ブラジル外務省がクラシック音楽普及の新プロジェクトを始動
2019年 04月 8日
ブラジル外務省は、18世紀以降の同国の作曲家が残した作品を世界に向けて広く紹介するプロジェクト「ブラジルの音楽シリーズ(Brasil em concerto )」の一環として、同国の12人の作曲家の曲を、ブラジル国内のオーケストラ3団体および合唱団、ソリストたちによる演奏を録音して、シリーズ化してアルバムで発売していく新しいプロジェクトを始動しました。
これまでブラジルのクラシック音楽は、歴史的に重要な作品であっても録音された曲は限られる例は少なく、出版されることも稀だったため、このプロジェクトでは、過去に一度も録音されたことがない曲や、録音をされたことはあっても必ずしも理想的なコンディションで録音されたものではない曲が優先的に選ばれているそうです。
プロジェクトは、ヴィラ=ロボス博物館やブラジル音楽アカデミーなどの研究団体の協力のもとで進められていて、録音が予定されている曲のうち何曲かは、サンパウロ交響楽団出版部から楽譜が出版される予定となっています。
演奏を担当するのはミナスジェライス州・フィルハーモニー管弦楽団、ゴイアス・フィルハーモニー管弦楽団、サンパウロ交響楽団の3団体で、録音される作品は、各団体の芸術監督とブラジル外務省文化部によって選定が行われています。
3月26日(火)には駐日ブラジル大使館で、プロジェクトにとって初となる国外での発表会が開催され、エドゥアルド・パエス・サボイア駐日ブラジル大使閣下が、プロジェクトの概要を説明しました。
「 駐日ブラジル大使館にて世界に先駆けて本プロジェクトを紹介できることを嬉しく思います。今後、数週間以内に同様の発表セレモニーがロンドン、ベルリン、ニューヨークで行われる予定です」(エドゥアルド・パエス・サボイア駐日ブラジル大使閣下)
サボイア大使閣下によりますと、このプロジェクトでは2023年までに、 19世紀から20世紀にかけて作曲された100を超える管弦楽曲(アルバム30枚分の曲)が録音される予定で、録音された作品は、「THE MUSIC OF BRAZIL」と題されたシリーズとして世界各国で発売されるとのことです。
「 ブラジル政府はナクソス社と共同で、本プロジェクト『 ブラジルの音楽演奏(Brasil em concerto ) 』を実行していきます。プロジェクトは当時のアロイージオ・ヌネス・フェヘイラ外務大臣によって、2018年11月22日に正式に始動しました。記念式典はブラジリアのイタマラチー宮で華々しく行われました」( エドゥアルド・パエス・サボイア駐日ブラジル大使閣下)
録音が予定されている作曲家は、カルロス・ゴメス、エンリキ(エンヒッキ)・オズヴァウド、アウベルト・ネポムセーノ、エイトール・ヴィラ=ロボス、ロレンゾ・フェルナンデス、フランシスコ・ミニョーネ、ジョゼー・シケイラ、カマルゴ・グァルニエリ、ゲーハ=ペイシェ、クラウジオ・サントロ、エジノ・クリゲール、アウメイダ・プラドの12名です。
CD化された作品は、日本ではナクソス社の傘下にあるナクソス・ジャパン株式会社を通じて紹介されることになっており、第一作目となる『アウベルト・ネポムセーノ管弦楽作品集』(ファビオ・メケッチ(指揮)、ミナスジェライス・フィルハーモニー管弦楽団)が発売されています。
ナクソス・ジャパン株式会社の西崎博代表取締役は、このプロジェクトがブラジル音楽における歴史的な事業であることを説明しました。
「ナクソスは1987年のレーベル設立以来、世界の膨大なクラシック音楽作品を体系的に網羅して紹介してきました。その中には『エイトール・ヴィラ=ロボス/ブラジル風バッハ全曲』、『カマルゴ・グァルニエリ/ブラジル舞曲』をはじめ、いくつかのブラジルの作曲家の作品もあります。しかしこれらの作品は、ブラジル音楽の歴史全体からみればほんの氷山の一角にすぎません」(ナクソス・ジャパン株式会社 西崎博代表取締役)
「今回の新シリーズ『THE MUSIC OF BRAZIL』ではブラジル外務省をはじめ同国の関連諸団体の協力を得て、ブラジル音楽にとって歴史的に重要な作曲家の作品を録音していきます。これらの作品の多くは今も楽譜が出版されておらず、有識者の監修のもと、作曲家が残した楽譜をもとに新たに作り直した楽譜を使います」(ナクソス・ジャパン株式会社 西崎博代表取締役)
プロジェクトの始動を記念して駐日ブラジル大使館(港区北青山2-11-12)では「さまざまな顔をもつ国、ブラジル!クラシック音楽 展覧会」を開催しています。開催は5月17日(金)まで(土・日・祝をのぞく )で、開館時間は10:00〜13:00と14:00〜17:00、入場は無料です。
(文/麻生雅人)