おもちゃの世界にも多様性が浸透? 黒人人形専門店が開店
2018年 04月 3日ブラジルの街を歩くと、すれ違う人のルーツの多様性を感じる。様々な国・地域からやってきた移民により持ち込まれた多様な文化は、ブラジルの大きな特徴の一つだ。
中でも割合が大きいのはアフリカ系ブラジル人で、ブラジル人の約54.9%と言われる。にもかかわらず、玩具の世界では、97%が白人仕様だという。
そんな状況に一石を投じる玩具メーカーがリオデジャネイロ市(以下「リオ市」)に現れた。
TVグローボが経済情報番組「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランヂス・ネゴーシオス」で伝えたところによると、リオ市に住む夫婦が共同出資方式で資金を集め、肌の黒い人形の製造を行っているという。
ジャシアーナ・メウキアデスさんと夫のレアンドロ・メウキアデスさんは、2011年から非公式に人形作りを行っているが、2017年に2万2000レアル(約70万円)を集めて事業として生産を開始した。
集めた金額は製造用の器具、材料費、 ブラジル国家度量衡・規格・工業品質院からの品質証明書取得費に投じた。
これらの人形の購買層は可処分所得が少ない世帯のため、価格設定は低くしている。布は無駄なくすべて活用しており、1メートルの布地で60-70の人形を作っている。
人形はクッション的な造りのものが25レアル(約800円)、組み立て可能なものは60レアル(約1920円)という価格設定だ。
「髪の毛部分はウールで、ボリューム感を持たせています。人形は分解することができ、この人形を使う子供は、実社会にいる、障害のある人について考える機会を持つことができます。私たちはそこに需要があると見ています」(ジャシアーナさん)
2017年、ジャシアーナさんの事業は個人事業から小規模企業に形態を変え、売上は前年比60%増の9万レアル(約288万円)に達した。売上増加のカギとなったのは従業員に対する教育だった。すべて手作りのため、全工程について教育を行き届かせる必要がある。
ジャシアーナさん夫妻は今後の計画について次のように語った。
「もう一つリオ・デ・ジャネイロ州南部に工場を作りたいです。また、ノウハウを標準化して提携先の工房を増やしていきたいです」(ジャシアーナさん)
米国のバービー人形製造販売元、マテル社は自社で製造販売する人形の「ブロンド・青い目・スレンダーボディ」路線を大きく転換した。 強い自己否定感を持つティーンエイジャーに、子供のころにバービー人形から刷り込まれた「理想の人」イメージが影響している可能性をうけてのことだという。
マテル社は今では多様な肌の色、体形だけでなく、妊娠中、イスラム式チャドル、メガネ、車いす付きなど実在の世界に近づけるべく、バリエーションを持たせた人形を製造販売している。国は違えど、ジャシアーナさんの人形作りはこの潮流と方向を一にしている。
たかがおもちゃ、されどおもちゃ。何を与えるかは親次第だが、選択肢が増えるのは心強いのではないだろうか。
エラ・ウマ・ヴェス・オ・ムンド(Era Uma Vez o Mundo)
住所:Rua Orestes, 7- Santo Cristo. Rio de janeiro/RJ – CEP 20220-070
電話: (21) 990715500
Instagram: @eraumavezomundo
ウェブサイト:www.eraumavezomundo.com.br
(文/原田 侑、写真/Reprodução/Pequenas Empresas & Grandes Negócios/TV Globo)
写真は「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランヂス・ネゴーシオス」よりジャシアーナさんの人形。TVグローボ系列の番組はIPCTV(グローボ・インターナショナル)で放送中。視聴の問い合わせは、080-3510-0676 日本語対応ダイヤルまで)