W杯最終予選:日本代表対中国代表戦。鬼門のワールドカップ最終予選初戦、7-0で日本代表が快勝
2024年 09月 6日
前日の公式会見・公式練習に続き、試合会場の埼玉スタジアムに行ってきた。
埼玉スタジアムへメディアの取材で行くのは今回が初めてだったが、国立競技場に慣れている身からすると、ピッチまでだいぶ近く感じる。双眼鏡を使わなくてもある程度、選手を識別できることはとても助かる。
この日の日本代表は3バックの布陣で、GKは鈴木彩艶。DFは左から町田浩樹、谷口彰悟、板倉滉。両ウイングバックに三笘薫と堂安律が入っている。2ボランチに守田英正と遠藤航。そして2シャドーに南野拓実と久保建英。1トップに上田綺世という3-4-2-1のフォーメーションだった。ウイングバックにそれも両サイドともに攻撃の選手を入れたところがこの日のポイントだろう。始まる前からかなり楽しみに思った。
中国は日本対策でがちがちに固めてくるかと思ったが、日本の攻撃陣は中国の守備網を簡単に突破していた。
おもしろいようにボールが繋がる。見ていて本当におもしろい。
特に、ウイングバックとシャドーの選手たちが縦関係になったり横関係になったりで縦横無尽に動き回り、連動した流れるような攻撃を繰り広げていた。
ウイングバックとシャドーの選手たちが最前線に来てトップの上田と並んで5トップのような形になる。そんな5人の選手たちがポジションチェンジしながら、華麗にパス回しなどしながらゴールに襲い掛かるのだ。プレーしている選手たちも楽しかったことだろう。
セットプレーも多く、先制点はコーナーキックからだった。久保が蹴った球をキャプテンの遠藤が頭で合わせて先制に成功した。前半12分のことだった。先制点を早い時間に取れたことで、だいぶ精神的に楽になったことだろう。
先制点を決めた後も怒涛の攻撃は続く。
ゴール前までボールを運べるが、ゴールだけが決まらないストレスのたまる時間帯が続いたが、前半アディショナルタイム(AT)に右の堂安からのクロスを三笘が頭で合わせて貴重な追加点を前半のうちに奪うことができた。これは大きかった。
最左翼から走り込んでくる三笘めがけてクロスを上げるシーンが目立っていたが、よい時間帯に結果を出すことができよかった。この選手配置を活かした効果的な戦術だった。
前半を終えて2-0で折り返すこととなった。
後半でも開始時点で日本代表の選手交代はなかった。そして開始から日本の怒涛の攻撃は続いた。
後半7分、日本は相手ゴール前でボールをつなぎ、最後は三笘からのパスを受けた南野がボックス内でDFを一人交わしきれいに決めた。ウイングバックとシャドーの競演という前半から素晴らしい連携を見せていたが、最高の形でのゴールだった。
日本の快進撃はまだまだ続き、その6分後に縦パスを受けた南野がボックス内に入り込みDFを寄せ付けず落ち着いて決めて、4点目を奪った。
そして、日本の最初の選手交代に、スタジアムはこれ以上ないぐらいに沸いた。
伊東純也がピッチに立ったためだ。どれほどサポーターに愛されているか、この歓声を聞いただけで十分にわかる。
そんな日本の最初の交代は、後半18分、堂安、三笘に代わり、伊東純也、前田大残がそのまま同じポジションに入った。
メンバーは変われど、同じフォーメーションは続く。伊東も前田も十分に自分の個性を活かし躍動していた。特に、前田は前日にミックスゾーンで話を聞いていただけあり、そのとき話してくれた通り、攻撃的なウイングバックとして十分に役割を果たしていた。そして、そんな2人もそれぞれゴールを決めた。
後は、後半26分に板倉、遠藤に代わり、高井幸大、田中碧が、後半34分に上田に代わり、小川航基が入った。
高井は昨日20歳になったばかりの川崎フロンターレ所属のセンターバックだ。この出場で代表初キャップとなる。試合後の会見で森保監督が話していたが、ピッチに送り出すとき、普通の選手なら緊張するところを、彼は笑顔でピッチに出ていったとのことだった。実際、そのとおりで、落ち着いた堂々たるプレーを見せてくれた。
選手交代はしたが最後までフォーメーションを変えることなく、同じように戦い、最後の後半ATには、この日右シャドーの位置で終始素晴らしいパフォーマンスを見せていた久保が有終の美を飾るようにゴールを決めてすぐに試合終了となった。
終わってみれば7-0の圧勝だった。
中国代表では、注目していたブラジルからの帰化選手、ア・ラン(アラン)選手とフェイ・ナンドゥオ(フェルナンジーニョ)選手は2人とも後半途中からの出場だった。2人同時に投入され、その直後に少し雰囲気が変わり中国が押し込む場面もあったが、それも続かず、ほとんど見せ場を作ることはできなかった。
試合後の会見は、敗戦チーム、勝利チームの順で行われた。
まずは中国代表のイバンコビッチ監督による会見となった。
大敗にかなりショックを受けているようで、前日の饒舌ぶりは影を潜め、言葉少なげだった。
「日本はアジアトップなだけでなくワールドクラスだ」と繰り返し話していた。
続いて、日本代表の会見では、森保監督とこの日のマンオブザマッチ、南野選手も一緒に登壇した。
南野選手は「前回大会の最終予選初戦の敗戦を経験しているからこそ、この試合の大切さをわかっており、チーム全体で共有していた。立ち上がりから最後までよい試合ができた」と話してくれた。
その後の質疑応答で、この日のフォーメーションについて聞かれ、「(所属クラブの)モナコでも昨シーズンから何度かやっておりスムーズに入れた。自分としてはより動き回ってスペースを開けたり、スペースに飛び込んでいくこと、また奪われた瞬間の切り替えを意識してプレーした。後半にはゴールを決めることができ、チーム全体のパフォーマンスも含めて個人的にもうれしく思う」と答えた。
森保監督は「まずは選手、スタッフ、チームが一丸となってしっかりと準備したことが結果につながり、また、サポーターやメディアの皆さんを通し選手を後押ししてくれたことに感謝したい」と話してくれた。
その後記者からの質問に答えたが、主な内容は以下の通り。
・今回3バックで攻撃的な選手中心の布陣にしたことについて
「今の代表選手のクオリティを見ればいろいろなことができると思っていた。今日はウイングバックに攻撃的な選手を起用したが、皆が高い守備意識を持って戦ってくれていることがとても大きい」
・伊東純也選手について
「まずは彼の代表復帰をサポーターの皆さんが温かく迎えてくれたことを嬉しく思う。そのおかげもあり、彼もチームもよい雰囲気でプレーできたと思う。彼の特徴であるサイドの崩しから結果も出してくれた」
・本日他会場で行われた試合で次の対戦相手であるバーレーンが格上のオーストラリアに勝利したことについて
「その結果を知り、改めて最終予選の厳しさを感じた。次のバーレーン戦では相手はホームであり、乗ってくることが予想できる。我々は、アグレッシブにねばり強く最後まで戦い抜き、流れに応じてピッチの上で力を発揮できるように準備をしていきたい。アウェイだがバーレーンの地にも日本のサポーターが来てくださると聞いており心強く思う。ファン、サポーターとともに、全世界で頑張っている日本人に対しても、まずは勝利を、そしてチームの頑張りを見せて、アウェイの雰囲気の中で戦っていきたい」
以上のような話をして、会見を終えた。
試合を終えてしばらく経っても、これ以上ないほどの素晴らしい試合を目の当たりにして、なかなか興奮が冷めなかった。これだけ心躍る試合を見ることはなかなかないだろう。
まずは、このフォーメーションを採用しウイングバックに両サイドともに超攻撃的な選手を入れた森保監督の決断が素晴らしかったと思う。相手との力関係ということも考えられるかもしれないが、ウイングバックは当然攻撃力だけでなく守備力も求められる。相手もそこを突いてくるが、日本代表は全員攻撃全員守備で突破させないチーム全体の力があった。
前日の会見で、前回大会の最終予選からもっとも成長したところ、違いはどこか、と聞かれ、森保監督もキャプテンの遠藤選手も「個の力」と力強く話してくれたことが、すべてのように感じる。そんな「個の力」を見事に、この大事な試合で体現してくれた。
見ていて本当に楽しかった。日本代表戦を見てこれほど熱くなったのは初めてかもしれない。
「今日うまくいったから次もうまくいくとは限らない」
森保監督も南野選手も言っていた言葉だが、日本代表として一つの大きなオプションができたことは間違えないだろう。
ワールドカップの最終予選は始まったばかりだ。これからアウェイの厳しい戦いが待っている。
今回出場機会がなかった選手たちも次に期するところは大いにあるはずだ。特に、サイドバックが本職の選手たちは相当に刺激を受けたのではないだろうか。
次の試合は、次週9月10日(火)19:00(日本時間11日(水)1:00)にアウェイでバーレーンと戦う。日本での中継は、DAZNでの配信のみとなる。
どのようなメンバーで、どのようなフォーメーションで戦うのか、とても楽しみだ。
(文/コウトク)