ブラジル発、新しいフルーツ「セハードの真珠」とは!?

2018年 01月 11日

セハードの真珠
写真は「グローボフラウ」より。TVグローボ系列の番組はIPCTV(グローボ・インターナショナル)で放送中。視聴の問い合わせは、080-3510-0676 日本語対応ダイヤルまで)。 写真/Reprodução/Globo Rural/TV Globo

アサイー、クプアス、カカウ等々、ここ10年くらいの間にブラジル産の果物が果肉(パルプ)やジュースの形で日本でも楽しめるようになった。

そんな果物天国のブラジルでは、国内でも広く知られていない果物はまだまだ多い。

その一つ、「セハードの真珠」が、今、ブラジルの美食家と一部農家から注目を浴びている。

TVグローボがアグリビジネス情報番組「グローボ・フラウ」で12月31日づけで伝えたところによると、今、ブラジル中央部のサバンナ気候地域(通称「セハード」)の農家の間で、パッションフルーツを品種改良した「セハードの真珠」の生産が盛んにおこなわれているという。

栽培が特に盛んなのは連邦区近隣の農業地帯で、この果物の生産が始まってから、農家はそのあり方を大きく変えたとのことだ。

「セハードの真珠」の開発は20年以上前に始まったが、中心となってすすめてきたのがブラジル農業研究公社(EMBRAPA)セハード地区の研究者、ファビオ・ファレイロ氏だ。

「研究が始まったのは1990年代で、そのころ、セハード生態系の中からマラクジャ(パッションフルーツの現地名)の木を何種類か集めて回っていました。その中からつける実の量、疾病耐性、果実の質という点から選りすぐって掛け合わせていきました。その結果、今の『セハードの真珠』が生まれました」(ファビオ・ファレイロ氏)

新種のマラクジャは従来種よりも甘く、消費者にも好評だ。また、生産者から見ると、乾燥しがちなこの地の気候によく適応し、育てやすい果樹のようだ。

「この植物はとても素朴で手がかからず、水不足に強いのです。他の果樹に比べて必要な水の量は半分以下です。育てやすいため、大規模に果樹園を展開できる農家から家庭農園程度の小規模農家まで、この地域の様々なタイプの農家で栽培することができます」(ファビオ・ファレイロ氏)

セハードは1年のうち雨が少ない時期もあり、この地域の農業は水を効率よく活用することが肝要だ。従来のマラクジャの木は1本あたり1日16リットルの水が必要だったが、新種だと8リットルですむ。

育て方だけでなく、収穫方法も従来種とは異なる。従来のマラクジャは熟すと色が変わるが新種は色が変わらない。そのため、収穫期を知るには、農家は木の枝ではなく、地面に落ちているかどうかで判断することになる。農家は実が地面に落ちた2日後にその実を拾って出荷する。

もともとセハードでは従来種は2-3年を1サイクルとして栽培していたが、新種は12年間連続して収穫ができる。また従来種が手動で受粉させる必要があるのに対し、新種は手動プロセスが必要ない。そのうえ、植え付けから収穫まで8か月と短く、栽培開始と同じ年に収入を得られる点も農家にとってはありがたい。さらに害虫や病害にも強いのだ。

手間がかからないため生産コストが低く、従来種より果実は甘く見栄えもよいため出荷時の価格も従来種の3倍の値が付くという。新種の栽培により農家の収益力が大いに向上したというのもうなづける。

オジエウ・アウヴェスさんは新種のマラクジャ栽培農家の一人だが、新種の登場でこの地域の農家の生活は激変したという。以前はマンジョッカ芋や自分たちが食べるものを生産するのが精いっぱいだったが、新種のマラクジャを栽培・出荷できるようになり、自分たちの生活を賄うだけでなく、現金収入を得られるようになったという。

ペドロ・マラキアスさんは3年前から新種の栽培を始め、徐々に作付面積を拡大し、今では年に2トン以上を出荷している。食うや食わずだった生活から、今ではトラクターなど大型の農機具を使って果樹園の手入れをするほどになった。

「『セハードの真珠』を作り始めて一番良かったことは、もっともっと働きたいと思うようになったことです。これからも自分の農園に木を増やしていきたいですね」(ペドロ・マラキアスさん)

ブラジルの美食家にとっても地域社会にとっても、まさに『真珠』のような存在だ。日本で拝めるまでまだしばらくかかりそうだが、ブラジル社会で真珠がもたらす果実がさらに大きくなることを見届けていきたい。

(文/原田 侑)