安倍前総理と麻生副総理、ブラジルより南十字星国家勲章を授与される
2020年 12月 29日
安倍晋三前内閣総理大臣と麻生太郎現副総理は去る12月15日(火)、東京・代々木にあるブラジル大使公邸にて行われた南十字星国家勲章(グランクルス位)の叙勲伝達式に出席して、エドゥアルド・パエス・サボイア駐日ブラジル大使より同勲章を授与された。
南十字星国家勲章(グランクルス位)は、ブラジルが外国人に対して贈る最高の勲章で、ブラジルと日本の両国関係の促進と強化に多大な貢献を果たしたことが叙勲の理由となった。
安倍前総理は、総理大臣在任中の2013年9月5日にG20サンクトペテルブルクサミットに出席するため訪露中のジウマ・フセフィ大統領(当時)と日・ブラジル首脳会談を行ったのに続き、2014年7月25日~8月2日にかけて中南米諸国を訪問した際、7月31日~8月2日にブラジルを公式に訪れ、8月1日にジウマ・ルセフ大統領(当時)と日・ブラジル首脳会談を行った。
両首脳は二国間における戦略的グローバルパートナーシップ構築に関する共同声明も発表した。日本の総理がブラジルを訪問したのは、2004年に小泉総理(当時)が訪問して以来10年ぶりだった。
8月2日にはサンパウロで日本・ブラジルビジネスフォーラム(中南米ビジネスセミナー)に参加して、「Juntos!! 日本・中南米協力に限りない深化を 対中南米外交・三つの指導理念」と題された中南米政策のスピーチを行った。
このスピーチの中で安倍前総理は、日本の中南米外交における指導理念として、“3つJuntos(「共に」)”…プログレジール・ジュントス(progredir juntos・発展を共に)、リデラール・ジュントス(liderar juntos・主導力を共に)、インスピラール・ジュントス(inspirar juntos・啓発を共に)を提唱。「日本とブラジルが、日本と、中南米の国々が、手を結び、心を通わせあって、時として苦労を、また努力を、できるなら歓喜を共にすること、――「juntos」の大切さを、私は強調したい」と語っている。
2016年8月23日には、リオデジャネイロオリンピックの閉会式における、東京オリンピックへの引継ぎ式にスーパーマリオの扮装で登場した。
また、同年9月5日には、G20杭州サミットに出席のため訪中していたミシェウ・テメル大統領(当時)と日・ブラジル首脳会談を行っている。そのテメル大統領(当時)とは、同大統領が10月18日~19日に来日した際にも首脳会談を行っている。
2019年は、1月23日に世界経済フォーラム(WEF)年次総会(通称「ダボス会議」)に出席のため訪問中のスイス・ダボスにてジャイール・ボウソナーロ大統領と日・ブラジル首脳会談に臨み、同大統領とは6月29日にG20大阪サミット出席のため訪日した際に再び首脳会談を行い、さらに、10月23日には即位礼正殿の儀のために再来日した同大統領と、この年3度目の首脳会談を行っている。
麻生太郎副総理は、外務大臣在任中の2006年より日伯国会議員連盟会長を務めている。
2008年の日本ブラジル交流年には同交流年実行委員会の名誉会長も務めた。同年6月16日~23日には衆議院ブラジル移民100周年慶祝訪問議員団団長としてブラジルを訪問。ブラジル主催の記念式典に参列した。
同年、総理大臣就任後の11月14日、金融サミットに出席するため訪問中のワシントンでルーラ大統領(当時)と日・ブラジル首脳会談に臨んだ。
2011年1月1日にはジウマ・ルセフ大統領(当時)の就任式に政府特使として参列した。
副総理在任中の2017年4月30日にはサンパウロでジャパン・ハウス開館式に出席、ミシェウ・テメル大統領(当時)と会談も行っている。
12月15日(火)に行われた叙勲伝達式は、「ジャイール・ボウソナーロ大統領に代わり開催する伝達式は、両国の友好の証、そしてその絆をさらに深めたいという願いの象徴であります」というエドゥアルド・パエス・サボイア駐日ブラジル大使による日本語でのスピーチから始まった。
「ブラジルと(日本)の戦略的パートナーシップは、安倍(前)総理の草案から始まりました。その御指導は、二国間関係の強さを取り戻すうえで大変重要でした。麻生先生は、日本でもっともよくブラジルを知る方のお一人です。ブラジルに在住されたことがあり、その絆をずっと育んでこられました。これはとても特別な友情です。麻生副総理は世界で最初のジャパン・ハウスの開館式にも参加されました」(エドゥアルド・パエス・サボイア駐日ブラジル大使)
また同大使は、両国間の親密な関係についてもスピーチした。
「ブラジルでは、みな日本のことが好きです。その文化と伝統が好きです。勤勉さと忍耐力に基づく日本の成功からも多くの示唆を得ています。日本の漫画とアニメはブラジルで大人気です。ラーメン、お寿司、手巻きはブラジル人のメニューに定着しています。ブラジルの若者は、リオデジャネイロオリンピックでのスーパーマリオのこともすぐわかりました。ブラジルは日本のパートナーです。東京オリンピック・パラリンピックにも参加します。その時日本は、今一度、希望と忍耐力のメッセージを世界に発信されることでしょう」(エドゥアルド・パエス・サボイア駐日ブラジル大使)
続いて、勲記が読み上げられた後、安倍前総理と麻生現副総理両名に南十字星国家勲章(グランクルス位)が授与された。
勲記の内容は以下。
「ブラジル連邦共和国大統領は南十字星国家勲章賞勲局総裁として安倍晋三氏に対し、南十字星国家勲章(グランクルス位)を授与することを2020年9月23日付け政令で決定しました。その証として本勲記の作成を命じたため、ここに本職が署名し、賞勲局の公印を捺印します。
ブラジリア、ブラジル独立第198周年、共和制宣言131周年たる2020年10月2日
賞勲局長エルネスト・アラウージョ」
「ブラジル連邦共和国大統領は南十字星国家勲章賞勲局総裁として麻生太郎氏に対し、南十字星国家勲章(グランクルス位)を授与することを2020年9月28日づけ政令で決定しました。その証として本勲記の作成を命じたため、ここに本職が署名し、賞勲局の公印を捺印します。
ブラジリア、ブラジル独立第198周年、共和制宣言131周年たる2020年10月2日
賞勲局長エルネスト・アラウージョ」
「栄えある南十字星国家勲章を頂戴し、大変光栄に存じます」(安倍前総理)
安倍前総理は、長年に渡って日伯議連の会長として日伯関係を発展させてきた麻生副総理と共に受勲できることを喜びに思うと述べ、スピーチを行った。
「わたしと麻生さんの自宅から、この大使公邸までは5分くらいの距離でありますが、日本とブラジルは、確かに遠い距離であります。先ほどご紹介いただきました2016年、スーパーマリオに扮するためだけに、23時間かけてリオに参りました。往復で46時間、距離としては大変遠い国となるわけでありますが、ハートとハートの距離は、最も近い両国ではないかと思います」(安倍前総理)
そして安倍前総理は、この両国間の距離の近さは、日系人の存在が大きいと語り、ブラジルで直接、現地の日系人と接して聞いたエピソードを語った。
「一世、二世、お年を召した方々からは、どれほどみなさんが苦労されたか。そんな話も伺いましたが、同時に、ブラジルのみなさんがいかに温かく親切に接してくれたか、本当に困難な時に手を差し伸べてくれたか、厚い感謝の気持ちを述べておられました。海を渡った多くの日本人に対し、ブラジルのみなさんが示した寛容な心、温かいお気持ち、その気持ちに対する感謝の想いは、すべての日本人が共有するものでもあります」(安倍前総理)
また、初めてブラジルを訪問したのは、1985年に石原慎太郎外務大臣(当時)に総理秘書官として同行したときであることや、初めてブラジルを訪問した日本の総理大臣は祖父にあたる岸信介総理(当時)だったこと、2019年のダボス会議で、就任間もないボウソナーロ大統領と首脳会談を行った際に、大統領が「私の初恋の相手は日系人だった」と親日的に挨拶をしてくれたエピソードなどを語った。
「大統領はその後、昨年6月にG20のために大阪に来ていただき首脳会談を行いました。わずか4カ月後の即位礼正殿の儀の日にもご出席をいただき(翌日に)首脳会談を行いました。日伯の両首脳の会談が1年に3回行われている。どんどん両国の関係は発展をしてきていると思います。2014年にサンパウロで行いました対中南米外交の指導理念・3つのJUNTOS(ジュントス)。共に発展する(Progredir Juntos)、共に指導する(Liderar Juntos)、共に啓発する(Inspirar Juntos)…Juntos(共に)、の想いで、私も今後とも日ブラジル関係発展のために全力を尽くしていく考えでございます」(安倍前総理)
「今日はブラジルから賞を賜ることになり、誠にありがたく、心から御礼を申し上げます」(麻生副総理)
麻生副総理は、ブラジルとのファーストコンタクトから現在に至るまでのエピソードを語った。
「20いくつの歳のころ、1年ほど、永住権を持って住んだことがありますが、当時は1800%のハイパーインフレでしたので1年間で撤収を余儀なくされたのが、あのときの思い出です。わたしとしましては、ブラジル移民100周年の記念式典に今の令和天皇がまだ皇太子殿下であらせられたときに、同行を命じられて同行させていただいたことが思い出深いことであります」(麻生副総理)
麻生副総理もまた、両国関係の橋渡しに日系人の存在が大きいことを語った。
「ブラジル日系移民は3世、4世、5世の時代になっておりますけれど、すでに150~160万人となります。日伯議連と一緒になって、さらなる友好を深めて、両国関係が発展をし、両国民の平和と生活水準の向上に貢献できればと思っております」(麻生副総理)
(文/麻生雅人)