聖金曜日に飲まれる、薬草入りカシャッサ

2022年 04月 18日

エレオノーラさん(左)とカカー教授(右)(写真/Divulgação)

ブラジルでは、国民酒カシャッサが宗教的な行事に使われることもある。

サンタカタリーナ州バーハ・ヴェーリャ市在住のエレオノーラ・マルチンさんが、カシャッサにまつわる敬虔なキリスト教の信者に伝わる最も古い習慣のひとつを継承していくことにしたと、地元メディア「ヂアリーニョ」が伝えている。

この習慣とは、聖金曜日に、薬草として知られるシポー・ミローミ(アリストロキア・ギガンテア)を入れたカシャッサをつくって飲むというもの。

聖金曜日にシポー・ミローミを浸けたカシャッサを飲む習慣は、サンパウロ州奥地のムルチンガ・ド・スウ市セーハ地区など、ブラジルの他の地方でも見られるが、バーハ・ヴェーリャ市のイタジュバ地区では、聖金曜の早朝にこれを飲むという。

とはいえ、この習慣を今も続けている人は限られており、エレオノーラさんの夫であるアントニオ・マルチンさん(67)もそのひとりで、毎年この植物を採取して儀式を守り続けていた。ところが、昨年7月、ひき逃げ事故に遭いアントニオさんが他界してしまい、習慣の継承が危ぶまれていたという。

しかし、今年の聖金曜日である4月15日、妻のエレオノーラさんが亡き夫の遺志を継ぐことを決意。早朝にミローミを使ったカシャーサを生産して、古い友人で教授であり作家、歴史家のカカー・ファグンデス夫妻と共に、海岸でこの習慣を祝った。

儀式のための飲み物は、このつる科の植物を削り、クローブ、にんにくとともにボウルに入れ、そこにカシャッサが注いで作られる。

「一般的に信仰されているのは、体から悪いものをすべて取り除く浄化能力があるという昔からある伝承です」とカカー氏は言う。

そして、この苦い飲み物は、飲むべきとされている日と関係しているという。

「クリスチャンにとって聖金曜日はイエス・キリストの苦しみを現わしています。そしてこの飲み物は、伝統を受け継ぐものにとってとても儀礼的なものです」(カカー・ファグンデス)

薬草としてのシポー・ミローミは、かつてはマラリア予防にも使われていたという。民療法では、つるはヘビの咬傷に対して、そして一般的には痛みのどめに使用されるという。

(文/カシャッサ麻生)