、いきなり6分に不運なPKで失点してしまった。

この打撃は大きいと思うが、1点取れば流れは変わる。おまけに、相手は試合開始数時間前に飛行機で現地に到着したのだから、疲れが出ることは容易に想像できる。もっとガツガツ行ってほしかった。

特に、浅野がゴールを決めた後半25分の後、なぜガツガツ行けなかったのか。まだ20分もあったのだ。勢いに乗ればゴールは十分に狙えたし、1点でも入れば流れは完全に日本に傾くのだ。淡々とプレーしすぎていた感じがした。

このピッチに立てている者は、選ばれし選手たちなのだ。ずっと一緒に戦ってきた仲間たちでもこのピッチに立ちたくても立てなかった選手が数多くいることを忘れないでほしい。戦う気持ち、気迫を見せてほしい。

そして、パフォーマンスのよかった選手もいればそうでなかった選手も目立った。原川、室屋、塩谷、櫛引には少々残念に思った。

原川はトラップに課題があるように見受けられた。室屋については、守備面での1対1のシーンではまだまだ甘さが見受けられた。塩谷は、時折きれいな縦パスを見せていたが、ミスの多さも目立った。このチームの絶対的なCB植田とともにCBの一角を成したが、どちらがリーダーシップを取るのか明確になっていない感じで、その影響かどうかはわからないが植田もこの日は精彩を欠いていたように見受けられた。

そして最後にGK櫛引についてだ。昨年まで在籍していたエスパルスでの櫛引のパフォーマンスはあまりよいとは思えないもかったが、U23日本代表ではスーパープレーを随所に見せていたし、(U23日本代表では)正GKを務めていたので実力は確かなのだろうが、この日のパフォーマンスは相当に安定感に欠けていたように思えた。

今後、日本は、コロンビア、そしてスウェーデンと戦うことになる。このグループは死のグループといってもいいぐらい、対戦する2チームも相当に強いと思う。

しかし、忘れてはいけないことは、まだまだ予選グループ突破の可能性は十分残されていることだ。絶対にあきらめず、気迫を持って戦ってほしいと思う。

(文/コウトク、写真/SECOM)
写真はアレーナ・ダ・アマゾニア

著者紹介

コウトク

2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。
2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。

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