【インタビュー】MCコリンガ@ブラジルフェスティバル2023

2023年 01月 19日

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2022年11月20日(日)、代々木公園「ブラジルフェスティバル2023」にて。MCコリンガ((撮影/麻生雅人)

2022年11月19日(土)、20日(日)の2日間、東京都の代々木公園で約3年ぶりに開催された「ブラジルフェスティバル2022」(主催:在日ブラジル商工会議所)のステージのスペシャルゲストとして、ブラジルからMCコリンガが来日した。

MCコリンガは“ファンキメロディ”の歌手、コンポーザー、プロデューサー。“ファンキ”とはブラジルのダンスミュージックのひとつで、マイアミベースに影響を受けており、エレクトロビートの上に音が重ねられている。“ファンキメロディ”は、“ファンキ”のスタイルのひとつ。歌詞ではロマンチックなテーマがよく取り上げられており、MCコリンガの曲はブラジル最大の放送局TVグローボのドラマの挿入歌にも使用されている。

イベント前には記者会見が行われ、会見後、MCコリンガはインタビューに応じてくれた。インタビューにはMCコリンガのサウンドを支えているDJ  JPも同席した。

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2022年11月19日(土)、代々木公園「ブラジルフェスティバル2023」にて。MCコリンガ(左)とDJ JP(撮影/麻生雅人)

――日本でショウをすることは想像していましたか?

「(それどころか)人生において音楽に携わることができるとは、想像してなかったよ。ブラジルと日本でショウができるとはね。愛を込め、自分たちの夢を追求した瞬間から夢が叶うことを知ることができて、嬉しいよ」

――日本の印象はどうでしょうか?

「日本は素晴らしく、魅力的な国だね。わたしは初めて日本に着いたときから、文化と規律正しさに影響を受けたよ。 わたしは3人の女の子の父親なんだけど、いつか日本の素晴らしさを伝える機会があればいいなと思っているよ。今回は、20年連れ添った妻を連れてきていて、信頼していて多くの苦労をともにしている、 DJ  JPも一緒に同行しているんだ」

コリンガがJPに「ねえ、JP、ファンキのショウのために、世界へ飛び立つ日が来るって想像したことはある?」と振ると、JPも「想像したこともない」と答えた。

JP「コリンガが言ったように、とてもやりがいがあることだよね。ここ日本へ、同行する機会を与えてくれたコリンガに感謝したいと思う。 それは信じられないほどのエネルギーだし、ブラジル人も日本のコミュニティも我々を受け入れてくれたことはとても素晴らしいものだね」

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2022年11月19日(土)、代々木公園「ブラジルフェスティバル2023」にて。MCコリンガ(左)とDJ JP(撮影/麻生雅人)

――どのように音楽をつくるのでしょうか?

「わたしは目にする全てのものに影響を受けていて、全てを音楽に変えるんだ。わたしたちの周りの日常生活で起こることは、気分を高揚させたり、自分の心の内側を見てみたり、悲しくなったり、歌のインスピレーションを与えてくれるんだ。でもわたしはファンキをやっているから、常にそのエネルギーを上に向けようとしている」

――インスピレーションは音楽からも受けていますよね?

「もちろん。MPBのジャヴァン、ブラジリアンソウルのチン・マイア、サンドラ・ヂ・サー、サンバ・ファンキのグループ、ファンキン・ラタ、そこのボーカリストのイヴォ・メイレリス、マルチな才能を持つシンガーソングライター、アウセウ・ヴァレンサ、サンバのベッチ・カルヴァーリョ、ロックバンド、スコーピオンズ、そしてマイケル・ジャクソンが本当に好きだったよ。 全て大きく違うスタイルの音楽であることがわかるよね。 詩や愛について話す機会はないんだけれど、ファンキが影響を受けたすべての音楽性とハーモニーを探求できるんだ。だからそれらを全部ビートに合わせて、みんながどういうふうに反応するかを見てみている。 たくさんの反響を受けてから26年が経ったね」

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2022年11月20日(日)、代々木公園「ブラジルフェスティバル2023」にて。MCコリンガ((撮影/麻生雅人)

――あなたはヒットメーカーとしても知られていますね。ヒット曲をつくる秘訣はありますか?

「成功するためのレシピなどないよ。愛を込めて、神経を使って曲を作っていれば、成功できると信じているんだ。成功ってなんだろうね、、成功って、自分がやっていることが幸せかどうかじゃないかな。人によっては、世界進出とか、多くの人に曲を聴いてもらうとかだと思うけれど、やはり自分がやっていることが幸せかどうかじゃないかな。幸せが他の人たちに広がっていったら、それが成功って言えるんじゃないかな」

――あなたのファンキはほかのファンキと比べても、よりホマンチコ(ロマンチック)に感じます。

「ファンキといっても色々な側面があると思うんだ。わたしが選んだファンキは、メロディーラインがあって、音楽性が強くて、メロディーにそって歌がある。これは、わたしの人生の中で接してきた音楽や歌手に関係があると思う。ブラジル人、海外のミュージシャン両方接してきたけれど、彼らの音楽でどれだけの人が幸せを感じたことだろう、わたしもそうなりたいって思ったんだ」

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2022年11月19日(土)、代々木公園「ブラジルフェスティバル2023」にて。MCコリンガ(撮影/麻生雅人)

「例えば…ジャイール・ホドリゲスのライブをテレビで初めて見たとき、舞台にいる彼を見て、鳥肌が立ったよ。手を止めて、彼を見つめたんだ。でも面白いことに、彼の歌を全然思い出せないんだけど、彼の存在やそこから発せられるエネルギーに圧倒されたことは覚えている。もちろん覚えている歌もあるけれど、テレビを見ているときに彼自身よりも大きなエネルギーをテレビ画面から感じたんだ。それがすごくて、見ながら『わたしは彼みたいになりたい』と思ったよ」

「音楽面では、チン・マイアのようになりたい。マイケル・ジャクソンが人に与える影響のように、わたしは他の人に影響を与えることがすごいなって思うんだ。ほんの少しでもいいから、わたしもそんなふうにエネルギーを他の人に与えることができるかなって、、自分のファンキをやるときには、そんなことを考えているよ」

「ファンキには、性についてや宗教、社会状況のことについてなどいろんなテーマを扱う種類がある。社会の状況やコミュニティの叫びを歌っているものもある。でもわたしはファンキの中でも自分が受けてきた影響を、集まって聞いてくれた人がその音楽を聴くことで、なにかを広げることができるようなメロディアスなものを選んでいるよ」

――あなたは主要なテレビ番組に出たかったそうですね。実際にテレビに出演されたことについては、どのように思いましたか?

「わたしは子どもの頃、テレビが大好きだったから、ほとんどのテレビ番組を見ていたと思う。『カッシーノ・ド・シャクリーニャ』、『グローボ・ヂ・オウロ』、『ヴィヴァ・ノイチ』、有名な司会者シウビオ・サントスが出ていた『ドミンゴ・ノ・パルキ』。あとはドラマも見ていたね。新しい音楽や洋服を発見できたり、チン・マイアの曲が流れていたりしてすごいなと思っていたよ。でもまだ子どもだったから、それらを現実にできないことは分かっていた。でも実現したいと願っていたんだ」

「今ではテレビでマリア・ガブリエラからインタビューを受けたり、(生前に)コメディアンのジョー・ソアーリスがインタビューしてくれたり、ドミンガォン・ヂ・ファウタォンやルシアーノ・フッキの番組に出演したり。子どもの頃の夢を叶えているんだよ。すごく残念なのは、『カッシーノ・ド・シャクリーニャ』に出られなかったことだよ。時代が違うから仕方ないけれど、あの番組からは本当に多くのアーティストが世の中に出たからね。我々はスーパーマンじゃないし、時空を超えることはできないけれど。でも今、シウビオ・サントスの番組に出演できたり、『カッシーノ・ド・シャクリーニャ』を見られることはすごく嬉しいよ。

「テレビって、見て夢を描いたり、奇跡の箱みたいだよね。今は自分がドラマや映画の音楽をやっているけれど、自分がここに辿りつけるなんて思ってもみなかった。だけど、音楽にたくさんの愛を注いでいたら、それが現実になった。今、わたしが地球の反対側の日本にいることも夢にも思っていなかったし、夢として考えることもなかった。日本にいるのは実は2回目なんだけどね。一番は神様で、ファンキは、自分の全ての夢を叶えてくれるものだね」

――あなたは自身の活動のほかにもアナンダをプロデュースしたりと、ヒップホップのエミネムやドクター・ドレ―のようだと感じました。そのことについてお話をお伺いできますか?

「エミネムは白人なのにヒップホップやっていて差別を受けたよね。でもどんな肌の色であっても、どんなことでも、人々は自分の信じていることに関して叫ぶ権利や、必要性があると思うんだ。エミネムはそういう意味で、それを表現している人だと感じるね。エミネムだけでなく、ファッションも含めてドクター・ドレー、カニエ・ウェストも好きだよ」

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2022年11月20日(日)、代々木公園「ブラジルフェスティバル2023」にて。MCコリンガ((撮影/麻生雅人)

――日本のみなさんや、日本に住んでいるブラジル人のみなさんにメッセージをお願いします。

「来日できたことがとても嬉しいし、感謝しているよ。15回目の『ブラジルフェスティバル』で友人のDJ JPがブラジルだけでなく、海外にも一緒に来てくれて嬉しい。わたしだけではなく、わたしのチーム、家族に対してもみんなの心遣いを本当にありがとう。日本を出発するときには、たくさんの希望をカバンに詰めて歩んでいけると思う。日本は本当に素晴らしいところで、来日することができて本当に幸せだよ。できればまた日本戻ってきて、歌いたい。よく人は、『そんなに遠くまで?』って言うけれど、これだけたくさんの人がここに来てくれて我々が音楽を表現し、みんながそれを聞いてくれることを考えれば、距離はこんなにも小さく感じられる。ショウに来てくれる人、そしてこのイベントに参加している人すべての人に感謝している。本当にありがとう」

(文/Viviane Yoshimi)