ブラジル人ストライカー、ルーカス・モウラのハットトリックで劇的勝利。トットナム、初のチャンピオンズ・リーグ決勝進出
2019年 05月 15日
UEFAチャンピオンズ・リーグはヨーロッパのクラブ王者を決める世界最高峰のカップ戦で、世界中のサッカーファンが最も注目している大会だ。そして、ブラジル人のスター選手の多くがヨーロッパでプレーしていることもあり、ブラジルでもとても注目されている大会である。
そんなチャンピオンズ・リーグの決勝進出を決める準決勝の2ndレグ、アヤックス(オランダ)対トットナム(イングランド)の試合が先週5月8日(水)に、アヤックスのホーム、アムステルダムのヨハンクライフアリーナで行われた。
1stレグは、トットナムのホームで、アヤックスが1-0で先勝している。
アヤックスにとって、アウェイゴールを得て有利な状況だが、1点差ならトットナムにも十分チャンスはあると思われた。
試合開始早々の前半5分、トットナムはCKからいきなり失点してしまう。2試合合計で2-0。いきなり2点のビハインドを背負うこととなった。
しかし、トットナムにまったくあきらめムードはない。
その後、トットナムのよい時間帯が続いたが、追加点を挙げたのはまたもアヤックスだった。
前半35分、カウンターからの速攻が決まり、2試合合計で3-0となってしまった。劣勢だったアヤックスだが、効率よく得点を重ねていった。
トットナムは3点のビハインドを背負ったまま前半を終えた。
後半もトットナムはまったく諦めることなく戦い続けた。
そんな中、後半10分、流れるような攻撃からトットナムにゴールが決まる。
ピッチの中央付近から駆け上がったルーカス・モウラがゴール前で素早くボールを振り抜き、ボールはきれいにゴールマウスに入っていった。
やっと待望のゴールが生まれたのだ。トットナムのFWルーカス・モウラは、この試合に出場した、ただ一人のブラジル人選手だった。
そしてその4分後に、またもルーカス・モウラがゴールを決めたのだ。
勢いに乗るトットナムは波状攻撃から、ゴール前でシュートを放つも一旦は相手GKに阻まれたが、こぼれ球を奪い取ったルーカス・モウラがゴール前の混戦の中キープし続け、ためにためて振り抜いたボールは、隙間のほとんどないところをうまく通り抜け、ゴールマウスの中に入っていったのだ。
これにはトットナムベンチはまるでお祭りのような騒ぎになった。
前半もゴールこそ決めることはできなかったが攻めていたのはトットナム。
後半は完全にトットナムペースになった。
しかしあと1点を決めることができず時間だけがどんどん進んでいく。
そして、5分与えられたアディショナルタイムも4分50秒台になったとき、中盤でのルーズボールを拾ったトットナム選手が前線に放り込んだボールを、最後の最後に、またしてもルーカス・モウラが相手選手よりも一瞬早くボールに触り振り抜きゴールを決めたのだ。
これ以上ないほどの劇的なトットナムの勝利だった。
この試合に出場した唯一のブラジル人選手であるルーカス・モウラのハットトリックの大活躍により、トットナム初の決勝進出を決めたのだった。
ルーカス・モウラは、1992年生まれの26歳。
2010年にサンパウロFCのトップチームでプロデビュー。
ちょうどネイマールと同い年で、一足先にスターダムにのし上がったネイマールに続く若きブラジルの逸材としてかなり注目を浴びていた。
2013年1月に、ネイマールより半年ほど早くヨーロッパのチーム、パリサンジェルマン(フランス)に移籍した。
しかし、ブラジルの至宝ともてはやされブラジルサッカーの象徴となったネイマールとは対照的に、ブラジル代表でのプレーはほとんど記憶にない。
2011年、マノ・メネーゼスの監督時代に、ブラジル代表に招集され、数試合出場しているが、目立った活躍はできていない。
フル代表ではないが、オリンピック代表としてネイマールらとともに2012年のロンドンオリンピックに出場し、銀メダル獲得に貢献している。
その後は、ブラジル代表とはほとんど縁がない。
しかし、今回の活躍を目の当たりにして、大いに活躍できる選手だと強く感じられた。
縦横無尽に動き回り、アクセントとなる動きができる。
そしてなにより、ボールに触れる素早さ、シュートを振り抜くスピードは天下一品だ。
この試合だけでなく、約1か月前のプレミアリーグの試合でも、ハットトリックを決めており、今、乗りに乗っている。
ただし、そうはいっても今からブラジル代表に選ばれるのは難しいだろう。
今年6月にブラジル自国で開催されるコパアメリカでもルーカス・モウラの雄姿を見たいと思うが・・・。
さて。ところで、もう1試合の準決勝、バルセロナ(スペイン)対リバプール(イングランド)の試合でも劇的な結末が待っていた。
1stレグではバルセロナがホームで3-0と大勝しており、バルセロナが圧倒的優位な状態で2ndレグを迎えた。
しかし、そんなリバプールのホームで行われた2ndレグでは、4-0でリバプールが勝利し、2戦合計で4-3となりリバプールが奇跡的な勝利で決勝進出を決めている。
6月1日(土)(日本時間2日(日)早朝)に、スペイン・マドリッドのエスタディオ・メトロポリターノで行われる決勝戦は、 そんなミラクルな2つのチーム、イングランドのチーム同士の対戦となる。
ルーカス・モウラ擁するトットナムに対し、リバプールのブラジル人選手といえば、代表の正GKであるアリソン、そしてこちらも代表で活躍中のFWホベルト・フィルミーノが真っ先に挙げられる。
世界中が注目するこの試合、ブラジル人選手の活躍にも注目していきたい。
(文/コウトク)