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ディアジオが「麗しき黒人女性」という名のカシャッサを販売停止に

カシャッサ「ネガ・フロ」(撮影/麻生雅人)

ブランドの権利獲得後、2006年から本格的に販売を行っていた多国籍企業ディアジオが、1975年以来リオデジャネイロ州ノヴァ・フリブルゴの蒸留所ファゼンダ・ソレダージで製造されていた、ブラジルで最も伝統的なクラフトカシャーサの1つ「ネガ・フロ(「麗しき黒人女性」とも受け取れる表現)」の販売を停止すると発表したという。現地メディア「ヴェージャ・リオ」が伝えている。

市場では、その理由の1つは、人種差別と闘い、女性を大切にする時代には不適切なカシャーサの名前であったと推測されていると「ヴェージャ・リオ」は指摘する。同メディアは、アメリカ合衆国の食品大手マーズは昨年(2020年)、黒人男性のイラストの商標で親しまれていた商品「アンクル・ベンズ(Uncle Ben’s、ベンおじさん)」について、商標デザイン、商品名を変更した例を挙げた。

国内のジャーナリスト、クラウヂア・シウヴァさんは、ネガ・フロと言う言葉が“麗しき黒人女性”を称える表現でも使われるとしながらも、「言葉には歴史的な意味を持つものが含まれており、それらの多くは蔑称的です」とコラムに記している。

「Fulôは、黒人奴隷たちが使用していたFlor(花)という言葉の一般的な形でした。Nega fulôという表現は、花のような女性の奴隷、美しい女性の奴隷を指します。多くの場合、植民地時代、こうした美しい女性の奴隷は、大邸宅の主に性的なハラスメントを受け、性的な関係を強要されていました」(クラウヂア・シウヴァさん)

ロンドンに本社を置く上場企業であるディアジオは、世界最大のスピリッツメーカー。スミノフ、ジョニーウォーカー、ギネス、タンカレーなどのブランドを有する。カシャッサのネガフロは2020年にワールドワイドで1280万リットルが販売されており、カシャッサの中でも蒸留所の手作りによるクラフトカシャッサの市場形成や発展をけん引するブランドだった。

製造元の蒸留所ファゼンダ・ソレダージのポートフォリオリオにとって「ネガ・フロ」は旗艦製品だったため、同蒸留所のオーナー、ヴィセンチ・バストス・ヒベイロにとっては、今回の製造中止決定は痛手となるとみられる。Covid-19のパンデミックの影響で多くのバーやレストランが廃業や休業に追い込まれる中、カシャッサの消費が大幅に減少してるだけに、より状況は困難となりかねない。

しかし、ワクチン接種率の増加に伴いカシャッサの需要の復活が見込まれる中、ファゼンダ・ソレダージにとっては、「ネガ・フロ」の生産停止後は、蒸留所のもうひとつの重要ブランドで、蒸留所の名前を冠したクラフト・カシャッサ「ファゼンダ・ソレダージ」シリーズの販売に力を入れてく道が残されている。

現在直面している困難は、蒸留所にとって、これまでの歴史の中で克服してきた数々の困難を思い起こさせる。一つの例は、1993年に、製品の分析をするためにブラジルに科学技術者が来たときのこと。同蒸留所のカシャッサは当時すでにヨーロッパにも輸出されていたが、調整が必要という分析の結果が出たため、蒸留所はコストをかけて製造工程の見直しを余儀なくされた。

「非公式の夕食会で、私は彼に『ジョン、あなたは私にやっかいな問題をもたらした』と不平を言ったものです。しかし、私は、そのときの彼の答えを今も忘れていません。彼はこう言いました。『私はあなたに困難ではなくチャンスを運んできたのです』、と。そしてこれは、今の私の状況にもぴったりあてはまる言葉です」(ヴィセンチ・バストス・ヒベイロさん)

科学技術者のジョン氏は、当時ブラジルの蒸留所ではほとんど行われていなかった2度蒸留を提案、蒸留所ファゼンダ・ソレダージはクラフト・カシャッサ造りにおいてこのプロセスを行う先駆的な存在となった。コストは投資となった。これにより製品は、より洗練された風味を獲得した。

現在、蒸留所はファゼンダ・ソレダージ・ラインの新ブランドを開発中とのこと。

(文/カシャッサ麻生)

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