サンパウロに5つ星ホテル「パラシオ・タンガラ」オープン
2017年 05月 14日アニャンビー・モルンビー大学のホテル業コースの講師カルロス・ベルナルド氏は、サンパウロにはファザーノ、エミリアーノ、ユニークといった高い水準のホテルがあるが、これまで、国外の富豪や国家元首など洗練さに対する要求の厳しい顧客に応えることができなかったという。
「サンパウロにはパラシオ・タンガラのような、歴史的で豪華なホテルが必要だったのです」(カルロス・ベルナルド氏)
このホテルの大きな特徴のひとつは、ブラジルを代表する造園技師ホベルト・ブルレ・マルクスの手による13万8000平方メートルの敷地を持つブルレ・マルクス公園に隣接していて、大都会サンパウロ市内にいながら、大西洋岸森林(マッタ・アトランチカ)の自然を満喫できる点だ。141室(うち、スイートルームは59)すべてが自然公園に面している。
1500年にポルトガル人が上陸する以前、南米大陸の大西洋沿岸は森林地帯で、その面積は130万km2あり、現在のブラジル全土の15%を占めていたと推定されている。
切り開かれて開発が進み、現在ではサンパウロやリオデジャネイロのような大都会も存在しているが、リオ市のコルコバードの丘のふもとにあるラージ公園をはじめ、ブラジルの大西洋沿岸には、かつて森林地帯だった名残が各所に見られる。
ブルレ・マルクス公園も、大都会の中にありながら大西洋岸森林の自然の姿を残す貴重なエリアだ。園内には原生林の林や池も残り、野生の猿や鳥たちが生息している。
ホテルの名前にも、主に大西洋沿岸地域に生息するタンガラ(Tangara chilensis、和名:ナナイロフウキンチョウ)という鳥の名前がつけられている。
「タンガラはブラジルに生息する、ブルーや黄緑のきれいな色の羽で知られる鳥。ホテルの名前は、この鳥にオーマージュを捧げています。またホテルのロゴマークは、この鳥のイラストをふたつ組み合わせて蝶のようにデザインされています」(ジャン=ピエール・スートリック・セールス&マーケティングシニアヴァイスプレジデント)
サンパウロの街中にありながら大西洋岸森林の自然がここに残されている理由には、この公園がたどってきた歴史とドラマが大きく関わっている。
「ホテルと隣接しているブルレ・マルクス公園には、かつてオスカー・ニーマイヤーが手掛けた館が建てられるはずだったのです」(ジャン=ピエール・スートリック・セールス&マーケティングシニアヴァイスプレジデント)
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(文/麻生雅人、写真提供/オトカーコレクション)