環境都市クリチーバ市(パラナ州)

2016年 10月 23日

クリチーバ市

当時人口が急増していたクリチバの公共交通の要として地下鉄の導入が検討されていましたがクリチバ市には地下鉄を建設する資金、技術が不足していました。レルネル市長は地下鉄が提供する利点は信頼性、速度、快適性、頻度であると定義し、地下鉄システムの代わりにバスシステムによってこれらの要素を満たすことが出来ないか検討しました。

その結果バス専用レーンを設置することで信頼性を、バスの出入り口と同じ高さにありバス料金前払い可能なチューブ状の停留所を設置する
ことで速度を、新車両を導入することで快適性を、バス運営会社と運行するバスの本数に応じた支払い契約を結ぶことで頻度を、バスシステムが満たすことが可能となりました。

BRT は地下鉄システムより安価で効率的な公共輸送システムであることからブラジル国内及び世界中の都市で採用され、2014年10月時点において世界186 都市でBRT が運行されていると言われています。

クリチバ市はレルネル氏が構想したマスタープランによって都市を4つの骨格軸(その後骨格軸が一つ追加されて5つになる)に沿って発展することになりました。そしてその骨格軸に沿って土地利用の高度化を図り公共交通の幹線路線を通すこととしました。このためクリチバのBRT はクリチバの都市計画と統合化され、都市の発展軸に沿って幹線となるバス路線が整備されています。

また幹線路線沿いの公共交通の利便性が高い地域は交通需要が集中的に発生する業務エリア、商業エリアとして活用し、そうでない地域
は主に住宅利用に充てられています。

さて、そんなレルネル・クリチバ市長の懐刀として活躍した二人の日系人を紹介します。

一人はカシオ・タニグチ氏です。

同氏は交通技術者としてバスターミナルの運行管理システムを作成した功績がレルネル市長の目に留まりクリチバの公共交通システムを管理するクリチバ都市公社総裁に登用され、現在のクリチバのバスシステムをレルネル市長と共に策定しました。その後レルネル市長の下でIPPUC 総裁を務めた他クリチバ・インダストリアル・シティを作る上で貢献し1997 年より二期にわ
たりクリチバ市長を務めました。

もう一人はヒトシ・ナカムラ氏です。ナカムラ氏は70 年にパラナ州に移住した元日本人(ブラジルに帰化した日系ブラジル人一世)です。

ナカムラ氏は71年クリチバ市公園課において勤務を開始し公園整備のアイデアを提案したところレルネル市長の目に留まりバリグイ公園他の公園整備を担うことになり大いに成果を上げました。その後89 年にレルネル市長によりクリチバ市環境局長に抜擢され95 年にはレルネル・パラナ州知事によりパラナ州環境局長に抜擢されました。

ナカムラ氏は公園整備の他クリチバ市において自然生態的な動物園や環境市民大学の建設、スラム街でのゴミ収集を促すために市周辺農家から余剰農産物を買い上げ分別したゴミと交換する緑との交換プログラムなど様々なアイデアを実行に移しました(参考文献:服部圭郎著『人間都市クリチバ』学芸出版社ほか)。

(文/池田敏雄、記事提供/ブラジル特報(日本ブラジル中央協会)、写真/ Cesar Brustolin/SMCS)
写真は2016年1月、クリチーバ市のバスレーン停留所

ブラジル特報 2016年9月

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