ブラジルのカカオ生産、パラー州で好調
2017年 06月 15日州の南西部の町、メヂシランヂアに8年前、南東部のサンタ・カタリーナ州からやってきた夫婦がいる。このブローニ夫婦は100ヘクタールの農場を持ち、中には4万7000本のカカオの木を植えている。現在農場では9家族が働いている。
「ここのカカオでとてもおいしいチョコレートが作れます。とてもやりがいを感じていて、今の私たちにとってはカカオがすべてです」(農場主、ホブソン・ブローニ氏)
メヂシランヂア市は州内のカカオ生産の半分を占めている。
市内の別のカカオ生産者、セルジオ・トレヴィザン氏は、伐採されて放置されていた土地に1万5000本のカカオの木を植え、農場を作った。一年中日差しがあり、降雨量が多く、土地が肥沃な点からカカオ生産に最適な地、と判断した。
「この市内には3000-4000本程度の小規模カカオ生産者が多く、しかもずっと生産し続けているという点からも、この地ではカカオ栽培は持続可能な産業であることがわかります」(セルジオ氏)
パラー州でのカカオ生産が増加し始めたのはここ数年のことだ。生産高の推移では2014年が8万8000トン、2015年が10万5000トン、2016年が11万8000トン、そして今年は12万5000トンを見込んでいる。
2022年には23万3000トンの生産を達成すると見られている。
パラー州の増産成功の秘訣はしばらく前に始まった科学的な試みにある。50年ほど前、より生産性の高いカカオの木を求めて研究者一団がこのアマゾン地帯にやってきた。
その研究成果は現在、州都ベレンで確認できる。研究センターであるCeplacでは一団が残した遺伝子に関する研究結果を活用した、より生産性の高い、良質なカカオの実をつける木が何種類も並べられている。
Ceplacの研究員たちは1万9000種類以上のカカオの花粉を用いた交配による品種改良を進めている。害虫や病気に強く、生産性が3倍の品種誕生を目指して日々研究を重ねている。
Caplacは研究所を訪れるカカオ生産者たちに、ハイブリッド品種の植え方、育て方から実を結ぶまでの指導も行っている。うまく育てれば1ヘクタール当たり3000キロのカカオ生産が可能になるという。
バイーアに苗木を持ち帰ったカカオ生産者は言う。
「この新しい苗が、私の希望です」(エリスヴァウド・アウヴェス氏)
Ceplacのノウハウでバイーアが再びかつての生産量を取り戻し、ブラジル産カカオを使ったチョコレートがここ日本でも日常的に手に取れる日が遠くないことを願いたい。
(文/原田 侑、写真/Sidney Oliveira/Ag. Pará)