カテゴリ : column サッカー フッチボウ・アルチ~ブラジルサッカーの魅力~
2018年 06月 24日 11:00
アディショナルタイムが6分と掲示されたときだった。
サッカーの試合で6分のアディショナルタイムというのはなかなか見たことがない、なんとかしてくれ、と祈るような気持ちで見ていたそのとき、歓喜の瞬間が訪れた。
ブラジルにゴールが決まったのだ。コウチーニョが決めてくれたのだ。
やっと守護神ナバスの壁を崩すことができたのだ。
このゴール劇は、ゴールを決めたコウチーニョ本人から始まった。
中盤でパスを受けたコウチーニョからボールは左サイドのマルセロ(レアルマドリッド)に渡り、ゴール前に入れたクロスを途中出場のフィルミーノ(リバプール)がヘッドで折り返し、ガブリエウ・ジェズース(マンチェスターシティ)が足で落としたところに、猛然とコウチーニョが走りこみ見事にゴールを決めてくれたのだ。
このプレイは、筆者だけでなくブラジル中が歓喜したことだろう。ピッチ上の選手たちもこれ以上ないぐらいに喜んで歓喜の輪をつくっており、監督のチチも喜びすぎて転んでしまっていた。
試合は残り4分ほど。
ブラジルはこの虎の子の1点を守り抜くために終始ボールをキープし続けた。
アディショナルタイムも6分を過ぎ、いつ笛が鳴るか、というときだった。
カゼミーロ(レアルマドリッド)からのパスをドウグラス・コスタがゴール前に流し、ネイマールがゴールを決めたのだ。
後半アディショナルタイムでの2ゴールで、ブラジルは苦しみながらも2-0で勝つことができたのだった。
試合が終わった瞬間、ネイマールはピッチ上でうずくまり泣いていた。
相当なプレッシャーだったのだろう。勝てて本当にホッとしたと思う。
このネイマールの行為には賛否両論あると思う。ネイマールの気持ちは痛いほどわかるが、私は、できればこのような姿は見せてほしくなかった。優勝した後ならともかく、優勝を狙っているブラジルにとっては、これから何試合も戦わなければならないのだ。毎回こんな姿を見せることになるのだろうか。
コンディションが今ひとつに感じたネイマールだが、このゴールをきっかけに変わってくれたらと思う。
ともあれ、ブラジルは今大会での初勝利を飾ることができ、グループリーグ2戦を終え、グループトップに躍り出ることができた。
この結果にブラジル関係者はホッとしていることだろう。勝ちと引き分けとでは天地の差だ。アルゼンチンと同じ境遇になりかねない状況だったのだ。
それにしてもこの試合を見て一番感じたことは、コウチーニョのプレーの素晴らしさだ。
ポジショニングが抜群なのだろう。攻守のいたるところに顔を出し、すごい勢いで走っている。ほとんどすべてのチャンスのシーンにおいて、攻撃の基点となっている。非常に安定感があり、安心して見ていられる。本当に惚れ惚れするほどのプレーぶりだ。
次はグループリーグ最終戦になる。最終戦は各組の2試合が同時刻のキックオフとなる。
次のブラジルの試合は、6月27日(水)21:00(日本時間28日(木)早朝3:00)にセルビアとモスクワ スパルタクススタジアムで行われる。NHK総合で生中継される予定である。
ブラジルは、引き分け以上で決勝トーナメント進出が決まる。決勝トーナメントを見据え、若干メンバーを変えるような気もする。どのようなメンバーで臨むかも興味深いが、きっちりと勝って、気持ちよく決勝トーナメントへ進んでほしい。
(文/コウトク、写真/Lucas Figueiredo/CBF)
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著者紹介
コウトク 2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。現在、スポーツナビのブログ「ブラジルサッカーレポート」(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/kohtoku/)を執筆中。