リナ・ボ・バルディ展、駐日ブラジル大使館で開催中

2023年 05月 23日

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マリア・シリーズの椅子を紹介するマルセロ・フェハス(撮影/麻生雅人)

“ミッドセンチュリー”の時期に活躍したブラジルを代表するデザイナーのひとり、リナ・ボ・バルディの展覧会が、駐日ブラジル大使館で今月初旬より開催されている。

「LINA BO BARDI 展 with Marcenaria Baraúna」と題された今回の展示では、リナ自身の経歴や作品の紹介に加え、リナ自身も参加していた家具づくりの工房「バラウナ工房」の活動にもスポットが当てられている。

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リナ・ボ・バルディ展は5月29日まで駐日ブラジル大使館で開催中(撮影/麻生雅人)

リナ・ボ・バルディは1914年、イタリア、ローマ生まれ。第二次世界大戦後の1946年に収集家、キュレーターのピエトロ・マリア・バルディ氏と結婚、2人でブラジルへ渡った。

バルディ夫妻は1947年、ブラジル初の近代的美術館となったサンパウロ美術館(MASP)の創設にかかわり、リナは建築と展示のデザインを手がけた。

1951年にブラジルに帰化したリナは、同年、初の彼女自身による建築プロジェクトであり、夫妻の邸宅でもある「ガラスの家」をモルンビーに作った。

建築や家具のデザインにとどまらず、演劇の舞台美術や衣装のデザイン、デザイン教育など、仕事は多岐にわたった。

「ガラスの家」を制作した1951年には、ピエトロと共に、サンパウロ美術館と連携して現代美術研究所を設立。この組織はブラジル初のデザイン教育機関のひとつとなった。1955 年から 1956 年にかけては、サンパウロ大学建築都市学部で建築理論の教鞭をとった。

開館当初、サンパウロ市旧市街区の4月7日通りにあった同美術館は、1968年に現在美術館があるパウリスタ大通りに移転。再びリナ・ボ・バルディが手掛けた移転後のサンパウロ美術館(MASP)は、20世紀の建築史におけるマイルストーンとなっている。

セスキ・ポンペイア(ブラジル商業連盟社会サービスが運営する文化センター、ポンペイア支部)の設計や施設内の設備のデザインも、リナが残した代表的な仕事の一つとなっている。

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セスキ・ポンペイアの設計に関する資料など(撮影/麻生雅人)

一方、「バラウナ工房」は、リナ・ボ・バルディと交流の深かったフランシスコ・ファヌッチ、マルセロ・フェハス、マルセロ・スズキの3人が、建築事務所ブラジル・アルキテトゥゥーラの建築にマッチする家具を製造するため、1986年に開設した工房。

1986年、リナがバイーア州サルヴァドールで手掛けた「カーザ・ド・ベニン」や「グレゴリオ・ジ・マットス劇場」では、マルセロ・フェハスとマルセロ・スズキもプロジェクトに参加。レストランやバーのスツールとしてカデイラ・ジラーファ(キリン・チェア)が、グレゴリオ・ジ・マットス劇場のためには、軽く持ち運ぶが可能なカデイラ・フレイ・エジージオ(修道士エジージオ・チェア)が制作された。

カデイラ・フレイ・エジージオの椅子の名前は、10 年前にミナスジェライス州ウベルランデジアにあるエスピリット・サント・ド・セハード教会の設計にリナを招待した修道士に敬意を表して、リナが命名した。

同展覧会の関連イベントとして開催されたマルセロ・フェハスによるトークショーでは、カエターノ・ヴェローゾがカデイラ・フレイ・エジージオを気に入り、2022年に行われた“メウ・ココ”ツアーのステージでこの椅子を使っていたことが紹介された。

「バラウナ工房」は現在も活動を続けている。マルシオ・フェハスは2015年に、マリア・ベターニアのデビュー50周年を記念して、リオデジャネイロ市のパッソ・インペリアウ美術館で開催されたアート展「マリア・ジ・トドス・ノス」のために、椅子「マリア」シリーズを制作している。

展示は5月25日まで。入場は無料。

「LINA BO BARDI 展 with Marcenaria Baraúna」
会期:2023年5月9日(火)〜5月25日(木)
会場:ブラジル大使館
住所:東京都港区北青山2-11-12
時間:11:00〜17:00
休館日:土・日
入場:無料、アポイントメントフリー

(文/麻生雅人)