SCAJ2025でブラジルはミナスジェライス州産の希少品種を紹介
2025年 10月 5日

アジア最大のスペシャルティコーヒーイベント「SCAJ ワールド スペシャルティコーヒー カンファレンス アンド エキシビション 2025(SCAJ2025)」が9月24日(水)~27日(土)、東京ビッグサイトで開催された。主催者の発表によると4日間で述べ96,823名が来場し、2024年の来場者数75,217名を大きく上回った。
ブラジル・スペシャルティコーヒー協会(BSCA)も例年通りパビリオンを出店して、ブラジル、ミナスジェライス州産のスペシャルティコーヒーの最先端を紹介した。
ブラジルの業界メディア「カフェイクゥトゥーラ」によると、ミナスジェライス州は2025年上半期において、輸出額がほぼ100億米ドルに達し、前年同期比で18%の成長を遂げているが、この貿易収支の伸びの主役はコーヒーであり、同州の農業ビジネスにおける主要製品として、部門全体の収益の56%を占めているという。
同紙は、ミナスジェライス州においてコーヒー栽培は、地域のアイデンティティ、多様なテロワール、生産者家族の物語、そして経済発展の原動力と同義だと紹介している。
とくに、差別化を実現して独特の立ち位置を確立している農場は、カンポス・アウトス、カンポス・ダス・ヴェルテンチス、カナストラ、セード・ミネイロ、シャパーダ・ジ・ミナス、マンチケイラ・ジ・ミナス、マッタス・ジ・ミナス、ヴルカニカ、南西ミナスといった地域に顕著だという。
SCAJ2025のブラジルパビリオンでは、カンポス・ダス・ベルテンチス地域にあるグアリローバ農園と、標高900メートルというマッタ・ジ・ミナス地域にあるコトゥリン&ダレッサンドロ農園のコーヒーが紹介された。

グアリロバ農園は、ゲイシャ、レッド・カトゥアイ、トパージオ、パライーゾといった、ブラジルでも希少な交配種の豆を紹介した。
幻の豆と呼ばれるトパージオは、豆の色が黄色いことからトパーズがその名の由来となっているとのこと。シシリアレモン、ミント、レモングラス、はちみつなどを思わせるフレイバー。
パライーゾは、ワイルドハニー、ジャスミン、ラズベリー、レモンゼストなどを思わせる、他にはないトクトクの特徴を持つ。
この農園のコーヒーの個性的なフレイバーは、豆本来が持っている特徴に加え、それを最大限に引き出す、農園独自の発酵や焙煎の技術によって生み出されている。
トパージオでは、嫌気性発酵(アナエロビックファーメンテーション)、ブラックハニー/スローシェイドドライといった過程が取り入れられている。
同農園によると、この農園で行われている嫌気性発酵(アナエロビックファーメンテーション)は、2段階で行われるという。
はじめに、手摘みされた収穫直後のチェリーを洗浄して、密閉されたバイオリアクター(生物の力を利用して有用な物質を作り出す装置)内で一次発酵を行う。発酵には、コーヒー畑から選ばれてきた出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae(サッカロマイセス・セレビシエ)という微生物を使用し、48時間にわたりカーボニックマセレーション(酸素を排除した発酵)を行う。そして、発酵が完了したチェリーは果肉を除去して、同じ微生物を含む溶液を使用して、72時間の追加発酵を行うという。
ブラックハニー/スローシェイドドライは、果肉を取り除いたコーヒーチェリーを日陰で時間をかけてゆっくりと乾燥させる精製方法とのこと。
この生成方法では、ミューシレージ(果肉と、種子の周りの薄皮の間にある粘液質)に含まれる自然の糖分がじっくりとした乾燥過程でゆっくりと変化し、その結果、甘みが強調され、フルーツや花のような香りが引き立ち、深い甘さが生まれるという。この甘みは黒糖やキャラメル、シロップのようなリッチで濃厚な風味を作り出す。通常の発酵法に比べると、フルーティーでジューシーな酸味がより穏やかで柔らかく感じられるという。
コトゥリン&ダレッサンドロ農園は、イエロー・カトゥアイ種のセレーノを紹介した。ミルクチョコレート、ドライフルーツ、アーモンド、砂糖漬けの果物のフレイバーりを持ち、柑橘系の酸味、クリーミーなボディ、甘い後味が特徴だという。
「アジェンシア・ミナス」によると、両農園があるミナスジェライス州にとってコーヒーは、州の経済と発展を支える重要な製品であり、ブラジルにおけるコーヒー豆輸出の約70%を担っているという。
各農園が抱く熱意に加え、州もコーヒー産業の活性化に向けたさまざまな取り組みを展開している。2019年以降、ミナス州のコーヒー部門には18億レアル以上の投資が誘致され、1,911件の直接雇用が創出されたという。
品質向上のため地元の大学が農場と連携して、ミナスジェライス州産スペシャルティコーヒーの品質、生産性、持続可能性の向上を目指す研究や支援も行われている。
2019年以降、ミナスジェライス州政府はさまざまなといった公募制度を通じて、コーヒーの生産チェーンに特化した科学技術・イノベーション・プロジェクトに約1,690万レアルを投資してきた。これらの支援も、同州産コーヒーの付加価値向上の可能性を引き出し、州経済の活性化を後押ししていると、同メディアは指摘している。
(文/麻生雅人)



