ルーラ元大統領逮捕、ブラジル経済への影響は!?
2018年 04月 8日グローボ系ニュースサイト「G1」が4月6日づけで伝えたところによると、同日、外国為替市場は前日比0.76%以上のドル高を記録したという。
ここ数日のブラジル政局の不透明感や外部環境の変化が影響していると思われる。
政局面での要因としては、2018年1月に第二審でも有罪判決を受けていたルーラ元大統領に4月6日に逮捕命令が出された点が挙げられる。外部環境では前日に露見した隣国チリと米国の貿易戦争懸念がブラジルレアルの相場にも影響を及ぼしたと見られる。
米国のトランプ大統領は中国製品に対する追加関税を課す発表を行った後、チリからの総額1億ドルの輸入品に対しても同様の措置をとると発表した。
また、ドルが強含んだ要因としては、米国の新規雇用数が10万3000口、と、予想より少なかったものの、比較的堅調だったことと、米国FRB(連邦準備制度理事会)のインフレ抑制、利上げの方向性維持の姿勢が伝わったことが挙げられる。
ルーラ元大統領逮捕令のニュースが伝わって以降、市場は売りが優勢となった。現地紙ヴァロール・オンラインによると、市場は当面、政局を不安材料視するだろうと伝えている。
複数のアナリストの見解では、ルーラ元大統領の収監に関係なく、中道右派勢力の拡大度合いが今後の政局の焦点になるとのことだ。
「今の騒ぎがひと段落すれば、投資家は市場重視派の候補が世論調査で支持を集めきれていないという事実に着目するでしょう。ブラジルの財政健全化改革の先行きに対する心もとなさに目を向けることになります」(マクロ経済研究所、キャピタル・エコノミックスのラテンアメリカ部門エコノミスト、エドワード・グロソップ氏)
また、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのストラテジストたちによると、選挙の勝敗を分けるのは、ルーラ元大統領の母体となる労働者党がどの左翼系候補の支持に回るか、という点だという。左翼系の候補者が優位とのシナリオは今後のレアルの対ドル相場に影響してくるとみられる。
金融市場の専門家たちによると、市場は今、ブラジルの政治リスクの見積もりを始めたところで、外国為替相場は短期的にはドルは3.4レアルを超えてくると見ている。
現地投資会社、スラメリカ・インベスチメントスの主席エコノミスト、ネウトン・ホーシャ氏はブラジルの政治リスクについて次のように語っている。
「ルーラ元大統領の出馬に枷を付けたところで大物候補に支持が移るわけではなく、新たに出馬表明をする左翼系の候補者たちがルーラ氏のポーションを食い合うだけです」(ネウトン・ホーシャ氏)
それでも選挙の基本シナリオは中道右派の勝利と見られているが、ホーシャ氏はドル相場は年末には3.36レアルにまで上がると見られている。
「もし中道右派ではなく、新たな左翼系候補者が勝利したところで相場にさしたる影響はないと思われますが、1ドル3.5レアル程度で落ち着くものと見ています」(ネウトン・ホーシャ氏)
4月5日のドルは前日比+0.03%の3.3414レアル、2017年5月18日(3.3836レアル)以来のドル高を記録した。
ブラジル中央銀行は今のところ為替相場への介入措置はとっていないが、5月には2兆5650億ドルの通貨スワップ(先物のドル売りに相当)が満期を迎える。
(文/原田 侑、写真/Marcello Casal Jr/Agência Brasil)
写真は4月6日、クリチーバ市の連邦警察前。ルーラ元大統領の逮捕令に賛成する人々。プラカードには「ルーラ、泥棒のいる場所は牢屋の中だ」と書かれている